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石炭コークス製造⑩  対策会議

釜から火がふいた。

呆然と見ているエリオス君。

幸いにも釜の材料である耐火レンガは無事で、

ガス圧抜けと発炎しただけである。

しかしあたりは当然黒焦げである。

エリオス君は一時的に避難していたが、今は釜の様子を見守っている。


「アイスバレット!」


氷系の魔法を使えるエリカお嬢様とニーナさんが駆けつけて、

即座に周囲を冷やす。

水を掛けるより少しだけ強力である。

魔法って便利だな、と思いつつも

誰でも使える訳ではないので技術が魔法を超えなければならない。


「ああ、これはなんとかボヤですんだのかな」

「ナニ言っているのよ。アンタ。

 早く逃げてなさいよ。

 火傷したらどうするのよ」

「そうよ。みんな貴方を心配しているのよ」

「だって、せっかくの・・・」

「「お黙りなさい」」


ニーナさんとエリカお嬢様に激しく怒られるエリオス君。

これはずっと後々まで怒られるであろう。

教授やトーマス殿下も駆けつけて消火作業の指示を出す。



「小型試験の釜という所が幸いして被害はそんなに無いが、

 事故は事故だ。

 次の試験はどうするんだ?

 また再発するぞ」

「・・・対策会議を行いましょう。再発防止を進めます。

 関係者を集めて対策を決めます」

「そうか。なら人を集めよう」


教授のお叱りに対策会議の開催を提案する。

未知の領域の試験で失敗する事は珍しくないのだが、

事故すると試験どころではなくなってしまう。

ただでさえ危険の多い高温炉なのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

関係者が一同に揃う。

当然忙しい人もいたであろうが、安全最優先という事で呼ばれる。

エリオス君は心の中で申し訳ないと思いつつ

対策会議の議事進行役を務める。


「では対策会議を始めようか」


教授の一言で場が静まり返る。


「対策会議の議事進行役は私エリオスが行います。

 決済役は教授でお願いします。

 議事録係はラスティン先輩にお願いします」 

「決済者はトーマス殿下では無く俺か。

 まあ良いが」

「対策会議ですからね。トップのご参加は重要ですが、

 最高責任者の社長に毎回出て頂く訳にもいかないですから」


会議の役割を決める。

こういう所を決めておかないと会議は進行しない。



「で、被告。どうなのよ」

「裁判ではありませんよ。エリカお嬢様」

「アンタが主犯でしょ?」

「だから、判事ごっこじゃありませんって、ニーナさん」


文句を言うお嬢様を黙らせつつ、議事進行を開始するエリオス君。

慣れていない人には無理だろうから、

最初はエリオス君が自分で進めなくてはならない。


「まず日時は本日の午前10時前後、

 場所は広場の仮設耐火レンガ釜。

 小型でラスティン先輩と組み上げた物で、従来と同等品です」

「釜はみんなで協力して作った耐火レンガを組み上げたものだから、

 それぞれが作業に携わっていた。

 外観上は大きな問題は無かったな」

「設備はそうです。教授。

 内部には陶器製の小型るつぼがありまして

 内部には鉄鉱石と石炭コークス、石灰石が入っています。

 それは試験計画書通りです」

「確かに、試験前に計画書を読ませてもらった。

 記録は残っている。

 1回目の試験であるから、成功するとは限らないのは理解出来る」

「試験は朝5時にラスティン先輩と点火して釜の内部に入れました。

 それからおおよそ5時間加熱していた所です」

「内部の温度は高温になっているはず、という訳だな」

「ハイ、想定通りであればですが」


発生状況と教授からの質問事項に答えるエリオス君。

確定している状況を時系列的に説明する。



「時系列の流れは分かった。

 次は発生状況を教えてくれ」

「冷やした後に釜の内部を見てみますと、

 陶器製のルツボが割れておりまして、

 内部にあった鉄鉱石、石炭コークス、石灰石が

 釜の内部に飛び散っておりました」

「ルツボが割れて、燃料が空気と反応して、

 発炎に至ったという事か?」

「推定される状況はその通りです」

「・・・うーん。良くない話だ。

 ありあわせの資材しかないからな」


エリオス君と教授が頭を抱える。

手抜きという訳ではないが、入手出来るものを

間に合わせで使ってしまったのだ。


「どういう事だ?

 俺にも分かるように説明してくれ。坊主」

「承知しました。殿下。

 つまりですね、高温の釜で焼いてもらった陶器製とはいえ

 入手可能な食器をルツボとして使ったわけです。

 ツボ形状のを。それが割れたという話です」

「専用に作った訳ではなく

 ありあわせの一般品を使ったという事か」

「・・・恥ずかしながら」

「まあそれは良い。

 それの何が問題なのだ?」

「ルツボが膨張する内部の原料とガスの膨張に耐えられなかったという事が

 まず外観から分かります」

「つまり設計ミスか」

「仰る通りでございます。

 本質的には陶器製の容器は東洋の高級品しか無いので、

 容量が小さく使いづらかったので、

 良くある陶器のツボを高温で焼いてから使いました」

「陶器のルツボを作る技術が我が国に無かったという訳か」

「理由の一つはそうです」


トーマス殿下に説明する。

まだまだ対策会議は始まったばかりである。


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