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城塞都市ローリッジ大包囲戦⑨ ヴァンパイアの砦攻め。夜襲

 夜になり、城塞都市ローリッジを包囲中の砦に夜襲をかける事にする、

アーシャネット中佐とエリオス君。

砦には敵が1,000〜1,500人前後がこもっている。

一つあたりの砦の戦力はそれほど大きくはない。

そして城塞都市ローリッジの方角に戦力を向けており、

この時点では後ろから攻められる事など想定していないかの様子であった。


 密かに兵を集め、夜中に忍び込み、

奇襲とともに各個撃破し、城塞都市ローリッジへ

砲弾と火薬の樽を小舟で補給するのが目的である。

城塞都市の外部にいる伯爵軍は微量ながらも密かに補給を受けられる。

もっとも砲弾だけは、石を利用したり

金属を溶かして城塞都市内部で即席で作ることも可能であった。


「ではアーシャネット中佐。

 夜襲を行いましょう」

「待てエリオス殿。

 今回の戦いの先陣を切るのは彼らが相応しい。

 そう、ここは英雄殿にお願いしよう」


 そうアーシャネット中佐が言うと、

エリオス君はうなずきちゃー様の顔を見る。

アーシャネット中佐は敬意を払いちゃー様に頭を下げる。

南の異教徒との戦で、伯爵軍としての先陣を切るのだ。


「すまぬな。アーシャネット中佐」

「ここは英雄殿にお任せする」

「ありがとう。

 では諸君。そしてヴァンパイアの同胞よ。

 我らは積年の恨みを奴らに報復する機会をついに得た。

 虐殺された同胞の悲しみを今これより晴らすのである。


 天を見よ。

 この美しい夜の満月を。

 神に祝福されし月の魔力が満ちる時、

 我らヴァンパイアは無敵となる。

 今宵は何者にも我らを止められぬ。


 さあ一緒に突撃しよう。

 ちゃーが先頭を走る。その後に付いて来るだけで良い。

 我らヴァンパイアが砦の壁を登り、門を開けよう。

 そして奴らの将の首を取り、砦を燃やし

 合図と共に城塞都市ローリッジに補給を届けるのだ。

 いざ征かん」


 ちゃー様の一声と共にヴァンパイア小隊50名が整列して前に出る。

はしごを持っている。これで砦の壁を登るつもりであろうか。

奇襲であるからこそ、いやヴァンパイア小隊だからこそか? 

エリオス君は無謀だと思った。


「ちゃー殿。

 大砲の集中砲火にて敵の砦の門を破壊しましょう。

 それから砦内部に侵入しても遅くはありません。

 危険です」

「大丈夫だエリオス殿。

 無音で近づいてこそ、奇襲の効果が増す。

 夜は我らの真価を最大限に発揮するのだ。

 それよりはしごは持ったか?

 登れるか?」

「はしごを持ちました。

 問題ありません。ちゃー様。まいりましょう」

「よろしい。

 では行くぞ」


 そう言い放つと駆け出すちゃー様とヴァンパイア達。

一瞬の事で見落としてしまう。

そして視界から消えてしまった。


「・・・消えた」

「いない」

「どこに行った!」


 わずか一瞬の事であるが、ヴァンパイア達はすでに遠くの砦まで走り去っていた。 

他の兵士達はまだ動けていない。

これが夜のヴァンパイアの能力か?

一同が驚愕しているわずかの間に、ちゃー様は今まさに砦に登らんとしていた。



「よしはしごを掛けろ」

「ハイ」

「砦を一気に駆け上がるぞ。

 ちゃーについて来い」

「承知しました」


 砦の壁を一瞬のうちに登り、敵の見張りの兵士に迫るちゃー様。

そして一気に近づき、喉元に一撃を放つ。

見張りは声も出せずに絶命する。

それは正に夜に轟く稲妻の如くであった。



「・・・どうした。何かあったか?ぐはっ」

「フン。貴様ら相手にスキルは不要だ」


 一刀の元で見張りの兵士を切り倒す。

大きな声も上げる事も出来ずに次々と絶命する見張りの兵士。

完全なる夜襲である。

奇襲は成功しつつある。 


「ちゃー様。

 見張りを制圧しました」

「宜しい。

 では半数は内側から門を制圧して後続の為に開けよ。

 残り半数はちゃーに続け。闇に潜んで敵将を狩るぞ」

「承知しました。ちゃー様」

「よし、行け」


 ヴァンパイア達は2つに分かれて、砦を制圧しに行く。

一つは門の開放、もう一つは敵将狙い。

あまりのスピードに両軍ともに対応できない。



「どう。見えますか?

 ティアナさん。シルヴィ君」

「我々もヴァンパイアほどではありませんが、

 多少は夜目が利きます。エリオス様。

 しかしミルチャー様はすでに砦の壁に登り

 見張りを制圧した様子です」

「・・・!」

「実に恐ろしい連中だ。

 夜のヴァンパイアがこれ程とは。

 さすがは伝説の種族」

「妾も流石に満月の夜のミルチャー卿には対抗出来ぬな。

 さすがは英雄殿じゃ」


 驚きを隠せない一同。

ロザリーナお嬢様は昼でもちゃー様に勝てないだろ、と

心の中でつぶやくエリオス君。


「こうしてはいられない。

 我らも砦を攻めるぞ

 徒歩では戦闘に間に合わぬな。

 騎兵隊は我に続け」

「ちょっと、アーシャネット中佐?

 待ってください。

 我らは完全に闇に紛れる事は出来ませぬ。

 これは奇襲ですぞ」

「待てぬ。

 ミルチャー殿を、そして彼ら勇者を一人足りとも犠牲には出来ぬ。

 全軍我に続け」


 アーシャネット中佐のその一言で、

目を輝かせてうなずくロザリーナお嬢様。

生き生きしたその表情を見てげんなりとするエリオス君。

考えている事がわかってしまうのも困り物だ。 


「ふふふ。

 騎兵隊は妾の管轄じゃ。

 エリオスは歩兵隊と魔法使いを連れて後からゆっくりと歩いて来るが良い。

 イザベラ、ランベルト。妾に続け」

「承知」

「お嬢様に付いてまいります」

「騎兵隊、ゆくぞ。アーシャネット中佐に続け。突撃じゃ」

「私達エルフも続きます」

「行きますよ。シルヴィ。

 ついてきなさい」


 全軍を率いるアーシャネット中佐に続いて、

騎兵隊と双子エルフも続いていく。

武闘派のアーシャネット中佐を誰も止められない。


「にゃはは。行っちゃったのにゃ」

「もう、いつもどおり猛突突撃なんだから・・・」

「どうします?

 アイヴィーリさん。ニーナさん」

「私達は徒歩なのでゆっくり歩いていくのにゃ」

「そうですね。

 なら外側から砦を包囲しましょう。

 逃げてくる敵を決して逃しません。殲滅します」

「じゃあ行くにゃ」


 エリオス君は歩兵と魔法使いで砦を包囲することに。

逃げてくる敵兵を包囲して殲滅するのだ。

敵にできるだけ情報を与えない。

ここは逃してはならないのだ。

そしてここから砦攻めの夜襲が始まった。

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