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降誕祭と伯爵家パーティー

大学祭も一応区切りがついて、日常の生活に戻る。

という事で今日は12/25の降誕祭である。

現代では12/25は古代ローマの太陽神ミトラを祝う冬至の祭を流用した

イベントと言われているそうであるが、

実際のキリスト教は復活祭の方が重要であるらしい。



「寒いね」

「寒いわ、毎年この季節は」

「今日は伯爵様の館でお祝いするんですよ」


現在は王都ではなく、伯爵領首都アントウェルペンの館に集まっている。

伯爵家の一同でお祝いするイベントである。

実の所、他の貴族の方々からも沢山お誘いがあったのであるが辞退した。

居心地悪いもん。

アナトハイム伯爵領民である事を理由にして。

エリカお嬢様とトーマス殿下からは勧誘がしつこかったが、

流石に最後は諦めた様子である。


「街には屋台が出ていてお祭り騒ぎね」

「降誕祭マーケットはこの国の伝統的イベントだから」

「チェリーはこんな大きなイベント初めてみたよ」

「まあキルテル村ではやらないからね」


ニーナさんとチェリーちゃんとミネアちゃんとの4人で呟く。

こちらの伯爵家の館は初めてである。

いつも王都で伯爵様に謁見していたのが習慣になっていたからだ。


「去年は伯爵様の館でお祝いするなんて、

 恐れ多くて考えたことも無かったわ」

「キルテル村の村民は皆そうだよ。

 今年が異常なんだってば」

「エリオス君効果よね・・・恐ろしいわ」

「ニーナさんも大活躍ですよ」

「何を言っているんだか、エリオス君は。

 アタシなんて貴方の友人その1じゃないの」

「ええ、学園では有名な天才魔法美少女が

 大活躍した噂はかなり広まりましたね」

「ぐ。

 その話は恥ずかしいからしないで」

「ニーナさんは、公爵家のパーティの方に参加しても良いですよ」

「絶対に嫌よ。あんな場違いでギスギスした所。

 もう関わりたくないわ」

「まあ、今年1年間は激動の1年でしたね。

 忙しかった」

「それには同意だわ」


忙しかった1年を振り返り、しみじみと呟く

ニーナさんとエリオス君。



「これはエリオス様、ニーナ様、チェリー様、ミネア様」

「お疲れ様です。デュランさん」

「伯爵様からお聞きしております。

 どうぞこちらへ」

「ありがとうございます」


執事のデュランさんに案内されて、館に入る。

比較的、良好な客室に案内される。

チェリーちゃんとミネアちゃんが驚く。


「凄い館だね・・・」

「王都の館より立派です」

「でも、王家や公爵家ほど贅沢していないわね」

「あれは権威を見せつける意味もあるから」

「伯爵様に挨拶へは行かないの?」

「今は来客で一杯だろう。

 後々でも良いさ。もし用事があれば執事のデュランさんから

 直々に呼び出しがあるだろう」

「・・・そうね。休憩させてもらうわ」


ニーナさんが呟く。

この手のイベントは数回経験しているものの落ち着かない。

幸い、伯爵家には軍部を中心に顔見知りが多いのでそこまで緊張はしない。

そろそろパーティが開催される時間なので

広間に一同が集まる。


 

「今年1年は卿らには世話になった。

 ご苦労だった。

 また来年も宜しく頼む。

 今日はゆっくり楽しんでくれ」


伯爵様から挨拶があった。

会場がひとしきり盛り上がる。

周りを見ると伯爵様、ご隠居様、

それから軍部の皆様も集まっている。

あそこにはレイモンド大佐とアーシャネット中佐。

そして筆頭魔法使いのアイヴィーリさん、コネット中佐。

他にも見たことのある顔ぶれである。


「にゃはは、エリ君も来たのね。

 今日はがっつり飲むにゃ」

「アイヴィーリさん。僕は未成年です。

 お酒は止めておきます」

「ふーんだ、つまんない。

 こんな時だけ子供のフリをしなくても良いのよ。にゃはは」

「・・・フリじゃないですけど」

「おう坊主。久しぶりだな。

 俺を覚えているか?」

「レイモンド大佐。お久しぶりです。

 お元気そうで何よりです」 

「アーシャネットちゃんはしっかり落とせたか?」

「・・・」


アイヴィーリさんとレイモンド大佐と歓談する。

レイモンド大佐の戯言はスルーして流す。

そしてアーシャネット中佐にガン飛ばされる。

怒らすと後が怖いのでそこには触れない事にする。


「レイモンド大佐はずっと国境守備ですか。

 中々こちらには来られないのですね」

「・・・隣国が怪しくてな。

 どうも南の異教徒と繋がっているらしい。

 今は内戦状態だから沈黙しているが、

 国境を開けたらガバッと侵略されかねない」

「それは危険ですね」

「例え南で戦争が起こっても国境守備隊を空には出来ん。

 折角の大戦に参戦できそうにない。

 残念であるが、俺の名前が歴史に残る機会はなさそうだ」

「レイモンド大佐なら大暴れしそうですからね。

 でも北方も宗教対立が加速すると戦争になりかねません」

「ガハハ。まあ、南は坊主に任せるわ。

 頼むぜ」


レイモンド大佐の話では国境線も相当危険な空気である。

旧教徒と新教徒の対立はどの国でも抱えているアキレス腱である。

唯一、魔王国だけが内戦を終了させて宗教和議が確立した。

しかし火種はこの国だけでなく隣国にもあるのである。

宗教を理由にした多国間戦争になるリスクはどこにでもあるのだ。


「卿らはここにいたか。

 今年はご苦労だった」

「これは伯爵様。

 ありがたきお言葉」

「楽にして良い。

 所で内政官殿には、我が家族を紹介しよう。

 自己紹介しなさい」


伯爵様とご家族の方々がやって来る。

ご家族の方々は王都に来られないので

今回初めてお会いする。

膝をついてご挨拶する。


「妻のヘレンです。噂はかねがねお聞きしております」

「長男のアーヴィンです。エリオス内政官殿。7歳です」

「あたしはセシリエット。5ちゃい。よろしくね」


「エリオス内政官でございます」

「ニーナと申します」

「チェリーです」

「ミネアでございます」


それぞれ自己紹介する。

こんなに小さいお子さんがいらっしゃったとは。

伯爵様はあまり身内の話をしないものな。


「おにーたん。わたし、よろしくね」

「ええ、宜しくお願い申し上げます。

 セシリエット様」 


セシリエットお嬢様に手を繋がれるエリオス君。

驚きつつも、頭を下げてご挨拶する。


「「「ム」」」

「・・・これは危険だな。娘は絶対にやらんぞ」

「伯爵様、怖いですって。

 そんな訳があるはずが無いじゃないですか。

 そんな怖い表情をしないで下さい」

「うふふ。

 セシリエットも懐いてますね。

 皆さん仲良しで」

「(子供にはなにか感じるものがあるのかもしれないな)」


やんわりとした奥様と対象的に険しい顔で伯爵様がこちらを見てくる。

あの、いつものポーカーフェイスはどこに行ったのですか?

素が出ていますよ。


「この子らももう直ぐ王都の付属学校に入れようと思っている。

 卿らも助けてやってほしい」

「承知しました」

「お任せを」


こうして伯爵家のパーティーが進んでいく。

日々の緊張の合間に降誕祭を祝う一同であった。

1年間ありがとうございました。

来年も宜しく。

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