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近況報告

打ち合わせが終わった後は雑談会になる。

もちろん多忙な方ばかりであるが、

このメンバーが集まるのはそうなく、腹の探り合いになる。


「製鉄会社の話は終わったが、近況はどうだ?」

「殿下、南で異教徒が大軍勢を集結させつつある情報が届いております」

「うむ、宰相。奴らの動きは想定通りだな。

 しかしもうすぐ4月である。

 当初の予定の3月よりかなり異教徒の動きは遅いな」

「ハッ。殿下。

 食料の高騰が響いているのかと。

 奴らの準備が遅れているのでは無いかと推定します」

「食料買い占め戦術は効果があったと言うことか?

 魔王国や他国と合わせて相当の資金を使ったが、

 無駄ではなさそうだな」

「軍隊は食料を必要とするからでございます。

 異教徒の動きは5月になるであろうと間者から報告があります」

「時間は我が国を有利にする。

 帝国議会も開催せねばな。

 ここからが勝負どころだ」

「戦争で食料が高騰すれば市民には打撃ですが、

 高止まりした際に放出すれば異教徒から買い占めた時の元は取れますな」


若干腹黒い宰相閣下とトーマス殿下が会話する。

魔王国への義理は果たしているし、食料は飢饉に備えてもよいし

転売しても良い。

国庫に与えるダメージは計り知れないが。

増税は当然、貴族や富豪の反感を買うだろう。

戦争になればそれどころではなくなるのも事実である。


「南の防衛は大丈夫か?」

「防備は固めましたが、戦力差が大きすぎます。

 籠城戦しかございません。正面から戦って勝つ事は不可能でしょう」

「城塞都市の防御力だけでは足りぬか?」

「包囲されて完全に補給を断たれれば負けです」

「補給路が勝敗を分けるか」

「異教徒も母国からの補給線が相当長くなるでしょう。

 我が国が補給路を確保し敵の補給線を断てればあるいは」 

「うむむ・・・」


今度はグリーヴィス公爵とトーマス殿下が会話。

圧倒的戦力差に対抗するには難攻不落の要塞と補給が必要である。

冬まで持ちこたえられればという前提だが。

トーマス殿下が宰相閣下と伯爵様を見て質問する。


「西と東の国境線は大丈夫か?

 援軍は出せるか?」

「西のジュリヴァ王国は盗賊や海賊を動かして国境線で小競り合いを続けて

 スキがあれば侵略する動きを見せております」

「東の王国も怪しい動きをしておりまして、

 国境線から兵士を動かすことが出来ません。殿下」


西の伯爵様と東の宰相閣下が説明する。

それぞれの防衛に穴を開けるのが難しく兵力を引き抜くことが難しい。

それは異教徒の外交の結果であろうか?

軍を動かす前に戦争はすでに始まっている。


「他の貴族もビビって日和見するだろうか。

 大規模な援軍は期待できぬであろうな」

「王家はいかがですか?」

「王都の守備隊を引き抜く事は陛下が許可せぬであろうな。

 ま、交渉はしてみるさ」

「お願いします。殿下」


トーマス殿下が答える。

まだ絶対王政になっていないので、封建社会では王家はそこまでの権力は持っていない。

貴族や教会を制御するのは難しいのである。


「敵は超大国であるし隣国の動きも不透明である。

 これで内乱が起きたら終わりだな」

「内と外を見れば宗教問題で、内戦直前。

 援軍は期待できませぬな」

「新教徒派に宥和政策が必要か。

 少なくとも戦争が終わるまで、内乱は避けねばならない」

「宗教和議を陛下に堅持して頂くしかありませぬな。

 国難を超えるまでは」


第1次ウィーン包囲の時代は宗教問題でヨーロッパは分断されていた。

史実のカール5世もオスマン帝国との戦争が始まると

新教徒のルター派の宥和政策を一時的にだが出している。

内乱を防止する詭弁であっただろうが。


「魔王国からの軍備の輸入は順調か?

 グリーヴィス公爵」

「魔王国は律儀に武器の輸出を続けています。

 城塞都市の防衛能力はかなり上がりました」

「そうか。

 奴らも我が国を直ぐに見捨てたりはしないだろうか」

「陸で国境を接している訳ではないのが救いでありましょう。

 遠方の同盟国はお互いに利用できる所があるのでしょう」


魔王国から武器の輸入は続いている。

約束は守られている様子である。

戦況に影響は出るであろうか。



「おい、アナトハイム卿。

 坊主はどうするつもりだ」

「内政官殿は、後詰として独立部隊で支援してもらうつもりでおります」

「それは良いが坊主は我が国の最後の切り札だ。

 安易に死なせるではないぞ」

「承知しております。殿下」

「・・・坊主は心配だな。無謀な所があるからな」

「お察しします」



それはどういう意味だろうかと目線を送るエリオス君。

さすがにこの場で発言したくないので、アイコンタクトを試みるが

誰も意図的に目線を合わせてくれないので心意を読むことが出来ない。



「いずれにしても春から夏にかけて開戦する可能性が高い。

 それまでに準備出来る事をしておくしかない」

「承知しました。殿下」


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