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神託の黒翼 〜異能力は神託から〜  作者: 秋涼詩音
神託の天使篇 ―Oracular angel―
9/9

八話 地に堕ちた黒翼

〜前回のあらすじ〜

天使の襲撃にあった悠翔ハルト達。海戒カイカイは刈り上げの大男に、身動きを封じられる。

最悪の状況の中、悠翔は推測した異能力を試し、山風アラシ(金髪の男)を倒すことに成功した。


 

 掌から風を放つ異能力を使う、金髪の男は倒せた。あとは眼鏡の男を倒して、海戒さんを上手く助け出せれば……


「ハルハル気をつけてね、眼鏡の人の異能力はまだ分からないから〜!」

「うん」


 息を吐き、男の動作一つ一つに集中する……両手には何も持っていない。ゆっくり、ゆっくりと歩いて近づいてくる。



 ……男は立ち止まり、懐からナイフを取り出す。



 またナイフ……金髪の男が持っていたナイフよりも大きく長い。さっきよりも早いタイミングで異能力を使わないと斬られる。

 それに相手にも異能力があるはず……


 ――ガラン!


 音に体がピクンと反応する。


 ナイフが地面に落ちた。


「自分の負けですよ。自分の異能力、戦闘に不向きなものでね、触れた人の視界を見たり共有することしか出来ないんですよ」


 突然の白旗発言に疑心を抱き、驚きつつも少しホッとした。そんな僕とは反対に、ルウちゃんが強く疑いの声をあげる。


「ほんとなの?」


「本当ですよ。前に立つ貴方なら、自分の異能力を信じますよね?」


 触れた人の視界を見たり共有する異能力。

 そういえば、この男に公園で肩を叩かれた。あの時に異能力にかかっていて、アジトの場所がバレてしまったとすれば、辻褄つじつまが合う。


 僕のせいでルウちゃんやユウくん海戒さんを、危険な目に合わせてしまったんだ……



「ピンときたみたいですね。アジトまで案内して頂きありがとうございます」


 男は眼鏡を整え、不敵な笑みを浮かべる。


「さて、一人で突っ込んだ馬鹿を……殺しちゃって下さい」





 ――頭が真っ白になった。



「もしあれでしたら、自分がやりましょうか?」



 何を言っているのか理解できずに――





 あの二人は仲間や友達じゃなかったのか、どうしてそんな簡単に人を裏切り、切り離し、殺めることができるのか。理解できなかった。

 彼らは、僕と同じ人間ではないのかな……



 ――刹那、銀色の閃光が目先を通る。



 心を揺さぶられた一瞬の隙を突かれて、隠し持っていたナイフが空を切った。

 僕もルウちゃんも一瞬頭が真っ白になり、思考の処理が遅れていた。


「友の為に、神の為に! 黒翼よ! 神の供物になるのです!!」


 興奮状態の男の高い声と、悲鳴が耳に騒めく。


 今までにない、黒く煮えたぎるような感情と、みんなを護りたいと強く想う、白く透き通る感情が、心の中、いや頭の中で爆発して……


 何がなんだか分からないほどに、混ざり合った。




 ふと我に返ると、一羽の烏が死んでいた。


 何かに押し潰されたように……




 * * * * * * * * * *




 閑静な住宅街に地響きが聞こえる。

 住宅街の中にある大きな古民家から、砂埃が舞い上がっていた。


 ……その古民家から遠く離れた電柱。

 電柱の上の人影が、灰色のローブに身を包み座っていた。

 月が隠れ、人影の顔が曇る。



「……五五天使の封印が解けた? 神をも封印できる異能力を、一時的にでも解き破るなんて……すごいじゃないか!」


 トン、トン、と人影が足を前後に揺すり、踵が電柱をノックする。小さく鼻歌を歌いながら手に持つ本のページをめくる。


 月が再び、顔を出す。


 ――突如、強風が吹き抜け、手に持つ本のページを荒々しく捲り去る。

 手に持つ本を閉じて、ローブの中にしまった。



「さて、神託の意味を解き明かせるかい?

 五九天使の力を授かった、黒曜コクヨウ 悠翔ハルトくん」


 人影は電柱から飛び降りると、ローブのフードが脱げ、銀色に輝く髪が月明かりに照らされた。



〜異能力メモ〜


有上アリカミ 共輔キョウスケ(眼鏡の男)の異能力!


・触れた人の視界を覗ける。

・触れた人と視界を共有できる。

・どちらも最長1時間程度。

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