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第1回帝国大学祭① 事前打ち合わせ

設備投資と役割分担が終わったので

やっと高炉のテーマが動き出した。

そこまで行くのにどれだけ苦労した事であろうか。

本当に面倒である。


さて次は楽しいイベントになるかな?

例の大学祭である。

食糧問題の改善のメニューを普及させるため

リリアンヌ教授が言い出した事になっているのだが、

教授と学生を集めて討論会になった。

ロイスター帝国大学は法学、神学、医学、軍事学、理工学、農学の

6つの学術研究から成り立っている。

各教授毎に出し物があるだろうか?


「帝国大学祭は大学の実績をアピールすると共に

 優秀な学生を我が研究所に招く為の手段である」

「王侯貴族に学術の価値をアピールするのだ」

「神の教えを今ここで再び教授するのです」


それぞれの大学教授と学生が議論をする。

こうも意見が多数出るとは思ってもみなかった。

つまり、どこの研究所も日頃注目されていないので

スポンサーが見つからず困っていたのだろうか?


「・・・意外と意見が多いわね」

「リリアンヌ教授。

 言い出しのお人なのに意外そうだね」

「そりゃそうわよ。

 こんな一過性のイベントやっても

 普通3日後には普段どおりだわよ」

「あの、農学をアピールして食生活を改善し

 餓死者を防ぐメニューを広めるのが目的じゃなかったかね?」

「それはそうだけど、半分は小遣い稼ぎよ」

「・・・」


作物学のリリアンヌ教授と畜産学のセドリック教授が呟く。

どうやら本来の目的はさておき、

屋台を出して小遣い稼ぎをする様子である。

頭を抱えるセドリック教授。


「で、畜産も何か出し物するの?」

「そうだね。豚を残さず大切に調理する為に

 ブラッドソーセージを・・・」

「このゲテモノ料理好きに聞いたアタシが馬鹿だったわ。

 絶対に止めなさい。

 貴族の子弟にそんなもの出すんじゃないわよ」


リリアンヌ教授がセドリック教授の提案に

頭を抱えて悩む。

余計引くじゃないのよ、と。

アピールどころかマイナスじゃないの。


「法学部は国際法の教育と討論会を行う」

「神学部は司教様をお呼びして神の教えを教授するわ」

「医学部は特別に教授自ら診察を行う」


それぞれの教授が出し物を報告する。

まあ、いつもの講義をよりオープンにした感じであろうか。

正直、面白みは感じないだろうと思うリリアンヌ教授。

大学のイベントをそう思う時点で実はエリオス君に

多大に影響を受けているのだが気付いていない。


「・・・お堅いわね。

 もっと楽しくいかないと、誰も集まらないわ」

「そうかもね。

 人集めも苦労するだろう」

「主目的はね。美味しいものを食べて

 興味を持ってもらって普及させるのよ」

「まあ食でアピール出来るのが僕らの長所かもしれないが」


と裏でリリアンヌ教授が毒づく。

現代では大学祭は学生のお祭りだが、

まだこの国ではそういうイベントは存在しない。

だから出てくる意見が講義の延長上になってしまうのは無理もない。


「農学部は何をだすのかね?」

「アタシの所は美味しい料理よ。

 国産砂糖と美味しい救荒食物を食べてもらって

 餓死者が出ないようにこの国の人達に食生活のアピールするのよ」

「それは、飢えていない大学の学生や貴族が理解出来るのか?

 まあ農学部がやりたい事には我々は干渉しない」

「大丈夫よ。

 エリオス君が言い出したのだから。

 きっと成功するわ」 

「・・・あの天才少年か」


と説明するリリアンヌ教授。

自信満々という訳では無いが、勝算はあるのであろう。

実はエリオス君の意見を鵜呑みにしているかもしれない。


「軍事学と理工学はどうするのだ?」

「軍事学は軍事パレードと新兵器のアピール。

 それから剣術大会でも開こうかと」

「また斬新ですな。

 決闘は一応禁止されています。

 死傷者が出ない様に頼みますよ」


「理工学は新しい産業のアピールと製鉄業、

 それから作った物を販売する」

「商売が目的の場所ではありませんよ?」

「陛下に提案したものを大学でアピールするのも良いだろう」

「・・・理工学は羨ましいですな。

 パトロンが既にいて」


それぞれの教授が報告する。

もちろんこの二つはエリオス君に色々と吹き込まれている。

実利を兼ねたイベントにするつもりだろう。

遅れてエリオス君がやってくる。


「リリアンヌ教授、お呼びですか?」

「遅いわよエリオス君。

 もう議論は始まっているわよ。

 座りなさい。貴方も発起人の一人だわ」

「申し訳ありません」


と言ってエリオス君とニーナさんがこっそり会議に加わる。

すると教授達の目線が変わる。


「・・・アレが有名な天才少年か」

「伯爵家と陛下と殿下のお気に入りらしい」

「彼が今回の首謀者と聞いている」

「一体何を企んでいるのやら」


何やら注目を浴びてしまうエリオス君。

確かに言い出したのは彼だが、

乗っかかって利用しようとしているのは周囲の人達である。


「まあ学生も楽しく参加できてアピール出来るイベントにしましょう。

 出店や音楽、催し物やイベントなども。

 割り切ってとっつきやすいイベントにするのが勝ちです」

「ふーむ。権威ある大学がそんな軽薄でよいのか?

 学術の最高権威であるぞ」

「参加者が必ずしも高度な知識を持っているとも限りません。

 教授たちと同じレベルで討論出来る理由は無いのです。

 なんなら学生をリーダーにしてカモフラージュしても構いません。

 とにかく参加者や貴族などに強い印象を残せれば勝ちです」

「君は軽薄だな。最高権威としては軽く見られるのではないか?

 まあ趣旨は理解した。

 我々は我々で行おう」

「ご理解頂けて感謝致します」


皮肉をサラッと流して言うエリオス君。

高度な学問をいくらアピールしても貴族には理解できないだろう。

であれば、この時代の貴族や学生に合わして

大学祭を行うのが賢い。

現代の大学祭を知っているエリオス君から考えたら

とりあえずインパクトだけ残せればあとは良いやと思ってしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな場面でも臆する事なくリリ姉ちゃん呼びするのがエリオスじゃないのか。
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