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俺が作る新現代神話  作者: 自然溢れる茸丸
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第1章1話 早瀬悠寺の物語の始まり

よろしくお願いします。

「でさー、俺のアルバイト先の店長の口が臭くって。説教のときマジやばかったさ。」


「そんなに臭かったの?」


「あれは人間の出せる匂いじゃない。なんか、どっかの星のエイリアンだわ、あれ。」


俺の名前は早瀬悠寺。高校2年の青春真っ盛りの17歳男児だ。勉強の出来は中の上くらいで、ルックスはまあまあいい方だと思う。中学の時は若干太り気味だったが、高校デビューを果たすべく、運動しまくった。その結果、なんとかこうしてデビューを果たし、高校入学以来の大親友、青葉 浩介と笑いながら歩いている。



「ちなみにどんな匂い?」


「んーとね、納豆と、腐った卵と、ヒキガエルの内臓を長時間熟成させて、にんにくを大量に入れた感じの、匂い」


「そりゃ臭いわ」


俺は笑いながら答えた。


「あれは現代日本にいちゃいけない匂いだわ」


「そこまで言われたらどんな匂いか若干気になってきたんだけど。」


「やめとけ、死ぬぞ」


「どんだけ臭いんだよ。その店長。なんの店なのさ?お前のアルバイト先?」


「ん?普通のファミレス。」


「飲食店で、その匂いはあかんやろ」


「それな」


その時ふと、悲鳴が聞こえた気がした。

しかし、その悲鳴は青葉には聞こえていないようだったので、俺も空耳だと思い聞き流した。

だが、その悲鳴は前へ歩けば歩くほど大きくなってきた。


「なあ、なんか悲鳴みたいなの聞こえない?」


「え?………若干それっぽいの聞こえる気がするけど、前に工場あるからそれの音じゃない?」


言われてみたらそうかもしれない。俺はそう思った、

しかし、その工場に向かって、消防車が何台も向かって言った。よく見れば、そこから黒煙が立ち上っていた。そして、何かが壊れるような音と、悲鳴が聞こえてきた。


「おい、なんかやばくないか」


「大丈夫じゃない。ただのボヤ騒ぎだって。」


青葉が能天気に答えた。

そのときだった。凄まじい爆発音とともに、俺たちの100メートル位先の工場が、爆発した。工場からは黒煙が立ち上り、火が燃え盛っていた。工場からは従業員らしき人たちが悲鳴をあげながら工場から逃げてきた。

その従業員達を黒いナニカが、斬り裂いた、。


「逃げろ‼︎」


俺は気づいたら叫んでいた。俺は必死に逃げた。前へ、前へと。その数秒後、隣を走っていた俺の親友青葉の背中を、黒いナニカが貫いた。

青葉は、ゴポッ、という音とともに血を吹き出しそのまま倒れた。


「青葉‼︎」


「大丈夫か!おい!青葉⁈」


「痛い痛い痛い!ゲバッ、助けて、助けてくれ…」


青葉は血を吐き出しながらそう答えた。


「待ってろよ、今救急車を呼ぶから。」


不意に後ろから、ガシャコン、ガシャコンと、大型の機械が動くような音がした。振り向くと、黒い鎧がいた。背丈は3メートル以上はあるだろう巨体で、黒いフルプレートの鎧を着ていた。頭には大きく捻じ曲がったツノがつき、手には2メートルにも登るような漆黒の剛刀を持っていた。

その黒い鎧の剛刀が、ふりかぶられた。

青葉が叫ぶ。


「助けて、悠寺、助けてくれ。お願いだ。助けて。」


青葉を助けたら、青葉が逃げる時の枷となり、最悪、俺と青葉両方死ぬ。でも逆に、青葉を、助けなければ、俺が助かる可能性はすこし上がる。

そこまで考えて俺は、自分の思考の中にいる打算的で、姑息な自分の存在に気づいた。


見捨てちまえよ、今見捨てても誰もお前を攻めやしない。生き残りたくないのか?親友と自分の命だったら、どっちが大事だ?自分の命だろ。


黒い鎧の剛刀が振り下ろされた。

俺は、四つん這いで剛刀の脅威の外から逃げた。そのまま黒い鎧から離れるべく必死に走った。それからすぐあと、黒い鎧が青葉の体を肉塊に変える音が響いた。



――――――――――――――


俺は走っていた。ひたすら、ただただ前に。俺は親友を見捨てた。見捨てて、自分の命を優先した。

俺はとんだクズ野郎だ。今も耳から黒い鎧が青葉を切ったときの音が離れない。

そんな気持ちを紛らわすためにひたすら走る。自分の家へと。家族の安否が不安だ。あの黒い鎧が一匹だとは限らない。

5分ほど走って、やっと家に着いた。いや、家とは呼べないかもしれない。俺の家があった場所、そこは瓦礫とかしていた。冷蔵庫や、洗濯機といった電化製品は道路に飛び出ていて、そこらじゅうに、ガラスが散乱していた。瓦礫が所々、赤く染まっていた。

瓦礫の隙間から、赤く染まった人の手が出ていた。頭では理解していた。それが誰の手なのかを。

俺の家から出てるんだ。俺の家族の手以外ないだろ。そしてその手が、ピクリとも動かない理由も頭ではわかってる。

でも、認めたくない。認めない。なんでだよ、なんで?普通に生きてただけなんだよ!なのになんで…なんでこんなことになってんだよ!

なんでみんな死んでる?なんで俺だけ生き残った?家族が死んで、親友を見捨て、大事なものを全部無くして。

なんでこんなことになってる?全部全部全部全部‼︎

あの黒い鎧のせいだろ!あいつさえいなきゃ、俺は今日も平凡に楽しく生きてたはずなんだ!あいつさえいなきゃ!こんなことにはなってなかったはずなんだよ!

視界が憤怒で赤く染まった。俺の親友を殺し、家族を殺し、街の人を殺し、何様だ、お前。死ねよ。殺してやる、八つ裂きにして、みんなと同じ苦しみを味あわせてやる。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…


「殺してやるぅぅ!!」

俺は叫ぶ。


「殺す殺す殺す殺す殺す!死ねよ、死んでこの世に貢献しろ!お前なんて、生きてちゃいけねぇんだ!死ね!とった出てこい!汚物が!手前の手足一本一本削ぎ落として、俺がこの手で百回殺してやる!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!死ねぇぇぇぇ‼︎」


唾を撒き散らしながら叫び続けた。叫んで、叫んで、歩き回って、喉が枯れても叫んで、歩いて、叫んで。

いつまでそうしただろうか。もう時間の感覚すら曖昧で、体の感覚も、もうなく、俺は1人道路に倒れ込んでいた。あとは死ぬのを待つだけだった。しかし、身を焦がすようなこの憎悪だけは消えていなかった。


「死ね……死、ね、殺して…やる」


いつまでそうしていただろう。黒い鎧を殺すために街を亡霊のように徘徊し続けて、


「見つけた…」


道路の真ん中を音を上げながら歩く。黒い鎧の姿を。


俺はゆっくりと、少しづつ、黒い鎧に近づいた。

向かう途中で、鉄パイプを拾い、憎悪で赤く染まる視界をしっかりと黒い鎧に向け、歩く。

一歩一歩近づくごとに、殺意がどんどん湧いてくる。


「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」


ついに、黒い鎧が俺の目の前に現れた。

俺は叫んだ。


「シネェェェェェェ!」


俺は鉄パイプを大きく振りかぶり、黒い鎧を殴りつけた。

がゴンという鈍い音がした。俺が殴った後には、

()()()()()()()()()()()。しかし、俺は気にせず殴りつけた。何度も、何度も。あたりに、鉄で鉄を殴りつける鈍い音の響きわたる。がゴン、がゴンと。

黒い鎧がこちらに振り向いた。上を向いた俺と、黒い鎧の赤い目の視線が合わさった。

黒い鎧は、何も言わずに、手に持った剛刀を振りかぶった。かつて俺が逃げ、親友を殺した刀だ。

恐怖心など無かった。あるのはどす黒い憎悪と、底なしの殺意だけだ。

だから俺も大きく鉄パイプを振りかぶった。

こんなものでこいつを殺さないと知っていても、せずにはいられなかった。

俺は鉄パイプを振りかぶった。振り下ろしながら、俺は叫ぶ。


「うぁぁぉぁぁぁぉぉぉぁぉ!」


俺の咆哮と、黒い鎧が剛刀を振り下ろす風切り音ご、混ざり合う。


そして、黒い鎧の剛刀が()()()()()

いつの間にか俺の目の前には、背の高い音が立っていた。男は静かに前へ出ると、静かに拳を黒い鎧にねじ込んだ。直後、黒い鎧の体がガラガラと音を立てて崩れ落ちて、黒い燐光を撒き散らしながら爆散した。


死ぬ思いをしたのと、復讐する相手が突然いなくなったショック、その両方を機に、徘徊していた時の疲れと栄養失調などが一気に襲ってきて、意識が遠のいていく。

男が俺の方を振り向いた。俺が倒れこむのを見て、目を丸くして走ってきた。

男が何か言っているが何も聞こえない。

薄れゆく意識の中、ふとこんなことを思った。


俺にも力があればな、と。



















誤字脱字などがありましたら、ご報告お願いします。

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