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第1回帝国大学祭⑧ マクデブルクの半球公開実験再び

次はマクデブルクの半球の実験。

続いて実演による見世物である。

現代でも学生実験としてまだやられているイベント。

内部を真空状態にして固定した半球を馬で引っ張って

大気圧の力を実演するのである。


「馬で引っ張るだけだから実験としては簡単なんだけど。

 真空容器も残っているし」

「これは学生実験にも良いわね。

 真空状態の力を知るのにわかりやすい」

「・・・本来、こういう実験こそが教育たるものである」

「お父様。

 他の所は良いのですか?」

「教授。

 順調そうですね」


エリノールお嬢様と雑談していると、教授もやってきた。

ここには教授も見に来ている。

娘と一緒にいるエリオス君を監視しにきたとも

言えなくもないのだが、教授の本音はどこにあるのかは分からない。


「見学客が増えてきたな。

 理工学部のアピールの為にも、

 年に1回くらいはこういうイベントも良いかもしれん」

「まあエリオス君の発案らしいですけどね」

「中々手厳しいな。エリノール。

 もうちょっと父親を労っても良くないか?」

「うふふ、お父様がエリオス君離れしたら考えますわよ」


教授とエリノールお嬢様の親子が

毒づきながら雑談する。

この二人は関係は良好で、エリオス君の視点から見て

エリノールお嬢様がそんなに毒舌をつく事は珍しいと思った。

何か気に入らない事でもあったのだろうか?


「何か気になる事でもありましたか?

 エリノールお嬢様」

「折角例の幼馴染達が忙しい時にお父様が邪魔しに

 ・・・ごほんごほん。ではなくエリオス君のアシスタントしている時に」

「娘よ。本音が一部出ておるぞ」

「ぐぬぬ。確信犯か」


この親子の関係もちょっと複雑である。

当のエリオス君は気づかないふりをしているが、

そのうち見物客が増えてきた。


「じゃあ馬で半球を引っ張って下さい。

 行きますよ」


アシスタントさんにお願いして半球を馬で引っ張ってもらう。

ある程度の力になった段階でようやく半球が外れる。

見物客から


「この様にして、大気の力が分かるんです。

 半球の内部の空気を抜くと外から空気の力で半球が外れなくなります。

 外部から力で抑えられます。

 左右各8頭の馬が双方から引っ張ってようやく半球が剥がれます」

 

教授が嬉しそうに解説する。

大気圧を利用した真空状態が力を生むという現象はその後の蒸気機関に応用される。

広場で拍手喝采である。

ジト目で見るエリオス君とエリノールお嬢様を横目に

大変嬉しそうな教授が今日は輝いている。


「・・・物理学実験も良いですね。

 時々やりましょうか?教授」

「うむ。学生の教育の為にも良い。

 面白いネタがあったら宜しく頼む」

「ネタは教授が自分で考えて下さい。

 また娘さんに毒舌言われますよ」

「あの娘は普段は良い娘だから問題ない。

 今日はたまたまだ」

「いつか刺されますよ。教授」



満足気な教授にエリオス君が突っ込む。

実は二人は気付いてはいなかったが、

密かに他国の見物客と学生以外の貴族がしっかりと見学している。

この国の技術力を調査しにきたのだろうか?

理工学という大学の組織はまだ他国には存在していない。

そういう物珍しさもあるのだろうか?

それとも教授とエリオス君を観察しにきたのだろうか?


後はアシスタントさんにお願いして、一日に何回か実演する。

実は物販も順調である。特に銑鉄で作りためしておいた湯たんぽが。

こんな感じで理工学部の大学祭は続いていくのであった。

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