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正月を実家にて①

正月近くになるので一旦、実家のキルテル村に帰る。

久しぶりである。

お父様とお母様は元気であろうか。


「お父様。戻りました」

「おお、エリオスか。

 よく無事に帰ってきたな」

「お母さんも心配していたのよ。

 戦場に行ったりあちこちに行ったりで。

 良い噂も悪い噂も絶えないわ」

「・・・誰ですか?

 僕の個人情報を流しているのは」


実家に帰ってお父様とお母様に挨拶をするエリオス君。

どうやらニーナさんか誰かの手紙で、

情報は伝わっていた様子である。

・・・変な情報が伝わっていない事を祈る。


「お母様もだいぶお腹が大きくなりましたね」

「うふふ。もうだいぶ大きくなってきたわね。

 男の子かしら?女の子かしら?」

「お父さんは男の子が欲しいぞ。

 エリオスは賢すぎて親離れが早すぎて

 寂しいばかりだ。

 もうちょっと親に甘える可愛らしい子を頼むよ」

「アラアラ。

 エリオスちゃんは十分可愛らしいですわよ。

 でも私は次は女の子が欲しいわね。

「ムムム。バカップル夫婦め・・・」


お母様がお腹をさする。

子供が大きくなっている証拠である。

もう少ししたら生まれるであろうか。

弟か妹が出来るのは楽しみである。


「それはそうと仕事は順調ですか?」

「うむ。無事順調である。

 繊維だけじゃなくて、紙もなんだっけ?

 新聞とかに使ってもらえるようになって。

 お前のお陰だ」

「人手は足りてますか?」

「人集めは難題だが、手が空いた農家の方々や

 伯爵様の斡旋で少しづつ村の人口も増えている。

 今後の事業拡大の壁になるだろうから、別の村や街に工場を

 作る事も考える必要があるかもな」

「人の移動の自由は伯爵様にご提案中です。

 せめて伯爵領の中だけでも何とかします」

「それはありがたいな。

 お前はいつも最後には我が家も考えてくれるな。

 本当に頼もしい」


色々とお父様と会話する。

仕事自体には大きな支障は出ていないが、

拡大路線には問題だろう。

ここでの生産があってのものである。

生産はいずれ、国家の要求と海外の要求を満たせるまで

拡大し続ける必要があるのだ。

そしてエリオス君にはその経験とノウハウが前世で十分ある。

無いのは時間とお金と人手だけである。


「お母さんはね、もっとエリオスちゃんに甘えて欲しいわ。

 親としても寂しいのよ。

 たまにはゆっくりしていってね。」

「それなら、甘い物を持ってきました。

 王都のお菓子です。

 後は手製の砂糖を用意しましたので、食べましょう。

 甘くて美味しいですよ」

「それは嬉しいわね。

 でもそんな高価なものを」

「自家製の国産品です。

 少なくとも世の中に出回っているものよりは遥かに安いです。

 皆で食べましょう」

「あら美味しいわ。

 この甘さは虜になりそう」

「そのうち村にも糖蜜から砂糖まで出荷します。

 ビスケットを作りましょう。

 調味料としても美味しいです。

 皆で工夫して食べましょう」

「ありがたいわね。

 でもいつも食べていたらお金が足りなくなるわ。

 贅沢品だわ」

「なら、いつか砂糖工場を作りましょう。

 まずは王都での試験が先ですが、段階的に。

 あとはこの原料となるビートも栽培しましょう。

 皆さんに手伝って欲しいです」

「ビートの栽培なら手伝えるな。

 農家の皆さんにも相談してみよう。

 この村で栽培したビートから砂糖が抽出できるようになると、

 この村の農家の収入が上がるだろう」

「宜しくお願いいたします」


と言ってお土産の砂糖を家族に振る舞う。

今頃、ニーナさんもチェリーちゃんもミネアちゃんも

実家でお土産を振る舞っているだろうか。

砂糖の甘さはこの時代では麻薬と同じである。

甘い物が庶民まで普及するのはもう少し先の話である。


「繊維はどうですか?順調ですか?」

「今の所は順調だが、綿花の入手が困難だ。

 後は輸入品が入ってきているらしいので競合になるだろう。

 機械化を進めて対抗していくしかない」

「靴下も少しづつですが、売れ始めていますが・・・」

「焦って商売する必要もないだろう。

 売る為のお客様も簡単に増えたりはしない。

 それより他の衣類の製造方法も考えた方が良いかもしれないな」

「設備次第ですか・・・」


材料となる糸や布は売れるが、靴下などの最終製品は

まだまだ時間がかかる。

認知されるまで難しいのだ。

またシャツなどは手縫いで縫い合わせていくのだが、

ミシンの様な機械が無かったので人海戦術である。

ミシンが登場するのはもう少し後の話になる。


「たまにはゆっくりしていったら?エリオスちゃん」

「設備をチェックしたら、戻ります。

 色々と問題が出てきそうです」

「寂しいわね。

 また帰ってきてね」

「ハイ、お母様」



実家のキルテル村も拡大路線に翳りが出はじめている。

労働力不足だろうか。資源不足だろうか。

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