異世界転移して、最初のイベントは大抵商人救出。
アトラや自分の能力を確認しがてら、草原を街道に沿って進んでいると、目の前で数体のゴブリンに襲われている馬車を見つけた。
「テンプレktkr。じゃなかった助けないとな、スキルの実地調査も兼ねて。」
あくまでも実益優先、テンプレだからじゃない。ないったら無い。
「そうですね、ご主人様。では、糸創造。」
アトラが今の僕が使いやすいサイズの糸を造ってくれる。
慣れてないけど大丈夫だよね。
「今助けます!」
宣言して馬車とゴブリン達の間に割って入る。
僕の両手から伸びる十本の糸が宙を舞い、ゴブリン達に襲いかかる。
十本のうちの一本一本が違う意思を持つかの様に襲いかかる、これが糸使いの力のなせる技か。
ゴブリン達の表皮には浅く、切りつけられてような傷が無数に付いていく。
僕は胸の前でクロスさせていた、腕を降り下ろす。
するとそれに連動して、糸が剣撃の様にゴブリン達に襲いかかる。
グギャ、という声を最期にゴブリン達は賽の目状になった。
あれ、少しやり過ぎたか......
「流石ですご主人様。」
アトラが無邪気に笑いながら言う。と言っても蜘蛛の顔色は分からないからそんな気がするだけだが。
「どなたか存じ上げませんが助かりました。急いでいて護衛を付けなかったものですから...貴方は私の命の恩人です。この先の王都で困った事や、御入り用のものがございましたら私の経営する、暮らしの日用品から攻城兵器まで、でお馴染みのギュール総合商会へお越しください、サービスさせていただきます。私は荷物を運ばなければならないのでこれで。」
馬車から出てきた商人と思わしき女性はそれだけ言うと目にも止まらぬスピードで馬車を走らせていった。
「このまま進めば王都に着くようですね。」
呆気にとられていた僕を現実に引き戻すように、アトラが言った。