誤解
「な、ななな、なんってこと言うのよ!確かに女性向けの風俗施設なんて斬新かもしれないけどっ!そんなのできるわけないでしょう!」
顔を真っ赤にして、口をアワアワしながら指を指して来るクララ。ちょっと品がないぞ。
一方のリデルは何のことか分からず首を傾げている。
その様子も何となく魅力的であるが、クララには火に油を注ぐようなもので、ヒートアップさせてしまう。
「『夫婦のまね事』で『大人の』って貴方が言ったんでしょうに!」
そこまで言われてみれば、リデルにも彼女らがどのような思考を辿ったのか分かる。
「クララって意外と耳年増?」
リデルがニヤニヤしつつからかいの言葉をかけると、
クララの顔が赤くなっていき、
沸騰した。
ピシッと音を立てたのはコメカミ。
「このクラリーチェ・フォン・ノーゼンガルドに向かって何か言ったかしら?」
“煮えたぎるにこやかな笑み“という器用な真似をしたクララにリデルは焦る。慌てて横を見ると顔面蒼白なアンジェがフラッと倒れそうになるのをリデルは支える。
“だめでしょ“とばかりにクララに視線をやれば
“それはあなたが“とでも言いたげな視線を返す。
「口で言ってもいいんですけど実際に見てもらった方がわかりやすいと思うんです。一週間時間をくれませんか?」
リデルはそう言った。一週間では間に合わせでも時間が足りないが余り長く待たせるわけにもいかないだろうと考えたからだ。
「わかりました。但し、おかしなものを見せたときは覚悟なさい。ってそれより誰か呼ばないと!」
「その必要性はありません。」
前より腕力は落ちていていたが、それを感じさせないくらい余裕そうにリデルはアンジェを抱き上げた。
いわゆる“お姫様抱っこ“で。
万が一アンジェがその状態に気づいたなら再び気絶したかもしれなかった。
クララもその様子に少しドキッとせざるを得なかった。
「では来週私のうちで。」
そう言うとリデルは退室し、レイダに断って使われていないベッドにアンジェを寝かせた。
流石にちょっと戯け過ぎたと反省したリデルであった。
☆★ ノーゼンガルド領主 屋敷にて ★☆
「お嬢様、何か良いことでもございましたか?」
湯浴みをしていると、侍女のシャールがそんなことを言った。
「変な娘と知り合って、掻き乱されてばっかりよ。最悪だわ。」
「そうですか。最近のお嬢様は眉間にシワも寄せなくなってどこか楽しそうですよ。」
「ふんっ、貴方の気のせいよ」
「あら、屋敷の者達の総意ですわ」
そう言ってシャールはクスクスと笑い、
主は不機嫌そうに顔を背けた。