管理人、上比奈六花の道楽
ふぅ、とため息が漏れる。
「流石に世界規模だと管理するのも楽じゃないですね」
肩を回し、ぐぅ~っと伸びをする。
“エイセスセニス“自分で言うのもなんだが言いにくい。もうちょっと他の名前があったんじゃないか、と思考の海に囚われそうになるのを無理矢理現実に意識を戻す。
甘めのココアを口に含むと、鼻から吸うのとはまた違う香りが広がり、すこしだけ疲れがとれた気がした。
「皆、どうしてるんでしょうね?」
そう言って管理用のデータを覗き込めば、参加者の8割強が冒険者を選んでいた。
それを悪いとは言わないが、ここでの生活を“もう一つの現実“だと受け止めて生きている人はどれだけ居るのだろうと思う。
もっとも、“スキルなんかが存在する世界“としてこの世界を構成したのは他ならぬ自分であるから、苦笑せざるを得ない。
上比奈 六花はエイセスセニスの全権を持っている。開発から管理・運用に至るまで全てを彼女の手を通しているからだ。
もちろんそれはゲームとして楽しんでもらうためを目標にしたわけではない。
言わば被験者としての役割を兼ねて貰っているわけで、本当なら無料で機材を渡してもよかったのだが、そこは行動力などをもって、選別をさせてもらったわけだ。
「全く戦闘関連のスキルに手を出していない人が4人いますね」
ゲームのつもりの人もいるとしても、この世界は割と命が軽いのだ。護身用のスキルくらいは取る人がほとんどにも関わらず、異色の4人に興味を持った六花は彼らの履歴を見る。
「うーん、これは…」
そう言いたくなるほど興味深い生活を送っていたようだ。
繰り返しになるが、ゲームのつもりで提供したわけではない。六花には六花なりの目的がある。
それでも、自分の作った世界で充実した日々を過ごしてくれているとあれば嬉しくも誇らしくもある。
この独特の条件の4人のプレイスタイルを、プライバシーに配慮した間でモニターする設定をする。
そしてそのうちの一人は六花にとっても妙に記憶に残っている少年、もとい“少女“だった。
結構涙腺が緩い“彼女“はどんな日々を過ごしているのか。
簡易のあらすじというか、履歴書を読んだ六花は珍しくブフッと吹き出した。
「あの娘、何やってんのよ」
先程までの疲れなど微塵もかんじられなくなっていた。
「…こんな紙っ切れじゃ上っ面しかわからないわね。決めた!ちょっと見に行こう!ちょっとくらい、大丈夫よね、うんうん。」




