店舗リバティー・マーケットとマーケティング論⑪ 伯爵様とご相談。軍服とBtoGのビジネスモデル
商売に必要なものは沢山ある。
その中でも一つづつ重要なものを確たるものにする。
それは商売に勝つための戦略。
その中で重要な一つのキーとは?
「エリノール副店長。
少し伯爵様の所に報告に行きましょう」
「アナトハイム伯爵様ですか?
何か報告出来ることがありましたでしょうか?」
「最初に報告して相談するのが、
立場上本来は伯爵様ではあるんですが、
既に色々な人を既に巻き込んでしまいました。
本件も最終的には伯爵様の為になるので
相談してご協力を頂きましょう」
困った時は、伯爵様に相談する。
人に相談出来るというのが、唯一かつ最大のエリオス君の強みである。
実際の仕事でもいざ、となる前に相談できる人を
沢山作っておくのは重要である。
日頃のお付き合いは大切なのである。
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と言う事で伯爵様の館に向かい相談をしにく。
上司であるが、最近はあまりお会いする機会が少ない。
戦争の準備で色々と忙しくなってきている。
「内政官殿。
よく来たな。
今日はどの様な要件であるか?」
「実はキルテル村で生産する繊維と靴下を
王都で販売しようと思うのですが」
「・・・その件は噂で耳にしている。
余の領内で生産した繊維を王都や大都市で販売する話だろう。
卿は何故、余に最初に相談せぬのだ?
卿の商売は余への税金で、最終的には余の利益と申したであろう」
「ご存知でいらっしゃいましたか」
当然気づくだろう、と思われがちであるが
それは伯爵様が情報網を確保しているからに他ならない。
本来はエリオス君から伯爵様に報告するのが筋である。
「卿の事だから放置していても自分で商売はなんとかするであろう。
しかし、政治の話であれば余に出来る事はある」
「恐縮でございます」
「まずは悩みごとを正直に余に話してみろ
卿が最初に相談するのは殿下でも
グリーヴィス公爵家でもないはずだ」
「実はですが・・・」
内容を整理して伯爵様に相談するエリオス君。
王都での販売と最終製品としての靴下の売り込み。
売り先のあてと生産設備の導入の課題についてなど。
量産するにしても売れる見込みのある需要が確定してからである。
そうでなければ、
「手工業ギルドが邪魔だという事か。
確かに余の領内では独占販売権を持つ組織は事実上存在していない」
「小さな村々が多いですから」
「・・・重要な事を卿は忘れていないか?
卿らが訓練している軍隊の衣類など。
まだ将校のみにしか衣類は供給出来ていないが、
卿の理想とする、走って強行する速度ある軍隊、
長時間移動をすると靴が直ぐにボロボロになるであろう。
裸足で強行軍を率いさせる訳にもいくまい。足を怪我して速度が出ぬ。
つまり、強力な軍隊には安くて丈夫な靴、そして衣類が必要と考えている」
「そ、それはまさか軍服でございますか?
伯爵様」
「そのけったいな呼び名は余には分からんが
軍隊には悪天候にも耐える壊れない衣類が必要だ。
余はそう考えておる。
卿の工場で安くて耐久性のあり、大量に量産出来る衣類を
近い将来は卿に要求する。
今はまとまった金がないがな」
「・・・まさか、そうくるとは」
伯爵様から想像もしていなかった言葉が出てきた。
まさか軍服を整備する考えがあったとは。
軍服はスウェーデンのグスタフ・アドルフ2世の時代前後に
考えれて採用されたという話になっている。
ちょうど17世紀初頭である。
その後は、1660年のフランスのルイ14世による改革で
軍服が正式に導入された。絶対王政の時代である。
「わざわざ王都などの手工業ギルドに重要な仕事をくれてやる必要もない。
ならばまず余が卿に仕事を託すのが筋だというものだ。
靴下だけと言わず衣類から靴まで余の領内で製造せよ。
それの生産設備を導入して事業を軌道に乗せよ」
「まさか伯爵様からBtoGのビジネスモデルが出てくるとは・・・」
「なんだその言葉は、余には分からんが
出来が良ければ余の館や従業員の分も余剰分を購入してやろう。
安ければ、他の貴族にも斡旋してやろう」
「・・・ありがたき幸せ」
伯爵様が言っているのは軍隊を政府、従業員に例えた
B to G(Government)の商売モデルの実例である。
他にもB to B(business)、B to C(customer)や
B(Bussiness) to E(Enployee)のビジネスモデルである
こうしてエリオス君は生産物の大手の販売先を確保することに
成功したのである。
「販売権の件は余の紋章を与えよう。
余が卿の店舗に公認する。
それだけ、余の関係者の範囲内においては表から文句を言えぬであろう。
後は王家次第だが、余からも陳情してやる。
余が卿の為に出来る事はその程度だ」
「心より感謝申し上げます」
「当然余から条件をつけるがな。
余が調達する分は余の領内で生産せよ。
余の領内で原料を加工し、余の領内で雇用せよ。
即納分や特注品は容認する」
「承知いたしました」
「忘れるな、卿は余の大切な領民であるぞ。
そして卿の商売は余の利益だ。
公爵家や王家などにうつつを抜かすな」
「・・・承知しました」
「では頼む。期待しているぞ」
伯爵様から商売の種をもらう。
これをきっかけに設備を導入し雇用も進める。
それで量産効果を生み出し、物量でも圧倒するのだ。
BtoCのビジネスモデルはなかなか認知してもらうのに難しい課題があるが、
BtoBやBtoGのビジネスモデルは指値である。
決済権限のある人物との直接交渉になる。
そういう商売でスケールメリットの差を作り上げるのだ。