さらわれた馬車の中で 中編
「ほら!みて、だんだん鉄の柵が曲がってきた!これで出られるよ!」
よし!計画通りっ!(計画通りか?)
『!まさか本当に・・・だが、それだったら熱くてそっちに行けないぞ?』
「あー・・・そっかぁ・・・うーーん、あ!水属性の魔法を使って冷やせばいいんだよ!」
我ながらナイスアイデア!
『・・・冷やすときに凄い音が鳴るんじゃないか?これ、相当熱いってレベルじゃ無さそうなんだが・・・』
「・・・そうだね、どうしよう・・・」
私が考えこんでいると、
アクセルが、なぁ。と話しかけてきた。
『どうしてそこまで、俺を助けようとするんだ?俺をほっといて自分だけ逃げれば良いだけじゃないのか?』
何言ってるの・・・クロルス・・・
「・・・だって、友達だからに決まってるでしょ?」
『・・・!?はあ?いつから俺達が友達になったんだ!?』
「やだなぁ!名前を交わした仲じゃないか!」
『名前交わしただけじゃねえか!・・・ハア・・・何かお前と居ると調子が狂う・・・』
「良いことだよっ!」
『全然良くねぇよ!?』
それに・・・
「友達は作るものじゃなくて、自然と出来てるものだよ?」
『!』
「それに、私がクロルスを助けたいから!」
私はエヘヘーとクロルスに笑った。
『・・・ほんと、変わった奴・・・』
「ん?何か言った?」
『いや、何も』
「?そう?じゃあ、本題に戻ろう!音をどうにかすればいいんだよね・・・」
ガタンッ!ガタガタガタンッ!
「!?急に揺れが酷く!?」
『もっと道の悪い道に入ったんだろう、きっと』
「!!じゃあチャンスだ!前より音がうるさいし!」
『え!?今か?』
「今やらないと次のチャンスがいつになるかわからないから!
いくよ!『バブル』」
私は手の平に、水の固まりを浮かばせた。
プヨプヨと、水が動いている、それを熱くなっている鉄の所にバシャっとかけた。
ガタガタガタンッガタガタガタン
「・・・聞こえなかったよね?音で・・・」
『・・・そう、みたいだな・・・』
「・・・出られる?クロルス」
『ああ、出られる。』
クロルスは、曲がった鉄の柵と柵の間から、スルッと出てきた。
「良かった~!後は、馬車の中から抜け出すだけだね?」
「なぁ~にが抜け出すって?」
「え・・・?」
後ろを振り返ると、そこにはいかついオジサン2人が、私達を睨みつけ、ニヤリと笑いながら立っていた。




