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城塞都市ローリッジ大包囲戦⑯ 魔法使い隊の反撃と騎兵隊突撃

 マスケット兵の前列が急に吹き飛ばされる。

敵のファイアーボールである。

幾つかの魔法が陣地に炸裂する。

敵の魔法使い部隊が前面に近づいて奮闘している証拠である。


「反撃にゃ。

 撃ち負けるでないにゃ」


 後方に待ちかまえていた筆頭魔法使いのアイヴィーリさんが

魔法使い隊に攻撃指示を出す。

敵の魔法が届くという事はこちらの魔法も届く距離である。

魔法は銃や大砲と違い連発出来ないので、

ここぞというタイミングでしか使用できない。


「炎の吐息よ、敵を燃やし尽くせ。

 ファイヤーストーム!」


 筆頭砲使いのアイヴィーリさんがファイアーストームを唱える。

すると、炎の壁が出来て敵兵が吹き飛ばされる。

面の制圧力という意味では非常に恐ろしい魔法である。

他の魔法使い達もファイアーボールで応戦する。

だが魔法使いの数が少ないので戦の大勢を決める事は出来ない。 


 しかし、そのタイミングを見逃さずアーシャネット中佐が左手を上げて指示する。

将校はそれを見て素早く反応する。


「アーシャネット中佐。

 少し判断が早くないですか?

 もっと敵を引きつけてからにしないと逃げられますよ」

「エリオス殿。

 このまま白兵戦になれば数が圧倒的に少ない我らが押し負ける。

 防御側は白兵戦を出来るだけ避けねばならない。

 これ以上待てない。

 魔法使いの撃ち合いに目を奪われている今が勝負だ」

「・・・承知しました。殺りましょう」


 アーシャネット中佐がそういうと左手を前に降ろして攻撃の指示する。

するとロザリーナお嬢様率いる騎兵隊が速やかに反応する。


「よろしい。

 行くぞイザベラ、ランベルト。

 全員サーベルを抜け!

 騎兵隊突撃じゃ。

 妾に続け!

 敵の側面から後方に回り込むぞ」

「承知。お嬢様」

「お嬢様に続け!」


 騎兵隊が側面を迂回しながら突撃を敢行する。

そしてエリオス君も指示を出す。


「シルヴィ君。マーシリエお嬢様の傭兵隊に指示を。

 迂回して側面から敵の後方へ突撃」

「エリオス様、承知しました」


 再び双子エルフのシルヴィ君が鏑矢を2本放つ。

攻撃の指示である。

それを見たマーシリエお嬢様率いる傭兵隊が攻撃に出る。


「攻撃指示よ。

 傭兵隊は側面より突撃。隊列を崩すなよ」

「承知」


 マーシリエお嬢様の傭兵隊が敵側面より突撃を行う。

敵の左右から騎兵隊と傭兵隊が側面から後背に回り込み、

突撃を行う。理論上であれば教科書通りの包囲殲滅戦である。 

 

 側面を急襲された敵の本隊は大いに動揺する。

正面への砲撃と、伏兵による反撃で敵の騎兵隊はほぼ崩壊している。

しかしまだ包囲が完成したわけではない。

特に傭兵隊の機動力が遅いために空間がまだ開いている。

本来軍の両脇に騎兵隊を設置するのが理想であるが、

寡兵であるのでそれも満足には行えてない。

ここがこの軍の弱点であろうか。


 そしてその様子を確認したアーシャネット中佐が

今度は右腕を上げて合図する。


「ここが勝負所である。

 私が国家と伯爵様に命と剣をかけて忠誠を尽くすのは

 このタイミングしかない」

「絶対に駄目ですよ。アーシャネット中佐」

「そうじゃ。ちゃーも絶対に反対じゃ」

「何故止める?エリオス殿と英雄殿」

「どうせ最高指揮官が最前線へ剣を振りかざして

 先頭で敵に突撃するつもりでしょう?

 誰が最後まで軍の指揮を取るつもりですか?」

「・・・」


 とたんにエリオス君やちゃー様の幕僚が止めにはいる。

この人の性格を理解していたら、

間違いなく自分から最前線に飛び出して突撃するであろう。

まだ敵は圧倒的に多い。

ここでアーシャネット中佐に死なれては困るのである。

敗走して全軍を撤退させることも考慮しなくてはならないのだ。


「・・・エリオス殿が指揮すれば良かろう?」

「すねてないで、ここはちゃー殿にお任せしましょう。

 見事に任務を果たしてくれますよ。

 最高指揮官は全体を見て最善の手を尽くして下さい」

「・・・英雄殿ばかり大活躍してずるい」

「じゃあちゃー殿。攻撃の指示をお願いします。

 中央はここの野戦築城の防御陣で踏ん張りますから、

 両脇から突撃して側面を遮断して下さい。

 敵がもし逃亡する姿勢を見せたら、中央からも陣を出て

 追撃を開始します。

 その時はアーシャネット中佐にも追撃をお願いします」

「・・・許可しよう」


 すねるアーシャネット中佐を無視して

攻撃に入るエリオス君とちゃー様。

ここが勝負所である。

剣術に強みのあるちゃー様とヴァンパイアを先陣に

敵の陣形の端から側面へ斬り込みを入れて突破する。

パイク兵は側面からの攻撃に弱いので多いに動揺するであろう。

包囲が完成したら総攻撃の開始である。

それまでに中央で守りを固めている本陣が持ちこたえられるかが勝負である。


「我々が敵を側面から攻撃する。

 敵陣の端を突破して包囲の体勢を作る。

 先陣はちゃーに任せろ。

 他の皆は後からついてくるだけでよい。

 突撃」


 ちゃー様が端から敵の側面へ突撃をする。

一気に斬り込む事で、側面から敵を崩し包囲の体勢を作るのだ。

残存させておいた騎兵隊ととっておきの戦力のちゃー様とヴァンパイア小隊を投入する。

ここで、熾烈を極める白兵戦が行われる事になった。

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