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石炭コークス製造⑥  石炭とコークスのかさ密度測定

石炭でかさ密度測定用のテストピースを作ってみる。

かさ密度は正確な寸法や基準となる正対称的な形状が

重要なので角棒か丸棒がよく使われる。

地味に手作業で削るのである。


「これ削るの大変ですね?エリオスさん」

「結構硬いですからね。

 最初は練習も兼ねてゆっくりやりましょう」

「全然削れないですよ」

「・・・力を入れすぎたら割れますから注意してください。

 ラスティン先輩」


論文を読むと石炭の硬さはショア硬さ50〜80前後らしく、

ビッカース硬さ360以上である。

SUS304などの汎用ステンレスより固く、

ハイス鋼や石英や超合金よりかは柔らかい。モース硬度3、4、5、6の間である。

切削加工3倍法則から考えると、超合金とダイヤモンド以外の切削加工は困難。

非常に高価であるが天然では水晶、いわゆる石英を使い

宝石屋で削り粉を砥石として入手するしかない。

自前の鉱山で取れればありがたい事この上ないのであるが。


石炭の難点としては積層型の方向性があり、

平たく言うとある一方向だけ強度が弱く割れる。

硬いくせに割れやすいという特徴で

測定用テストピースを削るのに難しいという曰く付きである。

だから論文を読んでもあまり良いものは少ない。


石炭自体は安いので適当にハンマーで割って、

削ったり磨いたりするのである。

これは難しい、というか人の手でやる作業ではない。

まあ鋼鉄も削りにくいという事は同じなので、

どうせ近い将来にも同じ課題に当たる。

現代ならより硬いアルミナや炭化ケイ素、工業用ダイヤモンドが容易に入手できるので

切削工具は普通に削れるので心配はいらない。


ということで作業効率を無視して

一生懸命割って磨いて削るのである。

石炭は安価に大量にあるので失敗しても気にしない。


なお現代では石炭のかさ密度はガンマ線透過方式などを使用するので

わざわざ古典的な方法で測定しないはずである。多分。


「試しに旋盤を使って削ってみよう。

 鍛冶屋さんで作ってもらった鋼鉄の刃が欠けるからゆっくり、ゆっくり・・・」


バキ


「あ、割れた。やり直し」

「なかなか難しいですね」

「注意すれば削れるはずです。

 ゆっくりゆっくりと」


本来ならこんな事はしないであろう。

なぜなら代替え指標として硬さを測定するほうが遥かに楽であるから。

ただし、モース硬度の弱点としてサンプルの硬さの水準が細かくない。

微小な硬さの違いを検出出来ないのである。

ビッカース硬さやハードグローブ指数の方がどう見ても測定しやすい。

測定技術の向上は長きに渡る大きな課題である。


「かさ密度を測ってみましょう。

 まずは縦、横、高さをノギスで測定し、天秤で重さを測ります」

「ふむふむ」

「次に重さを体積で割って算出します」

「計算は難しくないですね。

 おおよそ0.9です」

「石炭のかさ密度は0.8〜1.0前後ですかね。

 イメージはこんな感じです」


最初はやっとの事でかさ密度を計算する。

これを量産でやるのは大変な話である。

刃物として使用できる超硬の材料と工具が必要である。

代替え指標としての硬さ測定技術も忘れてはいけない。

重工業の歴史とは材料開発の歴史と一応言えなくもない。


「でもこれ量産では出来ないですよね?

 なんでこんなに手間をかけるのですか?

 エリオスさん」

「・・・ちょっと工具が柔らかすぎますね。

 ダイヤモンドが欲しいです」

「それ完璧に宝石ですからね。

 高価すぎて研究費では買えないですって。

 そんな事より何故測定するのですか?」

「ええと、石炭のブレンド比率を調べるためです」


天然ものの石炭はバラツキが激しいので

適度な比率で混ぜて熱量や機械強度などを巨視的に調整する。

発熱と反応性、それから爆発対策としての安全。

それを制御するのが目的である。

手抜きをすると燃えないか爆発する。

均一性が第一の課題である。

それを決めるのが石炭の物性である。

ちなみに実際高炉に投入するのは石炭をさらに蒸し焼きした

石炭コークスである。これを測定するのも原理は同一であるが、

酸化して体積が飛んでいってしまうので、これまた大変なのであった。

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