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神託の黒翼 〜異能力は神託から〜  作者: 秋涼詩音
神託の天使篇 ―Oracular angel―
6/9

五話 天使の力と異能力

〜前回のあらすじ〜

堕天使のアジトで水無月ミナヅキ 海戒カイカイと、紗鏡サカガミ 結雨ユウ(ユウくん)と出会い、夜も遅く泊まることに。

 

 ……違和感を感じて目が覚めると、身体が重い。

 いや、体に何か乗っかっている。


 目を開けると体の上に、可愛い寝顔でよだれを垂らしたルウちゃんがいる。


「……ルウちゃん? 何でこの部屋に?」


 ――昨夜ルウちゃんに、二階の空いてる部屋に案内してもらい、僕と姉ちゃんは布団を二枚敷いて、同じ部屋で寝ていた。

 その後ルウちゃんとユウくんは自分達の部屋に行ったはずなのに、どうして今僕の上に……


「ルウちゃん起きてー!」



 ……声をかけても全く起きる様子が無いので、体を揺すろうと思った時、両手が何かに掴まれている感覚に気がついた。

 重たくて柔らかい……右側を向くと姉ちゃんが胸を押し当て、僕の腕に抱きついている。

 急に頬が焦げるように熱くなり、身体中が熱い。


 深呼吸をして左側を向くと、ユウくんも腕にしがみついている。


「ハルちゃん……」


「ハルハルとアコアコと……一緒に寝る〜」


「寝るの〜ぼくも一緒に……寝るの」


 三人の寝言を聞いて、朝から微笑ましい気分。もう少し、このままでいよう。


 ――ドスーン! と鈍い音と共に、真上から分厚く重たそうな本が僕の顔に向かって落ちてくる。

 とっさに避けようと思ったが、体は起き上がれず両腕も塞がれていたんだった。


「ルウちゃん! ユウくん! 姉ちゃァァアア!!」




 * * * * * * * * * *




「みんなおはよう! おっ!? ハルト、姉ちゃんと一緒に寝て興奮でもしたか?」


「違います」


 鼻にティッシュを詰めた僕を見て、海戒カイカイさんはニヤニヤしながら揶揄からかってきた。

 右腕に抱きついていた姉ちゃんを思い出して、少し鼓動が速くなっている。


「ハルハルごめんね〜、ルーが上に乗っかってて」

「あっ! ルーと一緒に寝て興奮したのか〜」


「違います。分厚い本が落ちてきて、避けそびれたんですよ……」


 ニヤニヤしながら揶揄ってくる海戒さんに少しムカついて、素っ気なく答えた。



「わるいわるい、なんか揶揄いたくなってな」

「分かります、分かります! ハルちゃん見てると、たまに揶揄いたくなりますよね〜!」


「えっ、姉ちゃん!?」


「なるなる〜!」

「なるのー」


「えっ! ルウちゃんとユウくんも〜」


 みんなの笑い声が広い和室に響いていた。




 * * * * * * * * * *




 朝ご飯に昨日の残りを食べた後、海戒さんに連れられて、家の一番端の小さな和室に案内された。

 海戒さんは持っていた木製のオタマで畳を叩く。


 トントン!


 すると、畳が勢い良くクルッと縦に回り、地下へと続く階段が現れた。


「隠し階段だぜ!」

「すごい!」

「足元気をつけてな」

「はい」


 海戒さんの後に続いて、薄暗く段差が高い階段を、慎重に一歩一歩降りる。

 ……少ししてきしむ音と同時に、畳が自然と閉まっていく。ほとんど何も見えない暗さの中、壁に手を当て慎重に降りて行く。


 段々前が薄明るくなってきて、海戒さんがささっと降りると大きな空間が広がっていた。


「ジャーーン! ここが真の堕天使アジトだよ〜!」


「ルウちゃん、いつの間に」

「カイカイに呼ばれたんだ〜!」


 ルウちゃんはソファーの上で足を伸ばして、寝転ぶようにくつろいでいた。


 ――それにしても綺麗なアジト。壁も床も高い天井も、色彩豊かなパステルカラー色。

 壁や天井に埋め込まれた電球からは、暖かい電球色の光がアジトを包み込んでいる。

 ソファーやテーブルなどの家具と、筋トレ用の器具がまとめて置かれている奥は、広いスペースになっていた。


 起き上がり姿勢を正したルウちゃんに、手招きされて僕は隣に座った。


「さて……ルーとハルト、昨日何があった?」


 壁にもたれ掛かる海戒さんが、声色を変えて尋ねてきた。

 ルウちゃんは昨日起こった出来事を話し、僕は三日前の出来事から丁寧に説明した。






「なるほど、ハルトは三日前に天使になったばかりで、昨日ルーと出会った。

 ルーはハルトが気になって跡をつけていた……が、ファミレスでご飯を食べているうちに、見失ってしまい。駆けつけた時には、ハルトは傷だらけだったのか」


「うん……ハルハルごめんね、ルーのせいで――」


「そんな事無いよ。ルウちゃんが助けに来てくれなかったら、姉ちゃんが危なかったし、助かったよ。ありがとう」


「ハルハルぅ〜!」


 ルウちゃんが涙声で、膝に飛び込んで来た。

 それにしても、ずっと跡をつけてくれてたなんて、全然気がつかなかった。そういえば、ファミレスで感じた視線もルウちゃんだったのかな。


「良かった良かったぜ! だがルー、戦う場所が公園じゃなかった時の事も考えていたか? 自分の異能力の制限を、忘れないようにな」


「は〜い!」


「ルウちゃんの力って、それに天使の力はどうやったら使えるんですか?」


 海戒さんはそっと壁から背を離し、ゆっくりと歩いて近づいてくる。

 目の前にあるテーブルを挟んだ、反対側にあるソファーに座わり、人差し指を立て口を開く。


「その前に一つ約束だぜ。天使の力は自分や仲間を護る為だけに使うと、オレと誓ってくれ……誰かを殺める力では無いぜ」


 澄んだ青い瞳は、僕ではない誰かを見ているようで、いましめるよに話す。



「どんな理由であれ、人を殺すな……」



「僕は今は弱いけど……強くなって、姉ちゃんやルウちゃんやユウくんを、みんなを護りたい。自分や仲間を護る為に力を使います!」


 僕の返事を聞いて、海戒さんは顔を緩めた。


「よし! 天使の力はどうやったら使えるか、か。

 まず、天使の力の能力を、異能力・・・とオレ達は呼んでいる。一人一人与えられた力によって、全く違う異能力を持っているだ!

 その為発動条件がバラバラであり、使えるようになるまでの個人差が大きいぜ」


「ルーは天使の力を使うのに、一ヶ月かかったよ。

 ルーの力わね〜水に映った物を見たとき、好きな方向に反射させる異能力だよ〜!」


 水に映った物を反射させる異能力……なるほど、だからあの時、噴水の水面を見ていたんだ。

 それで鉄の球が反射されて、逆再生のように飛んでいたのか。

 ――発動条件は難しいどころか、かなり限られている。水が無い所では使えないし、水面が見えなくても使えない。


「扱いづらい異能力だね」


「ルーの異能力は発動条件が厳しいが、かなり強い異能力だぜ。

 さて、問題のハルトの異能力だが、話から推測すると硬化や軟化、もしくは超速回復だろうな」


「なるほど……」


 ――硬化や軟化、この二つの可能性は高い。体を硬化や軟化させたら、無傷な理由も頷ける。

 超速回復だったら僕は一回瀕死だったのかな?



「それで、異能力を使えるようになるには、どうすればいいんですか?」


「いきなり使えるかはセンス次第だぜ。とりあえず、屋上から落下した時のことと、推測した三つの異能力をイメージしてくれ」


「分かりました」



 両目を瞑り、落下の瞬間を思い出す。そして、体が硬く鉄になるイメージ!


 ……グミのように柔らかく!


 ……妖精に癒されるような感じ?


「……全然ダメです。海戒さんとルウちゃんもイメージで使えるようになったんですか?」


「オレは戦いの中で使えるようになったが、その時は調整が全然出来なかったぜ。その後イメージを繰り返して、まともに使えるようになったな!」


「ルーわね〜池に映る飛行機で!」


「えっ!? それって……」


「危うく墜落させかけたらしいぜ……ともかく、ハルトはどんな異能力かある程度推測できるから、推測とイメージだな!」


「はい!」


〜異能力メモ〜


紗鏡サカガミ 瑠雨ルウ(ルウちゃん)の異能力!


・水に映った物(生き物不可)を反射させる。

・好きな方向に反射出来る。

・反射する速度も変えられるらしい。


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