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城塞都市ローリッジ大包囲戦① 魔王国からの義勇軍 

 南の異教徒がグリーヴィス公爵領の南側の砦を突破したと

ニュースがどんどん伝わってくる。

王家が主導してニールさんの新聞に情報を大量に流している。

意図的に情報を流す事で、国内に緊張を作り団結させる方針であるらしい。

グリーヴィス公爵領の前線の砦も大軍の前にはひとたまりもなく、

また焦土戦術と籠城が決まっているので効果的な援軍も送れない。

無理な戦闘を放棄させて情報と監視に注力させているのだ。


 そんな中、ちゃー様を中心に新兵の訓練を続けている

アナトハイム伯爵家であったが、急遽エリオス君とちゃー様が

伯爵様の館に呼び出される事になった。


「ちゃー殿。伯爵様からの急な呼び出しです」

「エリオス殿もか。

 ちゃーもいきなりの伯爵殿からの呼び出しで駆けつけている」

「ちゃー殿もであれば当然戦争の話でありますな」


 とちゃー様とエリオス君が会話しながら伯爵様の館に向かう。

とそこには伯爵様とアーシャネット中佐、それにロザリーナお嬢様と

執事さんとメイドさんがいた。

不思議な組み合わせのメンバーに嫌な予感がするエリオス君。


「よく来てくれた。

 卿らに来てもらったのは、

 同盟国である魔王国からの要請があり

 国王陛下が承認なされた。陛下の勅命であり決定事項だ。

 卿らにそれを共有したい」

「ハッ、承知しました」


 どことなく乗り気でない伯爵様が説明する。

恐らく事前に国王陛下から命令を頂いているのであろう。

はぁ、と諦めた顔をして説明する。

その姿勢に少し不審に思う一同。

と、ロザリーナお嬢様が手紙を開き一同に見せながら言う。


「ふふふ。

 妾はこの時をずっと待っておったのじゃ。

 ここからは妾が説明するぞ。

 これはロイスター国王が承認した魔王陛下からの勅命じゃ。


 勅命である。

 ロザリーナ中尉以下はアナトハイム伯爵軍の指揮下に入り

 義勇軍として此度の異教徒との戦に参戦せよ」

「!!!」


 ロザリーナお嬢様の宣言に驚く一同。

まさか、という顔をしてお互いの顔とロザリーナお嬢様の顔を見る。


「まだ妾の話は終わっておらぬ。しっかりと聞くが良い。

 

 朕の名においてロザリーナ中尉とエリオス卿に最新型3ポンド軽砲100門を与える。

 これをもって名誉ある魔王軍およびロイスター王国軍として異教徒どもを粉砕せよ。

 魔王 アレクサンドリナ・フォン・ルシフェル。

 ・・・以上である」


 一同が再び驚く。

まさか大砲まで持参してくるとは。

驚いたエリオス君がロザリーナお嬢様に言う。


「なりません。ロザリーナ中尉殿。

 貴方ほどのお方を外国での戦争で死なす訳にも参りません。

 今一度、ご自重を」

「エリオス。

 汝の意見は最初から想定しておるが、これは勅命じゃ。

 諦めて受け入れよ」

「最近おとなしいと思っていたら、

 裏でこんな工作をしていたのですね」

「・・・妾も魔王陛下を説得するのは大変じゃった。

 それはもう大反対されたのじゃ」

「常識的に考えたら当たり前です。

 そんな外国で命を賭ける必要などどこにもありません。

 それに我が国は野蛮人では無かったのですか?」 

「調子にのる侵略者の異教徒共を

 横から殴りつけるのもこの上なく楽しかろう。

 南の海ではもはや異教徒の侵略の前に魔王国の戦は避けられぬ事態。

 それに何かの縁で妾もこの国に滞在しておるのじゃ。

 この歴史に残るであろう1戦に参加せねばもったいない。

 従軍して異教徒どもの戦を我が魔王国に情報として持ち帰るのじゃ」

 

 このロザリーナお嬢様の発言にブルーになるエリオス君。

野蛮人はいったいどちらですか?と心の中でつぶやく。

もう少しだけ紳士であってほしいものである。


「観戦武官ではなくまさか義勇軍という扱いとは。

 魔王陛下もこんなじゃじゃ馬お嬢様に思い切った事をするな」

「公式に魔王国が参戦するにはそれなりの理由がいるからの。

 同盟国に義勇軍扱いは間違っておらぬ。

 それに同盟国とは言ってもまだ秘密外交の話じゃ。

 あと伯爵よ。妾はじゃじゃ馬では無いぞ」

「じゃじゃ馬お嬢様ですな」

「じゃじゃ馬お嬢様です」

「じゃじゃ馬娘だな」


 伯爵様の発言に同意する一同。

執事さんもメイドさんも続いて頷く。

アーシャネット中佐もため息をつく。

行動力がありすぎるのも問題である。

この戦馬鹿娘が、と心の中で思うエリオス君。



「しかし3ポンド軽砲を100門とは、魔王国も思い切った事をしますな。

 一軍の装備に匹敵します」

「魔王国中からかき集めたのじゃ。

 馬で引ける3ポンド軽砲をな。

 城塞都市に送った重砲では牽引出来ぬから、

 こちらの野戦では動けなくて役に立たぬ。

 それに妾は敵に包囲された城にこもるのは嫌じゃ。

 エリオス。汝が心から欲しいであろうものを妾がプレゼントしてやろう。

 魔王陛下はいたく汝を気に入っておる。

 魔王陛下からの思し召しじゃ。何も言わずありがたく受け取れ」

「しかし、魔王陛下が何故僕をご存知なのですか?

 一度もお会いしたことも、お話したこともありません」

「汝が、いや汝の戦略と説得がきっかけで食料を我が国に供給してくれたのじゃ。

 話は外務大臣から全部聞いておるぞ。

 魔王陛下も国民もいたく汝に感謝しておる。

 大陸封鎖のおかげで我が魔王国は貴国からしか食料を買えぬのじゃ。

 でなければ、魔王国は今頃食糧難で地獄じゃ」

「どうして、それを?」

「・・・ごほごほ。それは秘密じゃ」


 エリオス君の質問に答えるロザリーナお嬢様。

アルビノの白い肌が赤くなっているのに気づく一同。

雰囲気を誤魔化すかのごとく、ロザリーナお嬢様が言う。


「そんな事はどうでもよかろう。

 異教徒共が近づいておるのじゃ。

 作戦会議を行うぞ」

「ハイハイ。

 伯爵様、アーシャネット中佐。宜しいのですか?」

「後はアーシャネット中佐に任せる。

 じゃじゃ馬共をまとめてくれ。余は疲れた」

「・・・承知しました」


 伯爵様とアーシャネット中佐がアイコンタクトをして返事する。

いかにも面倒事に巻き込まれたな、という表情をしながら。

強力な援軍を得て、エリオス君は戦争に挑む事になった。

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