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神託の黒翼 〜異能力は神託から〜  作者: 秋涼詩音
神託の天使篇 ―Oracular angel―
8/9

七話 地に堕ちる白翼

〜前回のあらすじ〜

悠翔ハルトたちはバーベキューや花火をして夏を満喫していた。

しかし、天使の襲撃により非日常が始まった。

 

 僕はルウちゃんと手を繋いだまま、全速力で縁側えんがわに向かって走っていた。縁側には姉ちゃんがユウくんを抱えて待っている。


 後方では海戒カイカイさんと大男の、拳と拳のぶつかり合う鈍い音が響き合っていた……



「姉ちゃん――」


 縁側に辿り着いたその時、背後から凄まじい音が響き渡る。何かが爆発したような、粉々になったような激しい音だった。

 ――すぐに後ろを振り返ると、木製の大きな門がバラバラに吹き飛ばされている。その奥には二人の人影があった。


山風アラシ、派手に壊し過ぎですよ」


「仕方ねェーだろ共輔キョウスケ、そういう力なんだからなァ」


「やれやれ」


「それよりジン先輩、置いて行かねェーでくれ!」


 門の方から聞き覚えのある嫌な声が聞こえた。

 海戒さんと戦っている最中の大男は、瞬時に距離を取り顎髭をいじりながら口を開く。


「我に指図か? アラシ、二度目は無いぞ。獲物(黒翼)は任せたぞ、アラシとキョウ」



 ――その瞬間、海戒さんが背面から拳を穿つ。



 拳は空を切り、纏っていた水が飛散する。



 そこに居たはずの大男は、逆に海戒さんの背後を取り大きな足を目一杯引いている。


 大きな足はバネのようにしなり、強烈な蹴りを放つ――背中に直撃した海戒さんは、遅れてきた二人組の間を抜けて、道路まで吹き飛ばされていく。


「とんでもねェー、迅先輩任せてくれ……ください」

「山風は、考えてから話すと良いですよ」


「キョウ、異能力はもうよい」

「……先輩分かりました。解除しますよ」


 爽やかな黒髪の男は、目を擦り眼鏡をかけ直す。


 この人達は公園の時の二人組。くすんだような金髪の男は左腕をギプスで固定している。

 そして爽やかな雰囲気の眼鏡の男、この人はルウちゃんと約束していたはずなのに……



「ハルトォォー!! 早く行け!!」


「でも……」


 ……海戒さんがいくら強くても、三対一で勝てるかどうか分からない。僕も異能力を使えていたら。


 ――その時、金髪の男が僕達の方に気がつき、あの時と同じようにナイフを片手に走り迫ってくる。


「左腕の借りをォ返してやる!」


「行かせないぜ!」


 海戒さんが金髪の男に向かった瞬間、刈り上げの大男が壊れた門の柱を持ち上げると、高く跳躍ちょうやくして海戒さんを押さえ込む。


「お主の相手は我だ。ここで観戦仕様じゃないか」


「海戒さん!!」

「くっそ……」


 大男は柱の上に股がり、海戒さんの身動きを完全に封じていた。



「さすが迅先輩だな、これで後は餓鬼だけだ!」

「今回は自分も参加しますよ」


「トドメは俺が刺すからなァ!」

「…………」


 後ろを振り向くと、姉ちゃんが不安そうな表情でユウくんを抱きしめている。

 海戒さんの身動きは封じられた。この二人は僕とルウちゃんで何とかしないと……


 ――姉ちゃんとユウくんを護らなきゃ!


 まだ試せていないイメージで、推測した異能力が使えたら……勝てるかも。その為には接近戦に持ち込まないといけない。

 だけど、もし失敗したら確実に刺し殺される。前みたいなラッキーパンチはありえない。


「ルウちゃん! 僕が囮になって男を引きつけるよ。合図したら思いっきり攻撃できる?」


「ハルハル……できるよ、一撃で仕留めるよ〜!」



 僕とルウちゃんは拳を握りしめ、二人組の男の方へ立ち向かう。



「あの時の雑魚ニィちゃんか、テメェーは邪魔だ! オラァ」


 金髪の男は右腕を振り払い、砂埃を巻き上げる。

 これじゃあ近づけない……この男の異能力は、たぶん掌から風を出す異能力だろう。公園では風圧を利用した遠距離攻撃を仕掛けてきた。

 接近戦に持ち込むにはどうしたら。


「オラオラオラァ!」


 男は右腕を振りまくり、砂を飛ばしまくる。

 そういえば、さっきからこの男の行動は短絡的で感情的だ。そう思い口を開く。


「僕はもう弱くないぞ。お前なんかに負けない!」


 この男は感情が高ぶると、異能力を忘れてナイフを使った攻撃を仕掛けてくるはず。



 ――フハッハ!


 くすんだ金髪の男が、口角を上げて高笑う。


「お前なんかに負けないッ! ハッハハ!

 気合い入ってるな……雑魚が調子乗ってんじゃねェーぞ! オラァ」


 男が鬼のような形相で、ナイフ片手に走り迫る。

 予想通り接近戦に持ち込めた。チャンスは一瞬、落下した時の記憶を思い返す……



 男はナイフを振りかぶる。


「死ねェェエエーー!!」



 ――ギリギリまで追い込んで、重く……重たく。



 僕は勢いをつけて、右掌を地面に叩きつける――瞬間、ゾウに押し潰されているかのような重さを、全身に感じる。


 男は地面に腕をつけ、いつくばっていた。

 推測した異能力が上手く使えた! だけど、自分も重たくて動けないのか。


「うッ、動けねェ!?」


「今だー!!」


 僕の合図で高く跳躍したルウちゃんは、男の真上で宙返りしながらかかとを振り落とす。


「スタードロップ・マジカルアタック!」


 男の脳天を直撃すると同時に、異能力を解くと力尽きるように男は倒れた。



「ハルハル〜すごい! 空中ですご〜い重くなって、そのまま振り下ろしたらすごい威力だったよ〜!」


「うん!」


 自分の右手を見つめて、グーとパーを交互に繰り返す。これが天使の力……異能力。


 推測通り、重力を操る異能力だ。

 僕は右手を強く握りしめて、口を開く。


「よし、次は眼鏡の男を倒すよ、ルウちゃん!」


「りょ〜かい!」



〜異能力メモ〜


岩畳イワダタミ 山風アラシ(金髪の男)の異能力!


・掌から風を放出する。

・小さな鉄球を吹き飛ばせる。

・強風を放つと肩を痛める。



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