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ワラキアの英雄ミルチャー様 来訪

 学校の軍事訓練の合間にエリカお嬢様より連絡が来た。

南より貴族がエリオス君に尋ねてくるらしい。

エリオス君は首をかしげる。誰だろう、全然知らない、と。

そもそも貴族の知り合いなど学園内だけしかいないはずであった。



「たのもう」



 向こう側に人だかりが出来ている。

その中の人が来客の貴族の方であろうか。



「可愛い〜

 お人形さんみたい」

「キャー」

「お菓子食べる?」



 ちびっ子美少女が中央で、学生にもふもふされていた。

白髪で赤目でわずかに青白い肌をして八重歯が大きい。

見た目は非常に可愛いが表情がキリっとしすぎていて

抜き身の刃の様なヤバイオーラを出している気がする。



「ああ、うっとおしいぞ童どもが。

 年上を何だと思ってるのだ」

「えっ。年下じゃないの?」

「ちゃーに年下とは失礼であろう。

 この童どもが。

 エリオス卿はどこにいる?」



 と学生をかき分けてエリオス君のもとへやってきた。

どうやらお探しはエリオス君の様である。

嫌な予感しかしないが、お呼びならお会いするしかない。



「私がエリオスと申します」

「ちゃーはヴラド4世・ミルチャー・ヴァシリッサである。

 元ドラコ騎士団のヴァンパイアだ。

 200年前の戦争で南の異教徒共に領土を奪われて以来、

 奴らに雪辱を果たす機会を伺っておる。

 今回、南の異教徒との戦の噂を聞いて駆けつけてきた。

 お主らと共に是非復讐を果たさせてくれ」



 ちゃー、とは一人称だろうか?

また癖の強いお人がいらっしゃった。

周りがざわざわとさわぐ。

どうみてもマスコットらしき人が意外と有名人だったりして。



「ちなみに200年前というと、

 南イェルデューク戦争。

 まさか大戦争の生き残りの勇者様でございますか?」

「うむ。悔しい事に最後は負け戦だがな」



 驚いてニーナさんがエリオス君に呟く。

史実ではヴラド公と言えばルーマニアの伝説の英雄である。

オスマン帝国との戦いで焦土戦術を用い国力の差をかえりみず撃退した。

話を聞く限りではその伝説とイメージが重複する。

仮にもそんな重要人物が来るならちゃんと伝えておけよエリカお嬢様。

でも何かがおかしいと首をひねるエリオス君。



「戦ならグリーヴィス公爵様の所が一番では無いですか?」

「あの小僧は駄目じゃ。腰抜けじゃ。長年ビビってロクに戦おうとせぬ」

「・・・そうですか。

 (普通国力で負けてるこちらからは喧嘩を売らないだろう)」

「奴らは超大国だからな。

 故に我らだけでは勝つ戦略が出来ぬ。

 卿が奴らと戦って勝てる打算を付けてくれるなら、

 ちゃーと我ら配下は卿と国家に忠誠を誓おう」

「ちょ、ちょっと待って下さい。

 私はただの平民の学生です」



 ミルチャー卿の発言に驚くエリオス君。

いきなりこの人物がそんな事を言い出すとは驚きしかしない。

今日初めて会ったばかりである。



「そうであるな。

 だが先の帝国議会。見事王家とビビる公爵家を動かした。

 もう一つの超大国である魔王国と同盟を結び、

 短期間で国論を統一した。その手腕は実にやるではないか。

 ちゃーには長年出来なかった偉業でもある。

 戦うからには当然負けるつもりは無いのであろ」

「戦を回避する努力はしますが、

 負ければ国家存亡の危機。

 戦う前に勝つ打算は全て行いまする」

「その意気込みは良し。

 我が国には強大な敵に勝つための戦略論が足りん。

 祖先からの神聖なる領土を奪い返そうとしない腰抜け共である」

「・・・(流石に誰も超大国と好きで正面から喧嘩しないよ)」


 話を聞きながら頭が痛くなるエリオス君。

ミルチャー卿は相当の武闘派である事が分かる発言だが、

脳筋では無さそうなので一先ず安心する。

伯爵家には歴戦の武人がまだ少ない。

頼りにしても良いのであるか?



「エリオス様。

 ・・・この方は」

「まさか。

 いやこんな所でお会いするなんて」


 ティアナさんとシルヴィさんがやってきた。

このエルフの武闘派にしては珍しくちょっと引き気味でビビってる。

実は顔見知りであろうか?

この怪物達がそんなにビビる程の、強者だろうか?



「主らはエルフの娘。

 確かティアナだったか。そちらはシルヴィだな。

 ちゃーを覚えているか?」


「・・・。やはりあのヴァンパイアロード?」

「あの伝説の勇者様。まさか。

 ワラキアの英雄殿。

 母上様のお知り合いの?」


 ティアナさんとシルヴィ君がビビって後ろに隠れる。

この二人が逃げる相手って相当の危険人物では?

そんなにヤバイ人なの?



「主らは小さい頃に面倒をみてやっただろうが。

 全く恩知らず共だ」



 ややご不満顔であるがミルチャー卿は

懐かしい相手に笑顔で対応する。

エルフ族の知り合いって、人外魔境が多いのね。

伊達に長い寿命だけじゃなさそうである。



「ちゃーの様に南の異教徒と戦って名誉を取り戻したい輩は

 これから沢山集まってくるであろう。

 腰抜け貴族共と違い、アナトハイム伯爵とお主が

 南の異教徒と戦うと決めたと聞いておる。

 お主らがここから旗を揚げろ」

「まあ戦わずに勝てる状況を作るのが本来、先ですけどね。

 今回は国力差がありすぎて敵の戦意を挫く事は無理そうですが」



 と威勢の良い発言をしていたが、

途端にミルチャー卿の顔色が曇る。

何やら気付いたかの様に発言する



「じゃがの?ちゃーには今、王都での固定収入が無い。

 何か仕事を斡旋してはもらえぬか」

「・・・じゃあそのうち教官殿としてご紹介致します。

 当面は護衛などを兼ねてうちの会社で働いて下さい」

「王都に移住してきたばかりで仕方ないの。

 宜しく頼む」

 


 ああ、また濃いキャラの人が増えてしまった。

しかし勇者様だけあって腕は確かであろう。

将来、民兵の教官として将軍として心強い味方として

偉業を成し遂げる方であろうが

今はただの無職である。

仕方がないので、コスプレ店員候補生として頑張ってもらうのであった。

エリオス君は頭を抱えつつ、今後どうしようか悩むのであった。

ちゃー様登場!

実はかなり前に書いた小説ですが、

時期が早すぎたのでボツにしました。

ちょっとポンコツですが最強の武闘派、のはず?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前から気になるのは、舞台は帝国?王国? 王は出たけど帝は未だ話の端にも出てない。でも帝国議会。
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