城塞都市ローリッジ大包囲戦⑧ 城塞都市ローリッジ側とリンプラー要塞技師
こちらは守備側の城塞都市ローリッジ。
最新鋭の要塞の防御力は半端ではなく、敵の攻撃を跳ね返している。
それは塹壕、堀、の高低差を利用して小銃や大砲での砲撃。
防御壁の存在により遠距離戦では勝負にならない。
「初手はうまく防いだな」
「公爵様。
まだ戦は始まったばかりです」
「そうだな。
だが我が軍の士気も高い。
市民も協力してくれる」
「敵に攻城兵器である大砲が無いのが最大限に有利な状況を生み出しています。
砲撃戦では遠距離から殲滅できています」
「だが、時間の問題であるな。
敵が数で押してくれば守りきれないであろう」
グリーヴィス公爵が分析する。
一箇所ずつ攻めていけばいつかは持ちこたえられない。
砲弾も兵員も無限では無いのだ。
しかし敵が大砲をおいてきた事が、
一方的に先制できる状況を作り出した。
「しかし、あの魔王国の少佐はやるな」
「エッツィオ少佐ですか?
確かに見事な砲兵配備と砲撃指示でございます。公爵様」
「巧みな配備と見事な砲撃で敵を撃退した。
この要塞を理解して使いこなしておるわ。
新兵器の扱いに相当なれておる」
「我が方には防備はあっても、知識と経験はございません。」
「魔王国は実に人材が豊富であるな。
我が国に引き抜きたいものだ」
「・・・公爵様」
グリーヴィス公爵が顎に手を当てて考える。
パッカード将軍も考えるふりをする。
しかしまだ初戦である。
これから何が起きるのであろうか?
「・・・パッカード将軍」
「どうした」
「魔王国のリンプラー技師がご相談があるそうです」
「リンプラー殿か。丁度良い。
公爵様にご紹介しよう。
ここに連れて参れ」
「ハッ」
パッカード将軍が指示し、リンプラー要塞技師がやってくる。
眼光が鋭い職人である。
魔王国から要塞技師としてロザリーナお嬢様が連れてきたのだ。
要塞の改修に一役買っている。
この城塞都市の防御力改善に貢献しているのだ。
「公爵様。この者が魔王国の要塞技師でございます」
「リンプラーでございます」
「・・・うむ。卿の仕事は見事であった。
要塞防衛は順調である。
これからも頼む」
「ハッ。
・・・ところでパッカード将軍」
「そう言えば要件があったな。
述べよ」
「総攻撃に失敗すれば、
敵は地下から坑道を掘るだろうと予測します。
地下に爆薬を仕込み、稜堡を破壊します。
防御施設を乗り越えて内部に侵入する作戦です」
リンプラー技師が説明する。
坑道を掘り爆薬を仕掛ける仕組みは古来からあり、
特に中世の攻城戦で活躍した。
星型要塞を突破する数少ない手段とも言える。
史実のオスマン帝国はこの坑道戦が得意であり、
攻城戦を戦った記録がある。
「卿はどうするつもりなのだ?」
「公爵様。
我らも音を調べ、坑道を掘り、
逆襲致します」
「・・・そんな事が可能なのか?」
「穴を掘る音は地中では響きまする。
そして工員はほぼ非戦闘員でしょう。
こちらからも穴を掘り逆襲して奴らを皆殺しにしましょう」
「よろしい、卿に対坑道戦の指揮を任せよう。
パッカード将軍。
詳細は頼む」
「承知しました。公爵様」
坑道戦は中世から近代にかけて攻城戦では重要な戦術になった。
スペイン映画のアラトリステのブレダの戦いで表現されている。
興味のある方は見て頂くと良いだろう。
総攻撃のあとは血みどろの坑道戦が地下で繰り広げられる事になる。




