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店舗リバティー・マーケットとマーケティング論⑨ アンケート結果と課題

 皆で集めてきた市場調査のアンケートを集約する。

アンケートは非常に重要な情報源である。

ユーザーの声をしっかりと取り入れると共に、

既存の競合の弱点をしっかり分析するのだ。

アンケートの手法はマーケティング・リサーチの手法としてよく使われる。

定量評価と定性評価という形で。

近年ではWebアンケートが多いだろうか。


「アンケートの結果を集計します。

 計算してまあおおよその平均値を産出します」

「平均値って何?」

「真ん中の値ですね。

 合計して人数で割った値。

 ばらつきが小さくなりますが、大体の傾向が分かります」

「ふーん。

 そんなので何が分かるの?

 意味があるの?」


 アンケートの手法に疑問の視点で見てくる我らが社員。

まあそうだろう。アンケートは基本的にお客様の情報収集である。

しかしこちらが売りたいと思っている商品とお客様が買いたいと

思っている商品が同じとは限らない。

実際にお客様が欲しい商品をヒヤリングする必要がある。

安くて良いもの、それを数値化し言語化しないと分からない。

どこと比較して安いのか?どの材料と比較して良いのか?

などなど、疑問点は沢山出てくる。

つまり競合を調べてから比較してみないとわからないのだ。


「計算するとこんな点数になります」

「ふーん。アンタも面白い事を考えるわね。

 靴下ギルドの点数を読んでみると、

 価格が高い、というのは共通点ね。点数低いわ」

「品質の点数は悪くないのね」

「納期もいまいち良くない様子ね。時間がかかるのかしら?」

「在庫販売するほどの生産量が無いのかもしれない」

「場所が不便というのも感想に書いてあるわね」

「感想欄に、店員が横柄で乱暴ってのも。

 ウチの店舗なんて素人揃いだからもっと怖い事を書かれそう」


 皆で点数と感想を見て悩む一同。

競合と比較して初めて商売の優劣が分かるものだが、

意外とキツイ意見を平気で書いてくるのが事実である。

お客様にキツイ事を書かれると、非常に怖くなる事もある。

競合と比べると、現段階では必ずしも勝っている訳ではないのだ。

同じ様に自店舗のアンケートを取るともっとひどい事を書かれる事は珍しくもない。


「私達は本当に大丈夫かしら?」

「エリノール副店長。

 だ、大丈夫ですよ。多分」

「負けている側には失うものはありませんよ。

 エリノール副店長」

「そうなの?

 ニーナちゃん。チェリーちゃん」

「あたいは大丈夫だから。多分」

「・・・それはお店の商売と違う話ですよね」


「まあ予想通りですね」

「エリオス君?」

「予想通りなら最初からそう言いなさいよ。アンタ」

「初期の想定通り、高級品はまだ勝負出来ない。

 中級品は価格で勝負。

 低級品は新しい市場と顧客を作る目的でとにかく大量に売る。

 基本通りです」


 一応、説明に入るエリオス君。

自分の弱点を知りカバーしながら、相手の弱点から潰す。

商売の基本である。

しかし順風満帆という訳ではない所もあって、


「店長、課題は無いの?」

「課題ですか。エリノール副店長。

 課題はまず品質です。

 粗悪品と思われたら最後です」

「そんなの機械で作るから普通に作れるんじゃない?」

「世間では機械を知りません。

 熟練の職人の技術力。そういう力を甘く見てはいけないのです。

 安かろう、悪かろうのイメージを付けられると

 誰も買わなくなります」

「あくまでも印象の問題ね」

「そういう噂は直ぐに広まってしまい。

 誤解を招くと商売に悪影響します」

「・・・難しいのね。商売って」

 

 新規参入の難しさは知名度とイメージである。

特に粗悪品のイメージを付けられてしまうと、

長々と悪影響が残ってしまう。

そうすると、安くても売れなくなる。

ブランドイメージの構築というのは、誰もが苦しむ入り口である。

手にとって買ってもらうまでの段階は非常に壁がある。


「アンタ。売る方の、

 ここのアンケートに書いてある

 立地の問題はどうするのよ?」

「ニーナさんは良い所を突いてきますね。

 実は立地ではここの場所では勝てませんね。

 他の方法で補う必要があります。

 まずは広告です。

 後は訪問販売するとか。

 売り方を考えるんです。現在と変える形で」

「・・・策があるみたいね。店長」

「こういう時は頼もしいわね」

「エリたんはあたいのお婿さんだもん」

「チェリーちゃん。僕はチェリーのお婿さんではないからね」


 コンビニの様に近くに沢山あって、24時間いつでもやっていれば

非常に便利なのであるがこの時代はそうもいかない。

お客様に歩いて買いに来てもらうというのも非常に大きいコストである。

しかし一番の課題は、この店と商品を知ってもらう事だ。

最初は上手に売りに行くという課題があるが、

エリア・マーケティングを突き詰めるにはもう少し先の話になる。


「エリたん。

 ここに書いてある納期はどうなの?

 売れると嬉しいけど、沢山作る人員はここにはいないわ。

 本当にお客様に沢山売らないと利益が出ないの?」

「・・・チェリーちゃんは鋭い所を突いてきますね。

 生産能力は結構重要ですが、

 今はそんなに沢山の人と設備がありません。

 ちょっとづつしか作れません。

 しかし生産し続けて売らなければ、この店舗の借用金と人件費、

 機械の導入費を払えません」

「売るのに必要な分を作れなければ、納期で負けるの?」

「言いたくないですが負けますね。

 最初は程々に売れるのが理想です」

「例えばさらに売れ始めたらどうなるの?」

「さらに借金して機械を作り、人を雇い、工場を立てないと増産出来ません。

 当然時間もかかりますし、お金が入ってくる前の出費になります」

「そこで、苦情が入ってストップしたら?」

「もちろん借金したお金が返せなくて倒産です」

「商売って怖いのね」

「当面はキルテル村の工場で生産して、不足分を送ってもらいます。

 当然納期はかなりかかるので在庫を十分持つ課題が出てきます」

 

 注文があって黒字でも倒産する例は珍しくない。

そのキャッシュフローの問題はあるが、別で扱う事にする。

また「生産」ボタンが押せなくて売れなくなるケースも結構ある。

原材料の調達や販売の問題、人の問題や政治問題などが出てくると

黒字でも倒産する。

そういう場合も良くあるので奥の手を使うしかないかもしれない。

最初の商売は課題だらけである。

新規参入というのは非常に怖いのである。

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