さらわれた馬車の中で 後編
「嘘・・・なんで・・」
音は聞こえなかったはずなのに・・・!
「ほらな?言っただろ、女の子の声がするって。」
「ああ、しかし魔法を使って鉄を曲げるとは・・・たいした奴だ。
売ったらがっぽりお金が貰えそうだな。」
そう言って、その中の一人のオジサンが馬車の中に入ってきた。
「・・・!」
・・・怖くて足が動かない・・・!
「ダメだろお?お嬢ちゃん、希少な魔獣を逃がしちゃあ。」
オジサンがクロルスに向かって手を伸ばし始めた。
すると一瞬の内にクロルスが消えた。
!?一体どこに・・
「俺に汚らわしい手でさわんじゃねぇよ」
上!?
私が上を見ると、藍色の髪の毛に犬耳?、フサフサの尻尾が生えている男の子が、上に張り付いていた。
「ちっ、人間に変身したか。おい、お前!今降りてこないとコイツがどうなっても良いのか!?」
「きゃああっ!」
私はオジサンの手で、首を押さえつけられ、ナイフを突きつけられた。
「・・・」
魔法でなんとかするしか、ないみたいだけど・・・
今魔法を使ったら上に居るクロルスに当たっちゃうし・・・
「さっさと降りてこないかあ!」
「・・・へーへー、分かったよ。降りれば良いんだろ?」
・・・!ダメ!クロルス、降りちゃ・・・!
そう声を出そうとしても、喉にナイフを突きつけられているため、声が出なかった。
「俺が降りるのは良いんだけど、そのナイフ、閉まってくれない?一応動物だから、そういうの怖いんだよねー・・・」
「・・・ちっ、・・・まあ良いだろう」
私からナイフを離すと、オジサンは外にいるオジサンに目配せしていた。
「ほら、ナイフしまったぞ?早く降りてこい!!」
「そんなに急かすなよ・・・・・・『ソイルドール』」
「ぐああああっ!」
私が叫び声のした方を見ると、外に居たもう一人の
オジサンが土の人形に手を捕まえられていた。
「だーかーら、言ったでしょ?俺は動物なんだから、そんな危険なものは怖いんだって。」
よく見ると、オジサンの手の中に、キラッと光るナイフが握られていた。
「!くそっ、きさ・・ブホオッ」
クロルスが中にいる方のオジサンの頭にキックをした・・・!?
私は口をポカーンと開けてしまった。
二人のオジサン達は、完全に伸びてしまって(一人は土人形に、もう一人はクロルスにたおされて)
いた。
クロルスは、膝をパンパンと叩いていた。
「ふー・・・おい、大丈夫か?」
「うん・・・大丈夫・・・あ、ありがとう。」
「ん・・・そうだ、この二人、起きたらまた面倒になるから縛っとくな。『スロープ』」
「うん、分かった!と、じゃあ私はここがどこか把握し、て・・・」
・・・・・・・・どこですか!?
周りを見ても砂、砂、砂・・・ここ、砂漠かーー!?
・・・っフッフッフ!しかーし!こんな時に役立つランベルから教えて貰った魔法があるのだ!
「『サーチ』」
説明するのを忘れてましたが、『サーチ』というのは、車のナビのようなもので・・・
ここがどこか、そして目的地までどのくらいの距離があるのか、さらにどの道に行けば良いのか分かる、便利な魔法です!
「んーと、ここは・・・って、町から近かったよ!
でも、ランベルがどこに居るかまでは・・・」
「・・・ランベル?」
「私の友達で、私の護衛もやってる子なの。クロルスと同じ、魔獣なんだよ!」
「ふーん・・・それってもしかしてあいつのことか?」
「え?」
クロルスが指を指した方を見ると、そこには
辺りをキョロキョロしている、ランベルがたっていた。
「ランベ・・・ル?」
「!!!!ルーシー!」
私に気づいたランベルが、こっちに向かって走ってきて、私をギュウギュウ抱きしめてきた。
「良かった!凄く心配したんだからね!?」
「アハハ・・・ごめんなさい」
「でも・・・良かった・・・無事で・・・」
「え!?ちょっとランベル、泣いてるの!?」
「だってぇ~~~~!本当にっ、心配したんだもおおん!ふうえぇええええええん!」
「本当にごめんね・・・ランベルゥ、本当に、ごめん・・・うっ、ううぇえええええええん!」
しばらく私達は抱き合って2人でずっと泣いていました。
「ぅう・・・ヒック・・・」
「おい、2人ともずっと泣きっぱなしだったから、顔が涙でグジャグジャだぞ、ほら、これで顔ふけ。」
そう言って、クロルスは、ポケットからハンカチを二枚出してくれた。
「ぅう・・・クロルスゥ、ありがとう・・・・・・ズビーーーッ!」
「クスン・・・あなた、しっかりしてるのね・・・良かったら、ルーシーの護衛にならない?」
「え?」
「別に、無理に、とは言わないわ。あなたが良ければ、と言う話よ。
私一人じゃ、この子、うろちょろするから手がつけられないから・・・」
むう・・・私はうろちょろしてないよ!ただ食べ物の匂いに誘われただけだもん!
「・・・まあ、あんたの言ってることは分かるな。こいつは放って置けないし・・・」
ク、クロルスまで!だから、私はただ食べ物の匂いに(以下略)・・・
くっ・・・よし、自分で食べ物に誘われない方法を考えよう!
「・・・まあ、助けてくれたお礼もあるしーー
・・・よし、俺も、そいつの護衛になる。」
「じゃあ、決定ね。改めて・・・私はランベルよ、宜しくね?」
「俺はクロルスだ。こちらも宜しく頼む。」
あー!ダメだ、浮かばなーーーい!
・・・ん?
二人が握手してる?
「・・・?二人ともどうしたの?」
「おー、俺もお前の護衛になることにしたからな。っ、その・・・ルーシー、宜しくな。」
「・・・え!?えええええ!?」
「・・・とりあえず、帰りましょうか。ルーシーが居なくなって、アポロ様達も心配しているから・・・」
「・・・うん、そうだね。・・・クロルス、本当に良いの?」
「俺が自分で決めたから良いんだよ。それに、女の子二人じゃ、このオジサン達引きずって行けないだろ?」
「う、まあ、そうだけど・・。」
「フフ、そうよ。じゃあ、行きましょうか。」
「うん!・・・じゃあ、これから宜しくね?クロルス!」
「ああ。」
そしてその後、お母様たちにこっぴどく怒られ、1ヶ月、外に出るのを禁止されたのは言うまでもない。(泣)
*おまけ?*
ルーシー=ル
ランベル=ラ
クロルス=ク
ル「そういえば、クロルス。さっき、お前じゃなくて、ルーシーって言ってくれたよね?」
ク「・・・言ってない」
ル「嘘だぁ、言ってたよ!」
ク「いっ、言ってないって、言ってるだろ!」
ル「あ!・・・照れてるな?」
ク「っ!も、もう、呼ばないからな!絶対に!」
ル「えーー!?言ってよー!友達なんだからさあ!」
ク「い・や・だ!」
ギャーギャーギャー!
ラ「・・・何やってるのかしら・・・あの二人」
みてくださった方、ありがとうございます!(≧∇≦*)




