プロローグ ある少年の門出
僕は急いでいた。
だから必然だったのかもしれない。
交差点を良く見ず、飛び出して死んだのは。
だけど、このあと起きたことは偶然だったのだろう。
神に会うなんて。
「こっんにっちはー山田太郎さん。」
元気な声が白い世界にこだまする。
「えっと...山田太郎じゃなくて井伊秋斗なんだけど。間違えてない?」
「えっ...」
沈黙が続く。
「申し訳ございません! 手違いで殺してしまいました! 本当に申し訳ございません!」
少女は土下座せんばかりの勢いで頭を下げる。
「僕って死んだんだよね。」
少女は申し訳無さそうな顔で、
「はい、そうなります。山田さんにやってもらいたい事があったんですが死なないとこっち側に来られないので...」
「これって、どうなるの?」
僕は疑問を投げ掛ける。
「あのー大変申し訳ないんですが、山田さんがやるはずだった事をやってもらいたいなー何て思ってたりしちゃったりなんかしてー、ハハハ。すいません。」
少女は笑いながら言う。
「で、何をすればいいんですか?」
僕は苦笑いで言う。
「早い話が異世界転生、突き詰めて言うと神の娯楽のエンターテイナー!」
何やら少女のテンションが高い。
「はぁ。」
少し理解が及ばないが、少女はそのまま続ける。
「私、娯楽の神様なんてやってまして、ベスって知ってます?あ、そうですか知りませんか。まぁ、最近現世で人気の異世界転生、それに他の神様も興味持ちはじめまして、創造神やら、時女神やらが協力して創ったんですよ異世界。それで、人類同士の接触の第一段階として各世界の人間を転生ではなく転移と言う形で送ることにしたんですよ、それに選ばれたのが井伊秋斗さん、貴方なんです!」
この神、記憶を改竄しやがった。
「はぁ、何となく分かりました。何かギフトとかあるんですか?」
嬉々としてベスは、
「はい! ギフトと言うよりジョブですね、今天職探しますねっと......糸使いですね、えっとその、頑張ってください。私からも祝福贈りますけど、頑張れば見てる神様からお捻りとしてくれるんじゃないかと思いますんで。行ってらっしゃい。」
ベスがそう言うと足下が光り始めた。
「ちょっとまだ聞きたいことが...」
目の前が真っ白に光り、光が収まった時、僕は草原にいた。