王都にて。アナトハイム伯爵様とご面会
道中に色々とあったが、やっと王都ロイスターに到着した。
城壁に囲まれているが、市街地は城壁の外の郊外まで進出している。
本来の設計より王都が大きくなりすぎたのだろうか。
敵が侵攻してきたら、無理やりでも城壁の内部に逃げ込むしかなさそうな構造。
近世とは思えないほどの大きな都市であった。
ローマといい、パリといい、ロンドンといい、ベルリンといい
河川に沿って作られた典型的な大都市に見えた。
多分貿易の物流を河川で運搬していたので
交通の要所として人が集まって作られた、なんてエリオス君は思った。
日本は大雨洪水が多かったらしいから、河川から離れている都市も多いが。
城門から中に入る際に、捕まえた盗賊を兵士に引き渡す。
一応恩賞金が出るそうである。
村長さんから一言。
「まずは宿に行こう。
そこで一端荷物を置いて、領主様にご挨拶に向かう。
特にエリオス君とニーナちゃん。
領主様に失礼の無い様にな」
という事で、宿に向かってから
領主様の屋敷に向かう一同。
村長さんから事前にアポは取ってある様子。
「ようこそいらっしゃいました。
当家の執事のデュランでございます。
中までどうぞお入り下さい」
50歳位の執事さんが入り口でお出迎え。
我々の身分はただの村民だが、一応招かれた客という扱いであった。
何しに来たと言われなくて良かった。ひとまず。
館の中に通される。
「(領主様がいらっしゃったらワシと同じ様に膝を落として会釈するんだぞ)」
「(はい、承知しました)」
村長さんとひそひそ声で会話するエリオス君。
そうして少し待っていると、
向かいから30歳弱位の青年と50歳強の威厳のある方がやってきた。
領主様親子だろうか。まだ若い。
執事さんから、
「こちらがアナトハイム伯爵様と、
ご隠居様であります」
「余がアナトハイム伯爵、ヘンリー・ド・ハワードである」
「隠居のジョージ・ド・ハワードじゃ」
村長さんに合わせて膝を屈めて深々と頭を下げて会釈する。
この時代の礼儀には詳しくないエリオス君。
緊張しながら伯爵様に頭を下げる。
「これは伯爵様。ご隠居様。
キルテル村の村長です。
こちらは此度の留学生のエリオスとニーナです」
「苦しゅうない。面を上げよ」
「ははっ」
眼の前にはいかにも面倒臭そうな表情をしている若い伯爵様と
目を輝かせてこちらをじっくり観察するご隠居様の姿を確認した。
非常に対象的な第一印象を見た。
「此度はご多忙な中、伯爵様とご隠居様に
ご謁見させて頂き誠にありがとうございます」
「良い。領民の為に我が伯爵家があるのだ。
余も父上より伯爵家を継いだばかりであり。
村長共々宜しく頼む」
「ははっ。ありがたきお言葉」
伯爵様と村長さんが形通りに言葉を交わす。
特に興味のなさそうな声で受け答えするのが丸わかりである。
普通にど田舎の平民が来たら、貴族の対応はそうなるのであろうか。
それともまだマシな方なのであろうかと表情を探るエリオス君。
「これが、あのキルテル村の秀才か。
あのやり手のボッシュの息子とな。
なかなか聡明そうな良い目をしておるな。
ふふふ。この子が例の・・・とは。
面白くなってきたのう」
ご隠居様が僕を見ながら小さく呟く。
その一言に驚くエリオス君。
元とは言え伯爵様がお父様の事まで知っているとは、と。
例の?まさかね。
「くれぐれも、我が伯爵家の名を穢す様な真似はしてくれるなよ。
後はデュラン、宜しく頼む」
「ははっ。伯爵様。承りました」
伯爵様はそう執事さんに言うと部屋から出ていった。
その場に残ったご隠居様が言う。
「息子はまだ伯爵家の重荷に耐えかねているのだ。
そなたらも是非支えてやってほしい。
あと、エリオスとやら。
我が伯爵家は貴公らを支援するつもりである。
我が領民の為に尽くしてほしい。
息子はあの様な感じだが、また遊びにでも来るが良い」
「勿体無いお言葉を」
驚いた表情で村長さんが答える。
エリオスはご隠居様に対し、貴族が平民に対して取る態度とは全く思えなかった。
心の中に引っかかるものが残りながらも伯爵家を後にする。
そしてこの会合からが、エリオス君と伯爵家との縁の切れない
面倒事の始まりだったとはこの時は思いもよらなかった。
やっと王都に到着しました。
領主様に面会してご挨拶。
一見普通の対応に見えますが・・・
ちなみにイギリスの貴族は隠居という制度は無くて任期が死ぬまでだそうです。
史実からの設定を変更して、若い息子さんに貴族の任を担ってもらう事にしました。




