修復作業
そういえば、さっきから言っているマソウヘイとは何なのだろうか。
「マソウヘイって何?鎧で固めた防御力が高い兵士?」
イメージ的には、全身を金属の鎧で固めた兵士な感じがするが。どういう攻撃を受けたら、あんな風に穴が開くのだろうか。
「防御力は高くないぞ。ただでさえ重い槍を持ち運ぶのだから、鎧なんか着けたら動けなくなってしまう。」
槍?ということは―――
「マソウヘイは槍使いなの?」
「ああ。特殊な槍を使う厄介な兵士だ。」
ようやく分かった。マソウヘイは恐らく漢字にすると魔槍兵だ。
「どんな槍?」
「そうだな……うまく説明は出来ないが魔法の力を持っているらしく、硬い皮膚でも貫通する攻撃をしてくる。近距離なら我の鱗でも防ぎきれないだろうな。」
ウルスの鱗でも防ぎきれないだなんて……どんだけ強力なんだ。
「人間があれほどの魔法を使えるとは思わないんだが……なにか工夫をしているのか?」
気になることを呟いた。
「人間って魔法使えないの?」
魔力がないとかそんな感じだろうか。
「魔法が使えないわけではない。我ら魔族とは違って魔力が少ないから、大規模な魔法を行使できないんだ。まぁその分、手先は器用で、魔法の制御もうまいのだがな。なのに我らを妬んでいる。迷惑なことだな。」
予想が当たった。それにしても人間が魔物を妬んでいるとは初耳だった。
「魔力量が少ないから、魔力がある魔物達に嫉妬しているってこと?」
「魔物には嫉妬しておらぬよ。妬まれているのは魔族や亜人だ。特に亜人の差別はひどいと聞くな。」
「魔物には嫉妬しないの?」
「魔物は基本的に魔法を使わないし、知能もないからな。対して、魔族は知能があり、たまに魔法も使う。持たないものは持つものを羨むと同時に妬むのだよ。」
そうしみじみというドラゴンはやはり色々と経験をしたのだろう。
「さて、我の目的を忘れてはおらぬだろうな。」
ウルスの目的?なんだっただろうか。
「はぁー、寝床の修復だ。枯れ草を置かねばならなかっただろう。」
ああ、そうだった。すっかり忘れていた。
「ウルスが吹っ飛ばしたからね。見栄張って。」
言わないでおいてあげたのに自分で蒸し返すきっかけを作るとは。さっきの憧憬を返して欲しい。
「うっ。……とにかく敷くから退いていろ。」
言われたとおりに下がると、よこに積み上がっていた枯れ草を掴み、床にばらまいていく。確かに、草とはいえあれに押しつぶされたらただじゃすまないだろう。
そんなこんなで色々あったが、無事に寝床修復作業は終わったのだった。