表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二度目の世界で本当の自分に  作者: 夢辺 流離
1/60

もう一つの現実

 

 町に入るための門が既に視界に入っている街道の脇で一人の少女が泣いていた。


足を横にペタンとつけた、いわゆる女の子座りで、自身の身体を抱くようにしながら。


横を通る商人や旅人が「金をスられて町に入られねぇのか、かわいそうに」とか、「町の外に出て盗賊にでも犯されたのか」と少女を横目に呟きながら町へ、または町から移動する。



 「嬢ちゃん、大丈夫かい?何があったかわからねぇが、こんなところで一人でいちゃあ悪いやつらにさらわれちまうぞ」

 ついに見かねた一人の男が少女の肩を叩きながら声をかける。


あーなんか、俺が人さらいだと思われちまうんじゃと思ったのは声をかけた後だった。


頼むから悲鳴を上げたりしないでくれよ、と祈りつつ顔を視界に入れる。


薄い金の髪に新緑の瞳に白磁の肌。


泣いてぼろクシャの顔は判断に困るが胸を締め付けるナニカがある。



 動揺していたのが治まりはじめて、気づく。


これは悲しくて泣いてるんじゃなくて、嬉しくて泣いてしまったのだと。


迷子だったのが町に無事着くことができたから?


いや、違う。ああそうか、町外れはスタート地点の一つだった。


「ああ、感極まって泣いちまったのか。わかるぜ。俺も他のやつらも初めてこの地に立ったときは1時間近く立ち尽くしちまってたからなぁ。いや、俺は泣いてなんかいねーからな。でもよ、町に入ってうまそーな臭い嗅いで、うめーもんでもまずいもんでも口にして、または風呂に入ってその度に感動して泣いてたらミイラになっちまう。ここは仮想世界ニセモンなんかじゃない、もう一つの現実さ。ようこそ、エイセスセニスへ。落ち着いたら町の中に入るんだぞ。」


 そう言って男は少女の頭をポンポンと撫でると背を向けて立ち去った。




 VR(仮想現実)という技術が不完全ながらも登場し始めてきた時に、名前も知られていない小さな組織から発売された機体は他を引き離して完全に現実と同じように感じさせるものだった。


プレイヤーは他のものと別格のものとして”SR(Second Reality《もう一つの現実》)”と読んだ。


その呼び名の最初の名付け親は頑として知れない。


何故ならどのプレイヤーも皆同じようにそう読んだからである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ