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再び月曜日 Ⅰ

  月曜日。その日は朝から雨が降っていた。しとしと、しとしと。静かな音がどこか寂しげに響く。

  傘を差して学校に向かう。いつもより少し早めに家を出た。


  校門のところで、反対側からやって来たジャージ姿の黒い傘の男の子とぶつかりそうになった。気づかないうちにうつむいて前かがみで歩いていた私は、顔を上げて相手の顔を見た。


「あっ」


  思わず声をあげてしまった。


「綾瀬くん……!」


  相手の方は驚いたように私を見たあと、すぐに視線をそらして、


「すみません。前よく見てなくて」


 と低い声で言った。


「あの、おはよう」


  こうやって朝に会って話すの初めてだな、と思いながら、思いがけず話せたことが嬉しくて微笑んだら、彼は虚をつかれたように慌てて、傘で自分の顔を隠した。


「えっと、とにかくぶつかりそうになってごめん。俺、急いでるんで」

「え、あの……?」


  彼は私を振り返らずに、校舎から離れた体育館の方へ走っていった。これからバスケ部の朝練、なんだと思う。

  すごく……よそよそしかった。

  どうして?

  私が話しかけた瞬間、彼の表情は緊張したように硬くなった。


「綾瀬くん……?」


  自分が泣きそうになっているのに気づいた。大丈夫、まだ泣いてない。これぐらいならごまかせる、はず。

  もう泣かない。彼のことではもう。

  泣いてお別れなんて嫌だ。


  静かな雨は私の代わりに誰かが涙を流してくれているみたいに思える。しとしと、しとしと。悲しみをたたえて、私の心を濡らしていく。胸の辺りがひんやりと冷たい。

  でも、私は泣かない。そう決めたから。

  必死に平気な顔を作って教室に向かった。

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