さらわれた馬車の中で 前編
ガタゴト・・・ガタゴト・・・
「・・・ん?あれ・・・」
『やっと気がついたか。』
!?
私が声のした方を振り向くと、そこには
小さい檻の中に、藍色の毛並みの犬が居た。
・
・・・犬?ううん、違う。彼はランベルと同じ・・・
「!あ・・っここはどこ?」
そうだ、私、誰かに口にハンカチを当てられて、眠っちゃったんだ。
『さらわれたんだよ、薬をかがされてな。』
「ええ?じゃあここは・・・」
『さらった奴の馬車の中。といっても後ろの方だけどな、これから俺たち、売られに行くんだよ。』
「・・・・・・あの、こんな時に聞くのもあれ何だけど、もしかしてあなた・・・魔獣?」
『!そうだ。よく分かったな?』
「だって動物が話すなんて、魔獣しか居ないもの・・・友達に1人居るし」
『ん?何か言ったか?』
「なんでもない!・・・でも何で人じゃなく魔獣を?」
『希少な動物だから、売ったら高く売れるんだそーだ。運転してる奴が言ってた
・・・・・・・』
「・・・」
『・・・』
「ひ、酷い・・・」
『え、』
「命をもの扱いする事態がおかしい!・・・・・あ!あなたの、名前は?」
『・・・クロルス』
「クロルス、ね!私はルーシー。よっし!クロルス、私達何とかしてここから抜け出すわよ!」
『・・・張り切るのはいいんだが』
「何?」
『そんなに大声で言ったら、奴らに聞こえるんじゃないか?』
「あっ・・・」
ヤバい!めっちゃ大声だしてた!?
・・・だけどギリギリセーフ!だって馬車がガタゴト鳴ってるから聞こえてない!多分!
「・・・これからは小さめの声で話すね。・・・じゃあ、まずはクロルスが閉じ込められている檻を何とかしなきゃ」
『鍵は奴らが持ってるから開かないぞ?』
「うーーーん・・・・どうしよう。」
『・・・。そろそ「そうだ!」!?』
「魔法で鉄を溶かせば良いのよ!」
『どうやって・・・流石に魔法で鉄は溶けないぞ』
むむ、呆れてるな?だけど私には作戦があるのだ!
「火の魔法をある場所に集中的にやれば良いのよ!」
私は得意げに鼻をフフンと鳴らした。
『それはやったことあるのか?』
「フッフッフ・・・ない!!」
ありゃ?もっと呆れた顔になってるよ?
「や、やってみなきゃわからないじゃない?クロルス、危ないから一応離れててね!」
『ああ・・・』
「じゃあいくよ!『ファイア』」
私は頭の中で火を想像し、指先に力を込めた。




