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第2回帝国大学祭⑦ 大学祭当日と理工学部の石炭コンロ試作

 色々研究室で討議して、大学祭当日になる。

去年と同じ様に屋台に似たブースを作り、

そこにそれぞれの展示や物販を並べる所と

講演会、討論会、実演や演習など様々な出し物がある。


 それに加え、今年は学生からの出展も増えて大賑わいである。

出店あり、屋台あり、出し物ありと少しづつバラエティに富んできた。

傾向としては少しづつ現代の大学祭に近づいてきて幸いだと思うエリオス君。

もっともっと盛り上げてこの国の名物にしたいものである。


「今日は大学祭当日です」

「汝は本当に楽しそうじゃの」

「此方は珍しいものを見たいぞ」

「・・・何故貴方達がここにいるの?」


 今年はニーナさんの代わりにエリカお嬢様が

そして何故かロザリーナお嬢様と雹華お嬢様がついてきた。

当然護衛であるメイドさんと執事さんもである。

もちろん露骨に嫌がるエリカお嬢様。



「うむ。妾は今年は暇だからエリオスとこの国の技術を調査しようかと。

 決して遊びでは無いぞよ」

「此方は今年も暇だからこの国の文化を研究しに。

 決してお遊びではありませぬわ」

「それなら一人で周りなさいよ。

 私はせっかくエリオス君と二人きりの機会なのに」

「・・・先に断っておきますが、

 別に二人きりでは無いですからね。今日は」


 不満顔のエリカお嬢様としてやったりの毒舌二人。

エリカお嬢様は本質的には大人なので、ヒステリックにはならないはずである。

でも現代人と言えどもこの天才強敵共にはなかなか対抗できない。

個人の持つ才能。たとえば知力、武力、カリスマ共に格上なのであった。


「おーい、エリオス君」

「エリオス君。久しぶりだね」

「エルン君。ニールさん。

 おはようございます。

 今日はしっかり新聞の記事としての取材をお願いします」

「任された」


 本来の付き添いである友達のエルン君と、

商業ギルドのニールさんと合流する。

エリオス君がニールさんを呼んだのは大学祭を

新聞の記事にしてもらおうという考えである。

外部からも積極的にアピールして取り込む方がより盛り上がる。


 実際の所、大学に人と資金が増えると商売としてもありがたいのであった。

そしてニールさんは新聞が売れる。広告も増える。

エリオス君は新聞が売れるとキルテル村で生産している紙も売れる。

お互いにWIN-WINの関係である。



「ではまず理工学部に向かいましょう。

 広場で実演をしているはずです」

「・・・地味ですね」

「まあ見た目は」


 理工学部のブースに向かう。

理工学部では燃料としての石炭と石炭コークスの実演である。

他にも昨年通り試験機を使ったアクセサリーの試作や

鋳鉄で鍋類の試作なども行っている。



「よお、エリオス君。

 よく来たな。

 どうだ理工学部は。面白いだろう」

「盛り上がっていますね。教授」

「あら、今日はエリノールもここにいるのね」


 ニコニコ笑顔の教授とエリノールお嬢様がいた。

そしてかなり来客数は多そうである。

昨年の噂を聞いて人があつまっている。


「私達の店舗も一緒に物販をしています。店長」

「おまかせして申し訳ありません。

 エリノール副店長」

「いえいえ、

 店舗の商品も売上があがっています。

 聖書の見本も立ち読みして頂いて、

 予約を受付中ですわ」

「しっかりしていますね。

 所で、石炭というか硫黄臭いんですが。教授」

「うむ、それはな・・・」


 商売に励むエリノールお嬢様と従業員の皆さん。

いつも大変感謝であるエリオス君。

それとは別に石炭の試験をしている教授である。

急遽、石炭キッチンを試作したのだが、どうも硫黄臭い。

多分レンガを段積みにして、石炭を入れる容器の上に

フライパン代わりの鉄板を敷いただけであろう。

石炭を燃やした時に出る硫黄の臭いが周囲に充満してた。


「石炭を燃やした時の臭いが周囲に漏れている様じゃな」

「此方にもそう思えます。

 この試作型は失敗作でありますの。教授」

「・・・みなまで言わなくても良い。

 ガスの密封がまだ不完全であったか、と」

「教授。次をがんばりましょう」


 毒舌組に指摘されてげんなりする教授。

もちろん言われなくても分かっているがせっかく作ったから

試作品でも展示したいのであった。

所がニールさんが興味を持ってしまった。 

 

   

 

「教授。これは大変面白い発想ですね」

「おお、君はこれの凄さが分かるか?」

「ええ。今回の新聞の記事にしても良いですか?

 ご意見をお願いします」

「君は道理をよく分かっているな。

 是非記事にしてくれたまえ」

「・・・あっ。ニールさん」


 まだ構想段階に過ぎないのに、技術情報を含め新聞に掲載されてしまう。

木材と燃費の高騰は市民には痛い問題でもあった。

それを改善するいくつかの方策の一つでもあった。

安価な石炭が普及するきっかけになれば、と今回のネタは諦める事にするエリオス君。

この新聞記事を元に、石炭が使える煙突を持つ家屋へと改造する話が

建築職人の間から広がっていくのであるがもう少し先の話である。


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