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城塞都市ローリッジ大包囲戦㉒ 城塞都市ローリッジへの凱旋

  アーシャネット中佐とエリオス君と

アナトハイム伯爵軍の一行が城塞都市ローリッジに補給物資を持って入城する。

市民に大歓迎されて揉みくちゃにされる。

市民は城外で奮闘するアナトハイム伯爵軍をよく知っていたのだ。

城塞都市の内と外で少数で奮戦し、多大な損害を出しつつも決して見捨てなかった。


「アーシャネット中佐殿」

「アーシャネット中佐様ー」

「アーシャネット中佐さーん」


 軍司令官であるアーシャネット中佐は大人気である。

まさに救世主が如きであった。

その名声はパッカード将軍にも劣らないだろう。

なにせ、ローリッジ丘の激戦で敵を粉砕したのだから。


「・・・まさに新しい英雄殿ですな」

「何、黄昏れているのよ。アンタ。

 アタシ達は十分頑張ったじゃないの」

「そうそう。良い子良い子だにゃ」

「子供扱いしないで下さい。

 アイヴィーリさん」

「エリオス様は本当に子供らしくないんだから・・・」


 アーシャネット中佐の後に続いて入場するアナトハイム伯爵軍の一同。

少し面白くなさそうな表情をして歩くエリオス君と

これ以上強敵が増えてほしくない幼馴染のニーナさんが監視する。


「姫様!」

「姫様。よくぞご無事で」

「おお、エッツィオ少佐とリンプラーか。

 卿らも少しは活躍したか?魔王陛下に良い土産話は出来たかの?」

「少佐殿もリンプラー殿もお疲れ様でした」

「少佐殿もリンプラー殿もご活躍されたそうで」

「少佐。姫様が虐める〜。僕を助けて下さいー」


 魔王国の一同もやっと面会する。

小さい傷を多数負っていたが、無事健在である。

さすがは歴戦の猛者達であった。



「彼らは大活躍です。

 公爵様に代わり感謝申し上げます」 

「うむ。所でお主は誰じゃ?

 妾と会った事があったかの?」

「失礼。魔王国のご令嬢。

 私はこの公爵家の将軍、パッカードと申す」

「卿が噂に聞くパッカード将軍か。

 彼らは妾が魔王国よりわざわざ連れてきたのじゃ。

 同盟国の勝利に貢献出来て何よりじゃ」

「後日、公爵様より感謝と謝礼があるでしょう」

「・・・公爵殿はそんなに体調が悪いのか?」

「医者の診断では命には別状はありませんが、重傷です。

 当面は表に出られないかと」

「まあ命に別状が無ければ良いのじゃが」

「ここでは何ですので、館へどうぞ」

「後でゆっくりと訪問させて頂こうぞ」


 パッカード将軍とロザリーナお嬢様が立ち話をする。

わざわざ戦後処理で忙しいはずの将軍自ら魔王国軍に礼を言いに来たのだ。

それほどまでにエッツィオ少佐とリンプラー要塞技師の活躍は大きかったのだ。

この二人がいなければ、城塞都市ローリッジは落城していたであろう。

その後、パッカード将軍がちらりとエリオス君を見る。


「卿があの時の、アナトハイム伯爵家のエリオス内政官殿だな。

 卿の巧みな戦略眼に公爵家一同感謝申す」

「お久しぶりです。パッカード将軍。

 あの時の会議以来でございますな」

「まさか、伯爵様と共に現れたあの小さな少年が

 魔王国のご令嬢と懇意になされ、陛下と殿下を説得し、

 魔王国と同盟を成立させ、大砲と援軍を呼び込み、

 兵糧攻めの戦略と共に敵を大いに追い詰め、

 アーシャネット中佐と共に援軍として敵を粉砕し、

 超大国相手に見事勝利をもぎ取った」 

「・・・前半の話は語弊があるので。

 あの時は宰相のランドルフ殿が怖かったです」

「あの時のランドルフ宰相は、卿を疑っておりましたからな。

 しかしエリカ姫様の目は間違っていなかったという事か。

 これが天の使いであるか。

 神に感謝せねばならぬな」


 と言いパッカード将軍が頭を下げる。恐縮するエリオス君。

パッカード将軍も事実上の軍司令官として歴史的な一戦を勝ち抜いた将軍。

後世では英雄とも呼ばれるかもしれない。


「しかしあの美しい城塞都市ローリッジが見る影も無いくらい

 ボロボロになってしまいましたね」

「ははは。これは勝利の勲章だよ。

 直ぐに復興するさ。公爵様もご健在だ。

 次は無敵の大要塞にしてみせるさ」

「僕は次がないことを祈っていますよ」

「そうであるな。なら後でまた会おう」


 そう言ってパッカード将軍は戻っていった。

まだ沢山の仕事が溜まっているだろう。

多忙な中でもしっかりと援軍相手に礼をいう姿に感服する。


「皆、長い戦争で疲弊しているのに元気ですね」

「そうだな。

 歴史的な天敵に勝利したのだ。

 直に復興するだろう。

 それよりジェロール中佐と合流せねばな」

「・・・やはりローラッド大佐は戦死なされたのでしょうか?」

「噂が正しければな。惜しい方を亡くしたものだ」

「伯爵家の幹部も無事では無いという事ですな」

「まあ、エリオス殿さえ生きていれば

 伯爵様からの私の仕事は問題ないという事だ」

「そんな言い方は止めてほしいです。

 皆が生き残って元気な顔を、したかったですね」

「うむ。国家のために亡くなった方々に敬礼」


 勝ち戦とは言え、公爵家も伯爵家も甚大な人的損害が出た。

多数の命の犠牲と引き換えにこの城塞都市を守り抜いたのだ。

血なまぐさいこの痛みはエリオス君の心にずっと残って取れなかった。


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