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新学期とオルフィーニお嬢様とローレリアお嬢様

新学期が始まり大学と付属学校が開始される。

しかし学生の表情は重い。

大戦争に巻き込まれる予想が誰にも分かったからである。

しかし大半の学生の予想とは逆に徴兵される事はほとんど無かった。

王家や貴族の多数が軍の編成をためらったからである。


「おはよう」

「おはようございます」


表面上はいつも通りの生活が待っている様に見えた。

もっとも、戦場になるグリーヴィス公爵家と

参戦を決めているアナトハイム伯爵家だけは別である。


「エリオス君。おはよう」

「おはようございます」

「エリオス君。おはようございます」

「ええ、おはようございます」


学生に挨拶をされながらも遠巻きに警戒されるエリオス君。

各貴族やニールさんの新聞から、南の異教徒の情報が逐一伝達されている。

宰相閣下の戦略は国内の内乱を抑えるための情報戦術に出ている。

そのため、軍人として参戦するエリオス君や大学生には

表情を伺いながらも、遠回しに観察されているのであった。


「おーい、エリオス君」

「ああ、エルン君」

「元気なさそうだな。

 やはり戦争が始まるのか?」

「直ぐでは無いですが、いずれ」

「・・・そうか」


友達のエルン君が声をかけてくる。

察して深くは聞いてこない。

エルン君はギルド出身の平民なので、

戦争に参戦する予定は今の所ないだろう。

ゆえに余計心配になるのである。


「おはよう。エリオス君、エルン君」

「ニーナさん、おはようございます」

「今日はアンタ元気ないわね。

 アタシが元気をつけてあげる」

「いつもありがとう」

「・・・やっぱり戦争になるのね?」

「うん、多分」


ニーナさんに励まされるエリオス君。

昔からよく知った幼馴染であるので気持ちが伝わってしまう。


「アタシがアンタを励ましてあげるわよ。

 アタシの魔法にまかせなさい。アンタを守ってあげるから」

「それは・・・」

「おおエリオス。汝を探したぞ。

 ここにいたのか」

「あっ」

「ああ、ロザリーナ中尉殿。

 おはようございます」

「うむ」


ニーナさんが励まそうとした瞬間に

いつものロザリーナお嬢様に出くわしてしまった。

残念そうな顔をするニーナさん。

それを微笑ましく眺めるエルン君。


「どうやらやっと戦争になるようじゃな。

 異教徒どもの噂を妾も聞いたぞ」

「その様ですな」

「当然、汝は知っておるか。

 なら妾も参戦させろ、と言いたい所だが

 魔王国本国に問い合わせ中じゃ。

 まだ回答をもらってはおらん」

「魔王国は中尉殿を異国の戦争に参加させるつもりですか?」

「どうであろうな。

 魔王陛下がなんと言うか。

 多分大反対されるかもしれないが、歴史に残る大戦になるだろうから

 その目で直接見てこいとも言うかもしれんな」

「・・・僕はみんなを死地に追い込みたくは無いですね」

「妾は軍人であるのでその時はその時じゃ。それが軍人である。

 まあ本国には汝へのプレゼントを相談しておる。

 魔王陛下のお心使いじゃ。

 間に合えば良いがな」

「プレゼントですか?」

「楽しみに待っているが良いぞ。

 おそらく汝が一番欲しがるものじゃろう。

 何が来るかは来てからのお楽しみじゃ」


嬉しそうな顔でロザリーナお嬢様は胸をはって言う。

このお方は根っからの武人なのでノリノリである。 

てっきり力づくで迫ってくると思いきや、

ちゃんと周囲を固めて段取りを取ってきた。これは手強そうだ。

ため息をつくエリオス君とは別に

落ち込むエリカお嬢様が現れる。


「あらエリオス君。

 話は聞いているわね」

「おはようございます。エリカお嬢様」

「私の母国の戦いなのに次の戦は外されたわ。

 王都で家族を守りなさいって」

「そりゃそうでしょうね。

 後継者と年端もいかない娘を戦で死なせるわけにはいかないでしょう」

「私もまだまだ未熟者ってことね」

「親からみたら子供はいつも可愛いものです」

「貴方はすでに子供の雰囲気をしていないわ。不気味ね」

「・・・」


不機嫌なエリカお嬢様が珍しくエリオス君に嫌味を言う。

まあ家庭の都合で色々とあったのであろう。

何も言わず聞き流す。


「まあエリカなんぞ半人前いても足手まといじゃろう」

「・・・確かに事実そうなんでしょうけど、

 貴方に言われるととても面白くないわね。

 内戦から外されて異国の学校に飛ばされた身分で」

「それを言うでない。

 妾は当時、すでに正規の軍人であったのに。

 まあ汝の気持ちはよく分かるが他の者に任せて諦めるがよい。

 大学でしっかり勉強するんじゃな」

「そうね。

 ありがたくそのお言葉を頂戴しておくわ。

 ロザリーナ中尉殿」

「フン。

 妾は軍人じゃぞ。

 いつもいつもお嬢様扱いするでないぞ」

「ふふふ」


ロザリーナお嬢様の言葉に若干気分を戻した

エリカお嬢様が微笑む。

なかなか見られないシーンであるが、

ロザリーナお嬢様なりに励ましているのであろう。


「そうよ。エリカお姉さまはずっと半人前ですから

 さっさと婚約者と結婚するのが宜しいですわ」

「エリオスお兄様は私達がお守りしてあげますから、

 エリカお姉さまは美味しいお砂糖とお菓子を用意して頂ければ良いのですわ」 

「あなた達ねえ・・・」


いつの間にか現れるオルフィーニお嬢様とローレリアお嬢様。

しれっと姉に毒舌をはく妹にげんなりするエリカお嬢様。

この問題児の妹達の面倒をみないといけないな、と思い出す。


「オルフィーニお嬢様とローレリアお嬢様。

 おはようございます。

 今日から学校ですか?」

「ええ、私達も付属学校に入学でございますこと。

 よろしくお願い致しますわ。エリオスお兄様」


嬉しそうにニコリと笑うオルフィーニお嬢様とローレリアお嬢様。

エリカお嬢様と同じく二人共銀髪の青目、ロングの美少女。

非常に可愛らしい。

そして強敵の登場にむくれるニーナさんの姿があった。

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