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石炭コークス製造⑨  石炭コークスの技術試験炉

石炭のおおよその特性を掴み、蒸し焼きにしたコークスで

技術試験を行う。

簡単な陶器製のルツボに鉄鉱石と石炭コークスと石灰石を混ぜて

酸素を少しづつ加えながら燃やして溶かす。

古典的な酸化反応である。

難しくはない、そんな気持ちがあった。


「エリオスさん。

 ルツボで鉄鉱石を焼くんですね」

「そうです。ラスティン先輩。

 大きめのルツボに入れて焼くんです。

 できるだけ空気の量を調整して」

「難しいですね」

「高炉実機で事故したら大変な損害です。

 危険も含めテストします」

「だ、大丈夫ですかね・・・

 水準試験ですよね」

「・・・まあビビりすぎると試験も出来なくなってしまいます。

 ここは最大限に注意して」


心配な顔になるラスティン先輩とエリオス君。

燃やしすぎると当然爆発するし、

水準をしっかり振らないと試験にならないし。

安全は十分確保、レベルが分からん。

これが怖い所である。

どこまでブレーキを掛けたら良いかが分からない。


「交代で立ち会いしましょう。

 誰かが見張っていないと危険です」

「エリオスさん。

 そうですね。仮に事故が起きたらどうしましょう」

「消火は必要ですね。

 下手に水をかけると水蒸気爆発するかもしれません」

「怖いですね」


実は新しい実験に事故は結構ある。

十分注意して、とよく言うが未知の領域なのだ。

FMEAの概念が出るかなり昔の話である。

しかし、FMEAがちゃんと機能するかというとそれも難しい。


「とりあえず燃やしてみましょうか」

「そうですね。エリオスさん」

「水準試験なので、ちゃんとデータが取れる様に。

 イレギュラーも考慮して」


水準試験を開始する。

今回は石炭コークスを用いた銑鉄の製造試験である。

硫黄分と不純物がどれだけ銑鉄に含浸されるか。

銑鉄が木炭で焼いたものと比べてどれほどの性能が出るか。

それを明確にするのである。

耐火レンガで覆った窯にルツボと材料を入れて、

蒸し焼きにする。

酸素の供給も人力で送り込む。


「おお、やってるな。

 エリオス君。ラスティン君」

「あ、教授とトーマス殿下」

「俺も遊びに来たぜ、坊主」

「危険ですから近づかないでくださいね」

「・・・本物の殿下だ」



トーマス殿下にびっくりするラスティン先輩。

この道楽殿下はよく遊びに来るのだが気づかなかったのか。

まあこのトーマス殿下が遊びに来たという事はコークス試験の情報は漏れていると。

教授かな。まあスポンサー様だから仕方がないかもしれないが。


「今、窯の温度をあげている所なので」

「小さい窯だな、坊主。これで何を作るんだ」

「試験用ですよ。データを取るだけです。

 大規模な窯だと温度を上げるのも大変なんです」

「面白くないな」

「まあ、次にご期待でございます。殿下」


かなり時間が経った。

そろそろ温度が上がってくる頃だろうか。


「おい、何か変な臭いがしないか?」

「ああ石炭の硫黄の臭いですね。

 毒性があるので吸わないでください。

 離れて頂きたくお願いします。

 危険という程ではないんですが」


硫黄の臭いがするということは、

この石炭コークスが燃えだした証拠だが、

どうも硫黄成分が多い気がする。

この条件は駄目かな・・・

なんてエリオス君が途方にくれていると。


「エリオスさん。炎が出ています」

「・・・高温で熱が出ている影響ですかね」

「違います。燃えすぎていませんか?」

「炎が出ているという事は、

 酸化反応している証拠ですが、燃えすぎていますね」

「停止しましょうか」

「酸素の供給を抑えないと駄目ですね」


予想以上に炎が出ていて、あたふたするラスティン先輩と、

どうしたら良いか思考しているエリオス君。

こういう場合は、諦めて温度を下げるのだが、

燃料の石炭コークスはルツボの中である。

酸素供給を止めるしかない。


ボッ。


炎が空気孔から吹き出してきた。

ああこれは危険である。

試験を中止するしかないだろう。


「試験中止です。一斉に避難してください」

「エリオスさんも」

「僕は窯を見ています。

 ラスティン先輩も避難してください」

「えっ。エリオスさん?」


皆さんを避難させてから消火活動に入る。

まず空気孔を塞ぐ。

それから・・・逃げるぞ。

すばやく。

これはひょっとすると。


ぼーーーん。


あ、爆発した。

これは対策会議ものだな。

次回に続く。

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