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傲慢なあたし

 りゅうちゃん、りゅうちゃん。あたしのおーじさま。かわいそうな家なし子。


 りゅうちゃんは、あたしのお家のお隣さんの、おじさまとおばさまの子だった。二人ともとっても仲が良くて、りゅうちゃんはその中の幸せな子供だった。りゅうちゃんはおじさまとおばさまから愛されていて、おじさまとおばさまはたったひとりの我が子であるりゅうちゃんを、宝物のように大事に大事にしていた。だから、理想的な家族だったと思う。

 あたしは、りゅうちゃんのお隣にある大きなお家の一人っ子。兄弟のいないりゅうちゃんと同じで、おうちにいる子供はあたししかいないし、あたし以外はぜえんぶ大きな大人の人。ただ、りゅうちゃんと違うところは、あたしのパパとママはあたしをかわいがってくれなんかしなくて、あたしだってパパとママの顔さえ覚えてなかったわ。

 そして、あたしとりゅうちゃんの接点なんて「お隣さん」というくらいで、同年代なのに外に出れないあたしは窓から見える景色を見ることしかできなかったし、りゅうちゃんはそもそもあたしを見たことなんてなかったはず。

 あたしはりゅうちゃんを知っていたけど、りゅうちゃんはあたしなんて知らなくて、りゅうちゃんの世界はもっと違うところに広がっていたのよ。


 そんなつまんない毎日の中で、珍しくあたしが外に出ることができた日があった。いつもいつもちっちゃく切り取られた外の景色があたしの世界だったけど、そこから飛び出して見える景色は何もかもが輝いて見えたわ。

 でもね、ここで残念なことに、あたしは迷子になってしまったのね。些細なことではしゃいでバカみたいに驚いて、そんなことをしてたから、気づけば一人ぼっちになっていたの。

 そうしたら、悪いことは続くもので、あたしの目の前にあたしより大きな体の大型犬が現れたの。牙が大きくてヨダレを垂らして、真っ黒で薄汚い悪犬が。

 あたしは、怯えて立ち竦んでしまった。それで助けを求めたの。それは、ひどい小声で誰にも聞こえそうにないほどの声量のものだったのだけれど……。

 するとね、りゅうちゃんが、りゅうちゃんがあたしの目の前に立ってた。両腕をいっぱいに広げてあたしを守るみたいにして、あのりゅうちゃんがあたしを守ったの。

「おまえなんて! おまえなんてこわくない!  うりゃ! うりゃぁ! あっちいけ! あっちいけ!!!」

 りゅうちゃんは必死で石を投げた。そうして追い払ってくれた。あたしはぼろぼろ涙をこぼしてりゅうちゃんを見たの。りゅうちゃんは犬が過ぎ去ってからへたりこんで、格好悪くてごめんなっていってくれたけど、その日から、あたしの王子様はりゅうちゃんになった。







 でも、でもでもね、あたしの王子様はそれからかわいそうな目にあうの。それはね、おうちがなくなってりゅうちゃんのことを愛してくれたおじさまとおばさまも死んじゃうこと。

 だから家なしこ。りゅうちゃんは、帰るお家がなくなった。


 かわいそうなりゅうちゃん。

 かわいそうなりゅうちゃん。


 でも、大丈夫よ、おうじさま。あたしがりゅうちゃんを助けてあげる。りゅうちゃんの憂いをはらってあげる。

 今度はあたしが助けてあげる番だからね。だからねりゅうちゃん、あなたは何にも怖がらずにあたしの手を取ればいいのよ。


 例えりゅうちゃんのお家が丸ごと燃えて、おじさまとおばさまがいることを知っていて、あたしがお隣さんなんて要らないわって言ったからといって、りゅうちゃんは女の子だし、あたしお友達が欲しかったの、っておねだりしたからといって、パパとママがあたしを怖がったからお部屋に閉じ込めたのだって、全部全部、あたしの我が儘のせいでいろんなものが滅茶苦茶になっても——。りゅうちゃんは、無垢のままであたしを受け入れてね。


 かわいそうなおうじさま。りゅうちゃん、だいすきよ。

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