声
…とりあえず、体調の確認はとれたことだし!早速朝食を頂きますか。…安心したとたんにお腹が…
机の上に並べられていたのは、一口サイズの、中にはジャムや、レタスやトマトといった、様々な種類のサンドイッチだった。
「いただきます」と手を合わせてから、そっと口に運んだ。
やっぱり食べる時間は至福だ…サンドイッチの味が口の中に広がる。本当朝ご飯おいしい。
夢中になって食べていると、ふと、誰かに見られていることに気付く。視線をあげると、ルーシーのお父様とお母様がこっちをじっと見られております。
…んー、やっぱりキラキラオーラ半端ないですね。
「美味しい?ルーちゃん」
「はい!おいしいです!」
「ふふ、可愛いものだな。…尚更嫁には行かせたくないが…」
「もう、あなたったら…」
?嫁?あ、もしかしたら婚約者のことかな。この世界では婚約をすることは当たり前みたいだし…そういや、乙女ゲームでルーシーの婚約者も攻略対象者だったよね。んーと、名前…長くて覚えてないや。食べ終わってからまた考えよう。
そう思った私は、もう一口サンドイッチを口に運んだ。
やっぱりおいしい。
ふう!お腹いっぱい。
「ごちそーさまでした!」
「フフ、沢山食べたわね?」
「はい!とてもおいしかったです!」
「それは良かったなあ」
おお、お父様に頭をワシャワシャされた。やはり父親だからこそなのか、安心する大きな手に包まれ、私は嬉しい気持ちになった。
…温かい、お父様の手。
ヒュッ
そう思った瞬間、突然私の頭の中に誰かの声が聞こえてきた。
『パパの手、温かいね!』
!今の…声?誰の声だろ…いや、まって、今の声…懐かしい…ような…。
「…!…!」
?また声が…何?なんて言ってるの?
私が耳を傾けて集中しようとした瞬間、また現実に引き戻されるような声がした。
「…おーい!ルー!」
「…!」
「どうしたんだ?急に固まって…」
お父様が私の事を心配そうに覗き込んでいる。
…もしかしてあの声は私にだけ聞こえて…?…なんだか、怖い。
「ルー?」
「あ!お、お父様、すみません。私ご飯でお腹いっぱいになったので眠たくなってしまって…」
「ああ、そうだったのか。分かった、部屋でゆっくり休むするといいよ」
「はい、ありがとうございます」
そうして、私はリビングを後にした。
う~ん、やっぱり何だったんだ?さっきの声……頭の中に響いたあの声、あれはいったい…?心霊現象か?ルーシーってそういう聞いちゃう体質なのか?いや、疲れたなのか幻聴なのかも…
……あーー!!ぐちゃぐちゃ考えても仕方ない!
うん。とりあえず今の状況の事を整理しよう。
「ここはファンタジー乙女ゲームの世界」
『あら?そうなの。』
「そうなの。そして私は今、その乙女ゲームの悪令嬢のルーシー・リアフィリアになっている。」
『まぁ、私って悪令嬢なのね、酷い言い草。まぁ貴方からしたら転生したって事なのね』
「うん、そうなる……ってあれ?」
今気づいたけど、私誰かと会話してる?私はキョロキョロと部屋を見渡す…誰もいないよね?…え?まさか本当に幽霊とかいるの???
って思ったら…私の後ろから気配を感じた。
ダラダラと恐怖で冷や汗が出てきた。思い切ってバッと勢いよく振り返るとそこにいたのは…
「ギャーーーーーーっ!!!って、猫…?」
黄金でキラキラ光る目、汚れ一つない真っ白な毛並みの猫…ペルシャかな?
『あら、猫を見て驚く私なんて初めて見たわ。貴方、猫が苦手?』
「いや、違うけど…、もしかして猫の幽霊?」
『あぁ、そっちに考えてたからなのね…、違うわよ。』
そう白猫が言うと、静かに私に近づいてきた。おそるおそる頭に手をのせる。…ほっ、幽霊じゃない。
「んじゃ、化け猫ですか?」
『化け猫って…一応魔獣という部類なのだけれど。』
「まじゅう…?魔獣って言葉を話せるんですか?」
『まぁ、ね。』
「へーすごい、それで、貴方は誰なんですか?」
自然に相手を責めてみる。すると、彼女はスラッと聞いてみた。さらッと応えてくれた。
『私?私は今は魔獣だけど前は…ルーシー・リアフィリアよ。』




