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城塞都市ローリッジ大包囲戦② 作戦会議

 再び関係者を集めなおして作戦会議である。

今回は伯爵様とご隠居様、アーシャネット中佐、ちゃー様、

エリオス君、ロザリーナお嬢様と執事さんメイドさん、ヴェヌート少尉、

筆頭魔法使いのアイヴィーリさん、

双子エルフにニーナさんと伯爵家メンバー居残り全員である。


「これから作戦会議を始めます。

 宜しいですね?伯爵様、アーシャネット中佐」

「始めてくれ」

「・・・ニーナさんは呼んでませんよ」

「何よ、アンタ。

 そこの双子エルフは連れて行って、

 アタシ抜きで死地に赴こうというの?

 アンタの背中を守るのはそこの外国人じゃなくてアタシだけよ」

「これは学校の訓練じゃないんだよ?」

「アタシは今年から飛び級で大学生よ。

 つまり陸軍少尉扱いよ。

 国家と伯爵様に忠誠を誓う義務があるわ」

「・・・もう良い。

 その娘も今は軍人扱いだから連れていけ。

 内政官殿、話を続けろ」

「承知しました。伯爵様」


 最後には伯爵様に押し切られる形でニーナさんがついてくる。

心の中の本音を抑え込んで、話を始めるエリオス君。


「ではエリオス参謀殿。頼む」

「ハ。

 我らの戦闘目的は城塞都市ローリッジの防衛の支援ですが、

 敵の大軍と戦うにはあまりにも戦力差があります」

「・・・どうする?」

「当初の作戦通りで陽動として敵の目を引きつける行動を行います。

 城塞都市ローリッジへの包囲網を完成させないための軍事行動になります。

 第一優先は城塞都市ローリッジの補給路となるであろう運河と接触点の確保です」

 

 エリオス君が作戦を説明する。

まともに正面から戦う戦力は無い。

なので、絡め手というか出来るだけ引きつける作戦を考える。


「しかしどうするんだ?勝算はあるのか?」

「伯爵様。

 城塞都市ローリッジは他の大都市と同じ様に、

 北側を大河と隣接しており包囲網を作りにくく、

 補給路を確保しやすくなっています。

 敵は城塞都市ローリッジの北側に砦を築き包囲を完成させようと

 考えるだろうと推測しております」

「包囲網を妨害するために、その砦を攻撃するのか?」

「それもありますが、地図を見て頂きたくお願いします」


 とエリオス君が地図を広げる。地図は軍事機密である。

非常にラフな絵であるが、街の様子に加え更に手書きで追記してある。

この前、実際に目でみているので街の構造を把握しているのである。


「城塞都市ローリッジの東側に高さ4〜500m程の丘があります。

 ここに布陣して野戦築城します」

「・・・ここを敵に奪われると厄介だな。

 しかし野戦築城とはどういう意味だ?」

「丘の上で塹壕を掘り大砲と歩兵を隠し、

 馬防柵を作り騎兵隊の突撃を防ぎます。

 丘の上から下は丸見えですが、丘の下から丘の上は見えません」

「なるほど」

「大砲には主に榴弾もしくはぶどう弾を使い

 射程が短いので引きつけます。

 敵が近づいてきた時に一気に砲撃します。

 小口径砲とは言え、これだけ大砲があれば

 かなりの面攻撃力があります」

「・・・」

「敵が丘を登ってきた後に砲撃し、

 騎馬隊で後方を包囲して殲滅します。基本戦術です」

「しかしな・・・」

 

 エリオス君が説明すると

ちょうど、オーストリアの都市のウィーンのカーレンベルクの丘に部隊を

配置し、突撃をかけた史実と異なり野戦築城して対抗する。

榴弾は1376年ベニス共和国で使われた。それ以外にも明などでも使われている。

主に砲弾は17世紀で、30年戦争などで本格的に使われている。

そしてナポレオン戦争で改良された大型の牽引砲で広く勝利に貢献した。


「敵の数が問題ではないのか?

 我が軍は多くとも2000ちょっと。

 敵は恐らく10万を超える大軍である」

「それは、城塞都市ローリッジを全面包囲するという前提があります。

 ただし力攻めでは最新要塞であるローリッジを落とす事は不可能でしょう。

 つまり包囲に3〜4万人、そして坑道を掘って地下から爆薬で攻撃する人員が

 これも数万人。城塞都市の外からの逆襲を防ぐ為に砦を作り

 防衛する人員がこれも数万人。

 戦の定石から考えますと10万人前後は包囲を解かない限り動けません。

 実質的に別働隊を作っても2〜3万人と推定します。

 それを大砲で各個撃破します」

「・・・なんと。

 しかし、余なら別働隊に最低5万は出すがな。

 敵が常套手段で攻めてくるとは限らないだろう」

「・・・」


 エリオス君の説明に伯爵様がツッコミを入れる。

回り込んでしまえば良いのだ。それだけの数があるという話である。

しかしそうした場合、包囲網を解かねばならず

城塞都市は息を吹き返す。つまり冬までに陥落しない。


「仮にそれだけの敵を引きつける事に成功したのであれば、

 丘を放棄して逃げながら城塞都市から敵兵力を引き剥がします。

 城塞都市から大軍が二分すれば、包囲網に大きな穴があき

 冬までに陥落させるのは難しくなります」

「そういう考えもあるか。敵が動かなければどうする」

「先の話でもありますが、城塞都市の北側の大河を挟んで

 包囲網に夜襲を仕掛けるか、補給物資を送り込みます」

「確かに無理に戦う必要は無いな。

 敵も補給が十分あるとは限らない。焦るかもしれん。よかろう。

 ただし丘で敵を迎え撃つ案は面白いが固執しないように、

 他に敵に包囲される前に撤退すること。引き際を誤るな。

 特に卿らは無茶な戦いで決して死んではならぬ」

「・・・承知しました」


 まず作戦の第1案を伯爵様と協議するエリオス君。

そして作戦をしっかり聞いている伯爵家一同。

ここからエリオス君の戦は始まったのである。

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