小さな店員さん チェリーちゃんとミネアちゃん王都に来たる
伯爵様の命令が一段落すると、
あるイベントが待ち構えていた。
そう、ニーナさんが伯爵様にお願いしたアレである。
「やっほー。エリたん久しぶり。
会いたかったよ〜
がばっ」
「やあ、エリオス。
元気そうで何よりだ」
「チェリーにミネア。
王都までようこそ」
「・・・良く来たわね。歓迎するわ」
そう、店員として幼馴染のチェリーちゃんとミネアちゃんを
ニーナさんが伯爵様にお願いしてキルテル村から呼んだのだ。
心強い味方である。
「ここが花の都。ロイスター王都ね。
大都会だわ」
「・・・アタシもここに最初に来た時はそんな感じだったわよね」
「流石に伯爵様のお呼びだと、お母さんも駄目とは言わなかったね」
「当面は連絡があったと思いますが店員として働いてもらいます。
後で友達を皆さんにご紹介致しますね」
そういうと店に案内する。
とりあえず2階を使ってもらおう。
「ここが新しく作った店舗。
ロイスター王都店。
キルテル村の商品を販売する予定です」
「ふーん。
キルテル村で作った糸や繊維を販売するのね。
でもエリたん、なんで?」
「直販店を使って安く大量に販売する。
そうしてブランドを作ることで独占的な地位を目指します。
いくら大量生産出来ても買ってくれる人がいなければ
商売になりませんからね」
「良く分からないけどウチで作った物が
まず売れれば良いや、なんて」
「チェリーはもうちょっと考えようね」
「ふーんだ。ニーナちゃんは。
ちょっとエリたんと一緒にいたからって嬉しそうに。
これからはあたいがいるからちゃんと面倒みてあげる。
大丈夫だよ」
「・・・そういう意味じゃないわよ。全く」
うん。チェリーちゃんには色々と教えないとマズイな。
この子はもうちょっと勉強してもらわないと。
必要最低限の知識と学識はいるであろうな。
ニーナさんに先生を頼むか。
「僕は、伯爵家の付きの軍属として雇用して頂いた」
「ミネアは槍の武術が得意だったね。
でも冒険者だよね。軍人志望だったっけ?」
「軍人とまでは思っていなかったけど、
自分を磨くために。
セレナさんと相談して」
「あの冒険者のお姉さんね。
元気でやってるかな?」
ミネアちゃんは軍属に入って兵士扱いで鍛えるつもりらしい。
生活はそちらの方が安定しているかもしれないけど
将来戦争に巻き込まれそうである。
しかしそれはエリオス君も変わらなかったりする。
「実家の家業は大丈夫?」
「それは兄弟達にまかせてあるから大丈夫。
心配はいらないよ」
「チェリーも妹に託してきたから大丈夫なのだ」
当時の農家は貧しかったから、稼業を手伝うのが普通だった。
立派な労働力である。
まだ居住の自由は多分無かったであろう。
居住の自由は古代ローマにはあったが、
イギリスは1215年のマグナカルタ、神聖ローマ帝国はジョセフ2世の1781年から。
国によって大きな差があった。
「アラ、可愛いお嬢さん」
「この子達が例の店員です。
そしてこの人が副店長のアマースト男爵家のエリノールお嬢様。
確かこの前キルテル村まで来たから
顔は見たことあるよね」
「・・・うーん。
確かあの時のお姉さん?」
「まあ宜しくね」
「・・・チェリーはエリノールお嬢様を
敵とは認識していなかったわけね」
人の識別が敵か味方ですか。
チェリーちゃんはエリノールお嬢様をあまり覚えて無さそうである。
「エリオス様〜。お菓子食べましょう」
「エリオス様。先に来ていたのですね」
「あ、エルフの双子ちゃん」
「あら可愛いお嬢ちゃん」
ティアナさんとシルヴィ君がやって来る。
そしてこの二人は年上だ。エルフ年齢だとおもうぞ、多分。
「ほほう。お主ら懐かしいの。妾を覚えているか?」
「ム。エリたんの敵だ」
「出たわね。アルビノ貴族。
この貴族娘は敵よ。チェリーとミネア。覚えておいて」
「このお姉さん強い。危険」
「その、な。もうちょっと妾に敬意を払う様に。
そして妾は敵ではない。うむ。
おいエリオス。言ってやってくれ」
「・・・。ロザリーナお嬢様は敵ではありません」
女性陣にすっかり悪者イメージが付きつつある
ロザリーナお嬢様である。
決して悪い人ではない。
根がちょっと世間ズレ激しいだけである。多分。
「・・・まあ顔見知りも何人かいるはずだし
やっていけそうだね。
一先ず良かった」
「一番重要なのはあたいがエリたんの許嫁ってことよね」
「それは違うぞチェリー」
「この娘は本当にブレないな」
一波乱ありそうではあるが、ちゃんとやっていけそうである。
この複雑な人間関係とお仕事を宜しく。
という事で心強い応援が王都店に来たと。