小悪魔
「うちの店って客層は…うん、まぁいつもの常連さんたちですよね」
リデルが言葉を濁す。
「はっきり言いな。うちはほぼむさい男どもしかこないさ」
リデルは髪をいじりながら視線を泳がせる。
「…体が資本の商売をしてる癖に、ぜんっぜん気遣かってないのが前から気になってたんですよね。気に入ったものがあればそればーっか食べてるんですよ。具体的には…」
「肉だね」「肉だな」「肉です」
三人の声がハモる。
「野菜なんてちーっとも食べようとしないんですよ。下手すると付け合わせでも苦手なんだよってこ・ど・もか!?ての」
そこまで言いきって急に恥ずかしくなったのかコホンと咳をする。
「だいたい選ぶメニューはから揚げか特製ソースのステーキです。そ、こ、で!から揚げを半分、ステーキを半分、そこにうちの隠れ人気メニューポテトサラダを加えたプレートメニューを出します。」
オプシさんとレイダさんはクルクル回ったり指を立てて力説するリデルをスルーして言葉だけを聞いて吟味している。
「中にはから揚げが食べたいんだってお客さんもいるでしょうけど、片方の値段でどっちも食べられる、それにおまけがついているってので選ぶ人は増えると思うんです」
「それでどうなるんだい?」
「セットメニューを選ぶ人間が増えれば作業を一括できるってことか」
オプシさんは利点に気づいたらしい。
「そううまくいくのかい?」
レイダさんは疑いの目だ。
「そこは…秘策があります」
ウインクしてそう言うリデルをレイダは胡散臭そうに、オプシさんは早まったかな?という風に見ていた。
「マーガス、さん。ご注文はお決まりですか?もし悩んでるんならこれ、セットメニューはいかがですか?人気の2品がどちらも食べられてお得なんですよ?」
リデルが声を弾ませてお勧めする。
「お、リデルちゃんのお勧めかぁ。うーん、今日はから揚げを腹いっぱい食べたいんだよなぁ」
「マーガスさん、以前もそうでしたよね。私、マーガスさんとは働きだした頃からの御縁ですし、健康に気を配って末永くご利用してもらいたいなーなんて。おまけのポテトサラダは私が作ったんです。」
顔の前で手を組んで少し上目遣いで言う。
「……お、おう。そういや、から揚げは食べたばっかりだったんだ。セットメニュー、もらおうかな。へへへ」
「はい、ありがとうございます。すぐお持ちしますね」
お盆を胸の前で抱くようにしたリデルはマーガスに背を向けると小さく舌を出す。下準備は私の仕事だから嘘はついてないよね♪
「うめぇ!リデルちゃんの作ったポテトサラダは最高だ!」
そんな声が食堂内の至るところで聞こえていた。




