出会い
短いです。
目が覚めると見知らぬ天井だった、ということはなく青空だった。
見渡すかぎり草、草、草。魔王は自然発生方式なのだろうか。
手を上げてみると、小さな手が見えた。ふさふさした銀色の毛にところどころ青いのが混ざっていて、気持ちよさそうだ。手の先には申し訳程度に爪が生えていて可愛らしい。
……そんな気はしていたが、魔王は人外だった。小説でよくみる獣人だろうか。
遠くで何かの遠吠えが聞こえた。
転生そうそうピンチが訪れたな。今は自分より背が高い草に囲まれていて、魔物には見つかっていないが、このままここにいるわけにはいかないだろう。
しかし、幼少期なのかこの体は言うことを聞いてくれない。歩こうとしても、足が生まれたての小鹿のように震え、立つことすらもままならない。
なにかの遠吠えが近づいてきた。
「グルル、グルル、グルルルルゥー」
詰んだかもしれない。
すぐにここから離れなきゃいけないのに、やは
り歩けない。
「グルル、グルル、グルルルルー」
どんどん大きくなっていく。
「グルル、グルル、グルルルルッ?」
うなり声がすぐ近くで止まった。
〈がさがさがさがさがさ〉
目の前の草むらが揺れるが、体が動かない。
そして、背丈の高い草が横に割れ、大きな頭がにゅっと突き出てくる。
「!!」
物語の悪役でよく使われるドラゴンのような怪物がそこにはいた。黒々とした鱗に覆われ、ルビーのような赤々とした目が獲物を狙うように爛々と光っている。
ドラゴンのような怪物が口を開けた。私はこいつのおやつになるのだろうか。
「ウェアウルフか。珍しい。しかし、このままでは死んでしまう。持って帰るか。」
言葉をしゃべった!?
……いっている内容からして私を食べるつもりではないようだ。
とりあえず、何も出来ない今、このドラゴン(仮)を信じてみるしかないだろう。