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店舗リバティー・マーケットでの会議 営業不振の悩み

 久しぶりに店舗のリバティー・マーケットで会議を開く。

近況を共有するためである。


「最近景気はどうですか?副店長」

「えーと、お姉さん困ったな・・・」

「エリノールお嬢様?」


 何故かすっとぼける副店長ことエリノールお嬢様。

うん儲かっていないのは理解している。

別に知っているのですっとぼけなくても良い。


「ハイハイ。

 紙の売上はニールさんの新聞が戦争ネタで盛り上がっていて順調よ。

 繊維の販売は増えているけど直販店としてはまだまだね。競合が多いわ。

 靴下の売上はイマイチね。もっと売らないと。 

 エリカお嬢様の会社からまだ砂糖はほとんど入ってこないし、

 聖書の活字づくりの出費で総合的に赤字ね」

「ニーナちゃんご説明ありがとうね」

「いや副店長もご存知でしょう。

 赤字だからってすっとぼけても仕方がありませんよ」


 経営状況をニーナさんに説明してもらう。

ごまかそうとする副店長さんをジト目で見る。

えへへ、と笑う副店長さん。

可愛いが騙されない。


「しかし赤字は悪である。

 こまりましたね」

「じゃあ活字づくりを止めよっか?

 止めようよ」

「それは止めません。

 お金が入ってくるのは聖書が実際に売れてからです。

 少し時間がかかるんです。

 夏に出版できればまず伯爵様に高値で引き取ってもらいます。

 別に慈善事業でもありません」


 ほとんど言い訳に近くなっているが、

活字の製造費用が大きな出費になっているのは間違いない。

そのためにお父様や伯爵様に資金をお借りしているのだ。

道楽と言われても仕方のないレベルになってしまっている。


「僕たちの人件費の問題かな?」

「いやいや、ミネアちゃんが売り子を日中手伝ってもらっている

 から店舗が成立している訳であって」

「チェリーは?」

「もちろんチェリーちゃんも。ありがとうね」

「わ、私はちゃんと働いていますわよ」

「ティアナも僕も交代でですけどね」

「二人共いつもありがとうございます」


 日中の売り子として働いてもらっている二人にお礼を言う。

この二人がいなければ店舗は成立していない。

他の人たちは学校で夕方まで交代出来ない。

そして夕方からは双子エルフにも交代してもらっている。

もう少し従業員を増やしたいのは本音ではあるんだが。


「でもどうするのよ。店長。

 そのうちお給料も払えなくなるんじゃないの?」

「伯爵様から頂いているお給金があるから、

 頑張ればそんな事はありませんが・・・」

「それはエリオス君個人へのお給料でしょうが」

「・・・否定はしません」

「新しく売れるものを作らないと駄目ね」


 ニーナさんにビシっと言われるエリオス君。

そう言われてもな、と。

直ぐに売れるものを簡単には用意出来ない。

王都には沢山競合店があるから、競争に打ち勝たねばならない厳しい世界。


「まずみんなで手分けして知り合いから靴下を売ろう。

 もとい押し付けて買わせよう。

 少々は無理押ししてでも」

「安くしても良いの?エリオス君」

「多少はね。

 機械で編むから人手で作業するより短時間で作れる。

 売れれば十分元は取れる」

「でも靴下を買ってくれるそんな都合の良い人いるかな」

「そうは言っても、この際知り合いに押し売りするしかない」


 靴下の売れ行きが難しいのは当時はファッションだから

流行り廃りがあるからだろう。

あとは庶民に沢山買ってもらうにはもう少しコストダウンが必要。

最新のファッションじゃないと買わない富豪や

安くないと買えない人たちとの間で

中途半端な位置づけである。


「ごめんくださーい。エリオス君いる?」

「いた」

「いましたね」

「丁度良いタイミング」

「理想の顧客」

「こういう時のエリカ嬢」

「エリカお嬢様とグリーヴィス公爵家」

「・・・な、なによいきなり」


 途中に寄り道したエリカお嬢様を発見する。

優良顧客候補にみんなが反応する。


「エリカお嬢様、お願いがございます」

「いきなりどうしたのよ。エリオス君。

 驚くじゃない」

「実は、従業員の皆さんの生活が困っていて、

 是非キルテル村名産の靴下を買って頂きたいと」

「こ、こういうのは流行りがあるからね・・・

 舞踏会とか見栄があるじゃない」

「お安くしておきますよ」

「う、ウチの公爵家はそんなにお金には困っていないから」

「そうですか。

 今なら大学の定期テストの過去問がオマケでついてきます。

 過去問の精度は、ニーナさんが飛び級受験で合格した実績もあります。

 大学の留年の心配が小さくなります」

「・・・それは魅力的だわね。

 ズルいわ。エリオス君」

「こらエリオス君。そこでアタシを話のダシにしない」

「大学で留年などしたら、公爵様に勘当させられるかもしれません」

「ぐっ。こちらの弱みを正確に・・・」

「大学留年したらその場でお嫁に」

「・・・分かったわ、もう止めて。勘弁して。

 公爵家の従業員と私達姉妹の分を買うわ。

 あとで執事に指示しておくから。

 ね、ちゃんと過去問は頂戴よ。忘れないでね」

「毎度ありがとうございます」

「おおー」


 なんとかゴリ押ししてエリカお嬢様に靴下を買ってもらう。

やはりエリカお嬢様の弱点は大学のテストであろう。

最初はどうしても売れないから知り合いから買ってもらうしかない。

こっそり公爵家お墨付き、なんてキャッチフレーズを考えよう。


「でも安くしても簡単には売れないものね」

「商売は知名度と信頼から始まりますから。

 その次に価格と品質です。

 重要なのはお客様を見つける事と逃さない事です」

「私達も知り合いにお願いして頼んでみるわ」

「喧嘩にならない程度に無理しないで下さいね。

 人間関係に傷をつける事だけはご法度です」

「分かったわ」

「・・・ニールさんの新聞に公告を出そうか。

 宣伝広告費をケチった罰かもしれない」


 良かろう、安かろうでも売れるとは限らない。

だれも知らない小説、もとい商品は手にとってもらえない。

まずは宣伝広告費をケチらず増やしてアピールしないといけない。

ニールさんにお願いしよう。

ビラ配りもしないと駄目である。

商売はまず徹底した広告からはじまるのだ。

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