表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王革命譚  作者: 朧月
3/21

ドラゴン

結論から言うと、ドラゴンはとてもいい人(?)だった。


寝床まで運ぶときも、私が傷つかないように爪を引っ込め、丁寧に扱ってくれたし、寝床についた後も、不器用ながら甲斐甲斐しく世話をしてくれた。

…運ぶときに、落とされそうになったり、寝ぼけたドラゴンに押しつぶされそうになったりと、事件はあったが、拾われてよかったと思う。


「レイ、何を考えているのだ?」


ちなみに、ドラゴンには子供のようにかわいがってもらっており、名前を聞かれたときに玲とこたえたため、レイと呼ばれている。


「ウルスに拾われてよかったなと思って。」


ドラゴンの本名は長すぎて忘れてしまったが、ウルスなんとかだったのでウルスと呼んでいる。


「ははは。貴重な仲間をみすみす死なせるわけにはいかないからな。こんなに懐いてくれるとは思わなかったが。」


そういって朗らかに笑うと見える牙は、昔は恐ろしかったが、今は全くそう思わなくなった。


彼は私のことをかわいがってくれるのと同じぐらい私も彼のことが好きなのかもしれない。

家族的な意味で。


「ウルスって父親みたい。」


思っていたことが口に出てしまった。どう反応されるか心配で、後ろを見たが、気に障ったようではないようだ。


「父親か。なかなかいい響きだな。レイがいいならそう呼んでくれてもかまわんぞ。」


私の意思次第といっているが、目からはありありとそう呼んでほしいと伝わってくる。


ウルスは背筋を伸ばすと、首を最大まで曲げないと、見えないぐらい大きいが、私に気を遣って常に、低い姿勢でいてくれている。


「ウルスがそう呼んでほしいなら呼んでもいいけど。どう、お父さん?」


どう呼んでいいか迷ったが、かしこまった感じもやなのでお父さんにすることにした。


ウルスは私の言葉を聞くと、考えるように目を瞬かせた。


「……やはり、ウルスでいい。誰にも名前を呼ばれなかったら名前を忘れてしまいそうだ。」


私が来るまで、独りで生きてきたらしいから、今さらそんなことはないと思うが、そこは聞かないことにしておく。


「そっか。じゃあ、ウルスにとって私ってどんな存在?」


そう聞くと、彼は困ったような顔になった。


「どんな存在?我にとってレイはレイでしかないのだが。……強いていうなら娘か。」

やはり、ウルスは私のお父さんだ。


「【お父さん】は娘を外に出してはくれないの?」


思い切って聞いてみた。


実はこの寝床である洞穴に来てから、一回も外に出ていない。


この洞穴は縦長で、出入口は遙か上にある穴しかないので、ウルスに乗せてもらわないと出ることが出来ないのだ。

しかし、その頼みのウルスは外に出るのを許してくれない。


いくら、理由があるとしても、ずっと洞穴にいるのはつまらないのに。


「グルルル、外は危険だ。お前にはまだ早い。」


うなり声は強い感情の表れ。


今はこれ以上、聞かない方がいいかもしれない。

……外に出るのは当分先になりそうだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ