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王都でのお散歩と物流問題

たまには王都で散歩する。

中央通りから問屋街に出ると、運河沿いの倉庫から

魔王国からの輸入品を積み上げているのが見える様になった。

伯爵領を通じて魔王国の商品が輸入され始めている。

近世の輸入品というと、

大砲、小銃などの軍需品から毛織物、砂糖、製鉄製品、

茶、コーヒー、タバコ、食料品などである。

原材料は遠方貿易で入手する物もあり国産で対抗するにはまだ難しい。


関税のお陰で毛糸などの材料はまだ勝負出来る。

しかし綿織物は海上貿易で綿花が入手出来る魔王国の方が上である。

綿花は温暖湿潤の気候でないと生産出来ないので、

中世ならインドや中国が主な生産地であった。

南の領土を異教徒から奪い返したら大生産するんだ。

我が国が大国として復活するには、やはり南の温暖湿潤の

領土が必要である。


「こうやって、魔王国から新しい商品が入荷してくると

 文明国との差を感じるわね」

「精製された砂糖を一つ取ってみても、

 技術格差は感じます。値段は非常に高いですけど。

 まあ追いついて追い越しますけどね」


いかに魔法の力があっても工業力として発明の概念には勝てない。

そしてそれは1市民が生産できねば商品にならない。

中途半端な魔法はいずれ産業革命に駆逐されるであろう。


「そういう大言壮語を吐くのはお主だけじゃ。

 妾の魔王国の国力にもう少し恐れても良いぞ」

「・・・出たわね。

 こういう楽しい一時を邪魔して。 

 お菓子ばかり食べていると太るわよ」

「ニーナ。お主はいつも妾に文句を言わないと気がすまないのか?

 まったく失礼な娘じゃ。

 妾は散歩に来ているだけじゃ」

「ここの公園と噴水は良いスポットなのよ。

 今日はエリオス君とデート。

 だから邪魔しないで?」

「・・・ほほう。デートと申したか。ニーナ。

 それは黙ってはおけぬな。

 あちらでこっそり尾行している連中にも

 是非教えねばならぬな」

「・・・尾行?」


そう振り返ると、多数の友人達が

もちろんバレバレですけどね。

気付いていたけど、無視していた。

ロザリーナお嬢様はアホらしくなって出てきたんだろう。多分。


「アンタら。何故尾行しているの?」

「・・・ニーナ様だけずるいですぅ。

 ね?エリオス様。私とデートしましょう。

 今日は良い天気です」

「アラ、ニーナちゃん。

 抜け駆けは駄目ですよ。

 お姉さんも散歩したいんですからね?えへへ」

「にゃはは。いつもエリオス君は人気者ですにゃ」


何故かエルフのティアナさんとエリノールお嬢様と

筆頭魔法使いのアイヴィーリさん。

不思議な組み合わせである。


「何故アイヴィーリさんまで」

「最近暇なんじゃにゃ。

 魔法もそれほど進化するわけじゃないし。

 戦争準備するにしても魔法使いは簡単に増えないのにゃ」

「・・・それはそうですね。

 じゃあ、化学工業でもそのうちやりましょう。

 魔法研究科で。

 優秀な学生さんを集めておいて下さい」

「学生は任せるにゃ。

 でも何をするんだにゃ」

「ガラスの製造から酸、アルカリの研究ですかね。

 活性炭の製造が出来ればベストなんですが」

「良く分からない言葉だにゃ。

 まあ面白そうだから、声を掛けて欲しい」


アイヴィーリさんと空約束してしまうエリオス君。

これ以上仕事を増やしても辛い所ではあるが、

徐々に研究室も組織化して渡していかなければならない。

そういう過渡期にあるのであろうか。


「ほら、お菓子食べに行くわよ。

 いつものパン屋さんで買ってから

 砂糖で味付けしましょう」

「味付けの研究は大切ですね」

「ニーナ様。私にも私にも」

「ハイハイ。

 じゃあ一緒に行きましょう」


ニーナさんが率先してパン屋さんに向かう。

庶民にはカール・マルレッティで高価なお菓子を

買うお金がないので硬いライ麦パンを工夫して味付けするのである。

この国では寒い土地でも取れる第二の麦であるライ麦が庶民の食べ物。

幸い、砂糖の試作品があるから調味料は工夫できる。

ちょっと甘い味も贅沢できる様になってきている。


「試作品の砂糖も甘くて美味しいわね。

 調味料としても本当にありがたいわ。

 量産出来れば庶民の口にも入るようになるのね?」

「我らが〜、食生活は〜

 楽しく、美味しく、工夫して食べよう〜

 庶民も、ライ麦パンとソーセージをお腹いっぱい食べたい」

「・・・貧乏国は辛いのぉ。

 妾の国では農業政策で小麦が取れるから

 ライ麦を食べる文化は減りつつある」

「仕方がありません。

 寒い気候では十分に農業生産出来ません。

 しかしこの国は穀物が必要なのです。

 麦粉粥のオートミールが主食です。

 それが南の異民族にこれ以上譲歩出来ない理由でもあるんです」

「食糧問題か。

 食糧はいつになっても大きな問題じゃ」

「じゃがいもで庶民が食べられるカロリーを補うしかありません。

 戦争が起こったらどうせ食糧飢饉になるから、

 嫌でもじゃがいもを死ぬ気で食べるしかありません。

 来年が勝負でしょうね」

「妾の国もじゃがいもが必要になるかの。

 飢饉や戦争時に飢えるよりかはマシか。

 妾の国にもじゃがいもを入れるか?」

「そのうちそうして下さい」


悩める食糧問題はまだ解決していない。

まだ十分甘いとは言えない国産のビート砂糖であるが、

それでもつけて食べられるのは庶民にとって幸せでもあった。

量産まで頑張らないと、と思うエリオス君。

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[気になる点] ジャガイモは炭水化物では?
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