彼は一体何者なのか
「人間、言葉、通じる?」
私は、ゴブリンに話しかけられる。
通じてる?って聞かれても…普通に言葉で喋ってるよね…?
「つ、通じてますよ。」
「え!?俺、こっちの方の言語が判る人間なんて、初めて見たぞ!」
「俺もだ!…あれ?人間、そのミサンガ、誰から貰った?」
ゴブリンは、私の左手首を指差す。そこには、社交界の庭で出会った、ライトから貰った赤いミサンガが揺れていた。
「あぁ、これは…」
私が答えようとすると、後ろから聞こえた声が、私の声を遮った。
「俺が彼女にあげたんだ。君達の言葉は、ミサンガが翻訳しているんだよ。」
「ライト様!?何故ここに…おい!皆!頭を下げろ!」
ゴブリン達は一斉に頭を下げる。
それと同時に私に、誰かの月明りで出来た影が、私を黒い色で包み込む。
ライト様って、まさか?
私はゆっくりと後ろを振り返る。そこには、前に会ったときと変わらない、不思議なオーラを漂わせている――ライトがいた。
「ルーシー、久しぶりだね?」
彼はゆっくりと微笑む。
「じゃあ、行こうか?」
手を差し出される…が、私には一体どういう事なのか、情況が呑み込めていない。
「…質問は、後でゆっくりと聞くから…」
彼は何故か悲しげに、私を見つめ、私の手を握った。




