専属メイド、アン視点
アンの過去編が含まれております。
私はルーシーお嬢様の専属メイド、アンです。
私は名字がありません。あ、全員が名字がない…と、いう訳ではありませんよ。名字は身分を表しているといっても過言ではないです。有名な名字だとその家系がどれ程の経済の権力を持っているかすぐに分かってしまいます。ですので、貧乏人…つまり家自体を持っていない方々は、名字は与えられず、名前だけでコミュニケーションをとっています。
私の環境も、そのような感じでした。ではなぜ、私がリアフィリア家でメイドをやらせて頂いているのかというと…拾われたのです。ルーシーお嬢様に。
元々私には両親がいました。
母親はこの国ではリカバリー族と呼ばれる種族でした。別名『女神の使い族』。その名の通り、あらゆる種類の病気、怪我を治せることができる種族です。生まれつき、魔法の種類には入っていない、特別な癒し魔力(ヒアリングと呼ばれている)が体内で発生されます。
父親は風の魔力を持つ普通の人で、私はいわゆるハーフですね。リカバリー族は昔、「リカバリー族を殺せば魔法の力が手にはいる」というガセで、大勢のリカバリー族が殺され、ほとんどがいなくなってしまいました。なので殺されないよう念のため、母も私もリカバリー族の血を引いているということを隠して生活をしていました。
ある日、両親が不可解な事件でこの世を去りました。
どこからも外傷は見られず、毒殺された様子もなく、ただ眠るように、家で二人並んで倒れていたところを、買い物から帰った私が発見しました。
警察が現場検証しましたが、何の証拠も得られず…ただ、不自然に私の足跡以外、足跡、指紋何一つなかったのです。
突然両親を失ってしまったショックが大きすぎて、私は泣けないままでした。
私は悲しみをたえ、冷静に警察からの質問を受け答えしました。
事件発覚から数時間後…両親をなくした私は、両親以外親戚が誰一人おらず、一度魔法子供保護センターに送られる予定でいることを、警察の人たちが話している所を聞いてしまいました。
魔法子供保護センターは里親を探すためにまず、健康診断を行います。 その時、どんな魔法の種類か分かってしまうと、父に教えられたことを思い出しました。
そして私はふと、母に言われていた言葉を思い出しました。
『いい?ヒアリングは私たち以外に絶対に話してはいけないし、バレたりしてもダメよ。この魔法は、本当に大切な人が傷ついたときに使いなさい。』
…もしセンターに入ってしまえば、私の体内にあるヒアリングについてもバレてしまう。そう咄嗟に思った私は、警察の目を盗み、家を飛び出しました。
…ただ、飛び出したは良いものの、いく宛もなく、走り続けて疲れきった私は、道路の端に座り込みました。…やっぱりセンターでお世話になるしかないのか…と、途方にくれていたそんな時、ルーシーお嬢様と出会いました。
…まぁ、お嬢様との出会いの詳細はまた後程。
それよりも今日、お嬢様に少し変化が見られました。
寝起きに弱いお嬢様が、朝にきちんと起きてたんですよ…専属メイドとして、こんなにも喜ばしいことはありません。
フライパンをおたまで叩いて大きな音を出しても、起きなかったあのお嬢様が、ですよ。正直熱でもあるのかと思いました。
コンコン
「失礼致します。お嬢様、お目覚めの時間ですよ」
いつも通りに懐に、お嬢様専用の小さなフライパン、おたまを装備し、また起こすのに時間がかかるな…日常だと受け入れ、覚悟を決めて部屋に入った直後だった。
はーいと返事が聞こえたのだ。…いつもは返事はしない筈なのに…
私は驚きを隠せないまま、お嬢様の部屋に入ったのだろう。
お嬢様は私を見た瞬間、慌てて口を拭き始めた。きっとよだれがついているのだと勘違いしたようだ。私は慌てて動揺を隠した。
「…もう起きていらっしゃったのなら、リビングに来て頂かないと。主人様と奥様がおまちかねです。」
そう私が言うと、お嬢様は思い詰めた表情になった。…?何かあったのだろうか。お嬢様は少し間をおき、そして口を開いた。
「わか・・・りました今、いきましゅ。」
?!お、お嬢様が…!噛んだ…あの年齢にして決して噛まないお嬢様が…!…可愛い…。私は必死に上がる口角を押さえた。ダメよ…ダメよアン…ここで笑ってしまえばお嬢様に失礼にあたる…!
「…ふ、で、では、食堂までご一緒致します。」
そう言った後、私は後ろを振り向いて、口を手で押さえた。
…ちょっと、肩が震えていた気がするけど、多分大丈夫…よね…。
。設定変更
アンの設定を変えさせて頂きました。
年齢
10歳→18歳 さすがに10歳ではメイドは出来ないと判断したので…
性格
どじっ子→冷静沈着
変更したので、お話が少々変わると思います。