表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/450

第1回帝国大学祭⑨ 軍事演習による模擬戦

理工学部は教授とエリノールお嬢様他に後をお任せし、

軍事学の方を見に行くエリオス君。

個別の裏方を放置しすぎるとまた怒られるかもしれない。


軍事パレードと剣術大会は既に終わっていた。

剣術大会の方は最後は予想通りちゃー様とロザリーナお嬢様の

一騎討ちになり、ちゃー様の勝利で終わった。

主催者側が優勝というのもアレかもしれないが、

伝説の英雄様はやはり強かったという結果。


「軍事学も順調に進んでいますね」

「エリオス君も順調そうだな」

「まあ理工学部はエリノールお嬢様もいますし、

 農学部はエリカお嬢様もいます。

 こちらはどうですか?教授」

「わたくしも居ましてよ?

 エリオス君」


教授に話かけると、協力しているマーシリエお嬢様に突っ込まれる。

順調そうで何よりである。


「汝は、何が「順調」であると言いたいのか?

 剣術大会で主催者側のミルチャー卿を出場させるのは問題ではないか?

 妾に優勝させたくないのであろう?」

「・・・強敵に勝ってこそ誇りある勝利でありましょう。

 弱者に勝っても名誉になりませぬぞ。

 英雄殿に勝って優勝するのが至高の名誉でございます。

 ロザリーナお嬢様」

「ぐぬぬ。

 こう言えば、ああ言う屁理屈を。

 次こそは必ず・・・」

「お嬢様も惜しかったです」

「エリオス殿はお嬢様の扱いが上手になりましたね・・・」



ロザリーナお嬢様が文句を言ってくる。

メイドさんと執事さんがフォローする。

軽くあしらって流す。

今回は国中の強者が集まっている訳ではないが、

ちゃー様の噂が広まると国中どころか

国外からも挑戦者が集まるかもしれない。



「おお、エリオス殿か。

 そちらは順調であろうな」

「ちゃー殿もお疲れ様でした」

「うむ。

 次は軍事演習である。

 部隊を左右に分けて模擬戦を行う。

 ・・・各位は予定通り集合せよ」


ちゃー様の指示に従い、部隊を二つに分けて

片側はちゃー様が指揮するマスケット兵と騎兵と砲兵、

もう片方はマーシリエお嬢様が指揮する

マスケット兵とパイク兵と重装騎兵を集める。

新式軍隊と旧式軍隊のデモンストレーションである。


マスケット銃は空砲であるが、火薬事故を防ぐ為に

紙薬莢に入れて使用する事にしてある。

紙薬莢は紙や皮脂に樹脂などを塗りつけて密封状態の包みに

すでに計量済みの火薬と弾丸を内蔵し同梱した。

計量し詰める手間と火薬が漏れる手間を減らした。

空砲の場合、火薬だけを詰めて紙で閉じる事でも漏れないようにしている。

紙薬莢は14世紀後半から存在していたらしい。


「大砲、放て」


ちゃー様が遠距離から大砲を放って先制攻撃する。

とマーシリエお嬢様側の兵隊が何人か倒れる。

勿論、空砲なので音と煙だけのフリだけである。

少しづつ兵士が削られる訳だが、全体に大きく影響している訳ではない。

しかし戦列を保ったまま走る事は普通出来ないので

ゆっくり歩いて近づいていく。


「重装槍騎兵隊、突撃」


しびれを切らしたマーシリエお嬢様側が重装槍騎兵隊に突撃を指示する。

流石にマスケット兵では重装槍騎兵の突撃は厳しい。

ここでちゃー様が裏技に入る。


「全員、銃剣を着剣して密集陣を組め。

 防御体制だ」

「・・・!」


ちゃー様がマスケット兵を陣を組み直して防御体制を組む。

防御時には横隊を密集させ、着剣して槍衾を組む。

後列には射撃準備をさせておく。

相当の訓練が必要である。


「馬が槍衾を恐れて、すり抜けていく・・・」

「フン、あちらはまだ訓練が全然足りないな。

 後で猛特訓だ。

 マスケット兵前列、撃てー」


前列からマスケットを撃つ事でバタバタ倒れる、様に今回はしてある。

そしてマスケット兵の後列が前に出て前列と入れ替わり、

再び射撃に入る。

実際には槍衾をどこまで受け止められるか、

騎兵突撃により突破されることも十分あるので猛特訓が必要である。

それだけ騎兵とマスケット兵の相性は良くない。

さらなる工夫が必要と見た。


マーシリエお嬢様のマスケット兵とパイク兵が横隊で到着すると、

双方が歩きながら距離を狭めつつ、射撃に入る。


「撃てー」

「撃てー」


火力ではパイク兵の代わりにマスケット兵で構成して

密集しているちゃー様の隊の方が上である。

オラニエ公マウリッツの軍事改革ではマスケット兵を10列にして、

撃ったら下がる方式のカウンターマーチを採用している。

何故なら、弾込めの時間を1〜2分とすると

10列隊形なら理論上交代しながら連続で撃ち続ける事が

可能である所から考えられているらしい。

しかし当時のマスケット兵の命中率が低いので

3列横隊で同時発射させたのがグスタフ2世アドルフの改革である。


そうこうしているうちにマーシリエお嬢様側のパイク兵が近づけず

陣形が崩れていく、様にしてあった。


「敵陣が崩れたぞ。

 騎兵隊。サーベルチャージで突撃!」

「ぐぬぬ」


こうしてちゃー様の新式軍隊の勝利となるのだが、今日は出来レースである。

観客者に新兵器の威力を見せつけるのが目的なのであるが・・・


「ちょっと危険だな。この戦い方は。

 騎兵の突撃の対処に失敗したら陣形が崩れて大敗である」

「・・・ちゃー殿もそう思いますか?」

「そうだ。エリオス殿。

 重装槍騎兵は危険だ。

 もっと防御を固めた陣形でないと防ぎぎれない」

「ならば方陣を組みましょう。

 方陣とはひし形四角形の陣を組む事で

 騎兵の突撃を斜めで受けると共に銃の射線を重ならないようにして

 全ての方角から防御すると共に銃撃出来る陣形です。

 マスケット兵と銃剣を最大限に活用します」

「ふむふむ」


方陣は主にナポレオン戦争の時にも防御体制として使われた。

横陣から防御の際にはひし形の方陣に組み直すのである。

それには猛訓練が必要であった。

将来的にはライフル構造の普及や後装式小銃、機関銃の登場で

射程距離と連発能力が上がる事で槍騎兵はその機能を失っていく。

しかしまた先の話である。

実に南北戦争の時代からであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ