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New World Order  作者: 翠玉山珈琲
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プロローグ

 校内に響くチャイム、放課後の報せと共に教室に開放感が広がる。

 そんな午後の陽射しがたゆたう中、俺は鞄に仕舞っていたスマホを手に取ると、お気に入りのサイトを開く。

 そのトップページではカウントダウンが進行している。このカウントダウンは先週から始まり、残り時間は≪004:27:18≫

 暫くカウントダウンを眺めていると、教室のドアが開き、見知った顔の生徒が入ってくる。


 「待たせたな宏介、で、今日はどうする?時間までゲーセンでも行っとくか?」


 隣の机に腰かけながら、話しかけてきたこの生徒は、親友の宮代悠一だ。


 「今日はこの後用事があるから、悪いな、先に帰っててくれ」

 「そっか、じゃあ宏介も時間までにユークルスに来いよ、先にログインして待ってる」

 

 じゃあ後で、と手を振り教室を出ていく悠一。


 俺がチェックしている、謎のカウントダウンを設置しているサイトの主は、日本企業でありながら、時価総額で世界トップ3に入る「フューチャーフロンティア」社だ。


 MMORPG(Massively Multiplayer Online RolePlaying Game) 大規模多人数同時参加型オンラインRPG


 本格的にMMORPGのサービスが開始されたのは1980年代とされているが、今から15年前まではグラフィックの向上こそあれ、基本的な遊び方に大きな変化はなかった。

 その状況を一変させたのが、15年前、2041年に発売されたMMORPG「ユークルスオンライン」。

 世界に先駆けてMMOの世界に本格的VRを導入し、停滞していたMMOの世界にブレイクスルーをもたらした一本。

 そして、現在までにVRMMOとの呼称を確立した唯一のゲームである。

 圧倒的な没入感によるゲーム性は社会現象となり、プレイヤー人口は、全世界で2,000万人を超えたと言われている。


 ユークルスオンラインの成功によって、開発会社である「フューチャーフロンティア」社の株価は跳ね上がる事となり、今では時価総額において世界規模の巨大企業となっている。

 そんなユークルスオンラインもサービス開始から既に15年、半年後にはサービス終了することが公式にアナウンスされている。

 全世界2,000万人とも言われる膨大なプレイヤー達から悲嘆の声が上がったのは致し方のないことだろう。


 しかし、先週、突如として謎のカウントダウンがFF社のサイト上に設置されたのである。

 当初から、SNS上では、次期VRMMOの発表ではないかとの憶測が出ており、世界中の期待はカウントダウンとともに否が応にも高まっている。

 そして、本日がそのカウントダウン最終日。


 さて、俺もさっさと用事を済ませるか。


 そうして鞄を持って腰を上げようとしたところに、まだ教室に残っていた一人の女生徒がこちらに近づいてきた。

 艶やかな黒髪が印象的な彼女は、生徒会書記を務める才女である。


 「天城くん、さっき宮代くんと話してたユークルスってユークルスオンラインのこと?」

 

 そんな才女からの意外な質問だった。


 「うん?そうだけど、水瀬でもユークルスの事知ってるんだ」

 「うちの弟がやってるから、もしかしたらそうかなって」

 「そうなんだ、水瀬はやってないの?」

 「私は興味ないから」

 「確かに、水瀬ってそういうの興味なさそうだよな」

 「それじゃ私は生徒会があるから、天城くん、またね」


 水瀬が出ていき、気付くと教室には俺だけが残されていた。

 

 「さてと、待たせたらまた面倒な事になるな」


 足早に教室を後にした。


 校門前では既に目的の人物が俺を待っていた。

 そして、やはり面倒な事になっていた。


 目的の人物を囲むようにして、数人の男子生徒達が声をかけていたのだ。


 「見た事ないけど、他校の子?」

 「俺たち今からカラオケに行くんだけど、一緒に行かない?」


 その人物は、テンプレ通りのナンパをされているようだが、特に意に介した様子もない。

 

 「ごめんなさい、人を待ってるの」

 

 と、こちらもテンプレ通りの台詞である。


 予想通りな展開に内心呆れつつも、いつまでも見ている訳にもいかないので、目的の人物に声を掛ける。


 「伽耶姉、ごめん、待たせた?」

 「宏介くん、遅いよ、待たせすぎ」


 俺達のやり取りに未練がましく舌打ちをしながら去っていく男子生徒達。


 「遅れたのは謝るけど、こうなる事が分かってたから家で待っててって言ったんだよ」

 「だって、早く宏介くんに会いたかったんだもん」


 と言って、ぷくーっと頬を膨らませる伽耶姉。

 はぁ、自分の容姿がどれだけ優れているか、もう少し自覚をもってもらいたいものだ、と肩を落とさずにはいられなかった。

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