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アサシンズ ロア  作者: ぽんこっつ
教国編
52/52

【忘れられた神の聖域】にて 後編

間が開きすみませんでした、

それでも読んで頂いている皆様に感謝いたします

ありがとうございます!

壁を破って、登場したガーネットさんを挟んで

対峙するモルデと俺達のPT


「 くくっ、今更一人増えた所で、何も変わらん 」


短剣を握り直し、ゆっくりと距離を詰めて来るモルデに

一番近い距離にいるガーネットさんが身構えて、戦闘態勢に入る


「 あ…ガーネットさん、脱出で疲れてるだろうから、こっちで休んでて大丈夫だよ? 」


「 え? 」


俺の掛けた言葉に、驚いた表情で振り向くガーネットさん


「 なっ!貴様…まだ解ってないようだな… 」


モルデまで反応して、顔を朱に染める

俺は、王子の方を振り向き、軽く肩を竦めておどけて見せてから

前に進み出る


「 悪いなモルデ、闘いの相性みたいな物があるんだ 」


一気に駆け抜け、距離を詰めながら呟く

ーーーーー【クリティカルバースト】

モルデの首や肩に明滅する点が浮かび上がる

ーーーよし!最大ダメージの赤明滅まで、何処に出ても届く!

首に浮かぶ赤明滅に、一撃を加え、次の赤明滅の右腿を切り裂く


「 くっ! ちょこまかとええい! 」


モルデは、短剣を振り回しているが、まず当たらない

その隙に、コンビネーションは、どんどん連鎖していく

五、十、そして二十も超えて、さらに斬撃は加速していく


「 くそっ!貴様ああああ! 」


モルデの怨嗟をも含む叫びが、次々刻まれる斬撃のリズムに

かき消されていく


~~~~~

~~~~~


「 うわあ…凄いですね… 」


アシッドさんに、王子さん達の元で休憩してていいよ、と言われた時には

驚いたけど、モルデと闘っているアシッドさんを見て

違う種類の驚きに包まれ、思わず感嘆の溜息まで漏れてしまう


モルデとの戦闘に突入した、アシッドさんは

モルデの周りを蠢く影の様にしか見えない速度で

前後左右あらゆる角度から、斬撃を叩きこんでいる


「 そうですね、アシッドさんにとってモルデの様なタイプは一番闘いやすいでしょうからね、ガーネットさんも多分得意とする相手でしょう? 」


王子さんが、私を笑顔で迎えてくれながら、アシッドさんにチラリと目をやって微笑む、


「 得意な相手…? 」


王子さんに言われて、改めてアシッドさんの攻撃に見悶えするように

短剣を振り回すモルデの方を見やる


「 あっ!人型と言う事ですか? 」


私の言葉に、微笑みながらも王子さんは少し補足してくれる


「 半分正解ですね、まず人型で大きさが中型なので、アシッドさんの攻撃範囲に全身が収まります 」


VRに来て、私の【アサルト】系の攻撃スキルにも、急所を表示する

『ここを突きなさい!』みたいな表示は出る様になっている

敵が大型の敵だと、背が低い私だと、その表示に手が届かない事も

度々あった、VRだと敵の大きさも重要になってきているのは感じていたけど…


「 それと…これは最初からモルデと対峙していないと分からない事ですが…多分モルデには範囲攻撃がありません、もしあっても使い方がわかっていないのでしょうね、奪って力だけを手に入れただけですし、あれならGVGで闘うプレイヤーの方が強敵でしょうから、通常攻撃だけでアシッドさんに攻撃を当てるのは、まず無理でしょう、【伽藍】さん、まだ大丈夫ですよ、体力回復に努めて下さい 」


「 うぬ…すまぬな 」


王子さんは、立ち上がろうとする【伽藍】さんに微笑みかけ

再び【伽藍】さんは片膝を付く


「 黒子ちゃん! 大丈夫だった? 」


「 わわっ… 」


みどりさんが、いきなり抱きしめる様に、私の頭を抱えて引き寄せてくれる

きゅーちゃんは窮屈になるのを嫌がったのか、するりと床に着地する

床に着地したきゅーちゃんは、くるりと一回転し

元の赤い着物をきた狐耳の生えた少女に戻る


「 しかし、あの者は何者じゃ…あれは常識の範囲をこえておるぞえ 」


きゅーちゃんは、アシッドさんの方を、目を細めながらじっと見つめるが


「 なにこの娘っ!可愛いっっ!狐耳ねっ!いいわ! 」


「 わわっ!これ何をする無礼者!これ離せっ! むぎゅ… 」


少女に変わったきゅーちゃんに飛びかかる様に抱きついたみどりさんに

もみくちゃにされながら、抱きかかえられている

全力で抱きつかれているらしく、きゅーちゃんの手が助けを求める様に

虚空を掴むように、ぱたぱたしている…

きゅ、きゅーちゃん!!


「 駄目ですよ、みどりさん、苦しんでますので離してあげてましょう…みどりさん?…みどりさん! 」


王子さんが、みどりさんの肩に手を掛け、語りかけてくれたが、反応は無く

さらに『ふふっここはVR、けも耳もあるのね…最高よ…』的な事を呟き、更に抱きしめる力を強める


「 止むえません!【伽藍】さん、力を貸して下さい! 」

「 う…うむ!しかし難儀であるな… 」


私と王子さんでみどりさんを押さえ、【伽藍】さんがきゅーちゃんを掴み

一気に救出を試みる、【第一次きゅーちゃん救出作戦】が開始された


「 ああ…ケモ耳がっ! 」


みどりさんの呟きと共に引き離された、きゅーちゃんは、【伽藍】さんに抱えられたまま、大きく肩で息を吸い込みながら、


「 ええい馬鹿者!せっかく生き残れたのに危うくまた円環の核に戻される所であったわ! 」


手をじたばたさせながら、みどりさんに叫んでいる、まだ空中で抱えられたままなので、迫力より、可愛さの方が出てしまっている…

ゆっくり地面に降ろされた、きゅーちゃんは肩で息をしながらも

『まったく酷い目に…』と呟いて、着物の乱れを直し始める


「 すいません、円環の核とはなんでしょうか? 」


「 ん? 円環の核かえ? 」


王子さんに問いかけられた、きゅーちゃんは困った様に少し首を傾げ


「 本来ならば、秘密であるのじゃ…しかし助けてもろうたからの、少しだけぞえ…円環の核とはな、迷宮の奥に潜む物だけが持つ物じゃ、例え撃ち滅ぼされても、円環の核の一部を持っておれば、迷宮の最深部にある核の本体の場所で、幾度でも蘇るのじゃよ… 」


ちょっと、きゅーちゃんそれ少しだけじゃなくて、全部秘密喋ってる…

それがボスがリポップする理屈になってるんだ…


きゅーちゃんは、居住まいを正し直し、改めてアシッドさんを指差す

モルデはHPが異常に高いのか、未だ短剣を振り回しているが

空を切るばかりで、怨嗟の叫びを上げ続けている


「 それよりもあの者じゃ!あの速度はありえんぞえ!妾は堕ちたとはいえ神のひとりぞ、それが目で追うのがやっとなぞあり得ぬ 」


きゅーちゃんは目を細め、じっと睨む様な目付きで

アシッドさんの動きを追おうと試みている

きゅーちゃんも見えないんだ…

その言葉を聞いて、さっきまで、きゅーちゃんが居なくなっても

虚空を抱きしめていたみどりさんが、ハッと気付いた様に起き上がり


「 変人がおかしいのは前からよっ!普通よおかしいのが普通なの 」


そう言って、きゅーちゃんに笑いかけるが、両手が、また抱きしめようと

伸びるのを見て、きゅーちゃんは【伽藍】さんの後ろにサッと隠れる

その様子を見て、苦笑しながら王子さんが


「 ええ、アシッドさんは最初からあの速度でしたよ 」

「 うむ、そうであるな…見馴れてしまっていたのである 」


【伽藍】さんは、足元に隠れるきゅーちゃんに屈んで微笑みかける


「 異常なのかな?私もあれが普通なのかと思ってました… 」


私の言葉を受けて、きゅーちゃんがそっと顔を覗かせながら


「 普通…今の世ではあれが普通なのかえ?凄まじい世になったんじゃな、妾らの時代では考えられぬ… 」


「 いいえ違うわっ!変人には普通でも、普通の人には普通じゃないわね」


みどりさんの言葉に、困惑した表情になるきゅーちゃん


「 普通じゃけど普通ではない? 」


小首を傾げる動作をするきゅーちゃんを見て、皆が微笑みを浮かべた時

アシッドさんの声が響く


「 ねえ! 俺だけ話に入れないんですけど… 」


「 あんたが一人で行くって言ったんでしょう!変人! 」


「 そりゃそうなんだけど…っと、ねえ誰かモルデを捕獲できない? 」


「 なんでよっ!変人! 」


「 このままだと倒しちゃうし、元に戻せるなら戻してあげたいしね 」


「 呆れたっ!あなた本当にお人好しというか…馬鹿ね… 」


「 騎士団や大司教も何かを奪われた様だけど、生きてはいるみたいだし」


アシッドさんの言葉に、周りを見回すと倒れている騎士団達の各所から

呻き声が漏れ始めている


「 貴様っ!俺を舐めるなあああ!まだ終わってはおらん! 」


モルデは、凄まじいまでの怨嗟を込めて叫び声を上げているが

虚空を切るばかりの短剣は、未だアシッドさんを捉えていない


「 しょうがないわねっ!さっき茨の束縛スキルは破られたから、それの最上位でいいならいいわよ! 」


みどりさんがイタズラぽい笑みを浮かべながらアシッドさんに叫ぶ


「 それでお願い!みどりさん頼む! 」


「 わかったわっ!あんたが頼んだんだからね!いくわよっ! 」


みどりさんの不吉な部分が含まれた言葉を聞いたのか

アシッドさんが慌てて叫び返す


「 ちょ…なんか怖いんですけど! 」


「 エクストラスキル【裁きの茨】ソーンオブジャッジメント


みどりさんのスキルに応える様に、地面から蠢き湧きたつ無数の蔦

今までの茨のスキルとは、蔦の太さが違う、大人の胴程もある無数の蔦がドーム状にモルデも周りを包み込む、そして蔦の密度も全然違う、重なり合う様に次々現れ、中にいる物を押しつぶす様な勢いで次々と重なって行く

今までの茨のスキルが、茨の蔦に覆われると言う感じだったのが

茨の蔦をまとった何かに捕食される…そんな不吉な考えが浮かぶ光景だった


一瞬でモルデが居た場所を中心に、直径五m程の茨のドームが出来上がる

野太い茨の蔦で覆われた、異様な塊


「 出て来る前には、捕まえる準備しとくわよっ!五分間ね! 」


みどりさんの言葉に合わせて、皆が行動を開始する

王子さんや【伽藍】さんは人手を集めるべく、騎士団で目覚め始めている人達の元へ、私はスタンスキルを準備して、蔦のドームの前に進む


「-------て! 」


あれ?何か聞こえた様な気がする…


「 みどりさんかきゅーちゃん何か言った? 」


きゅーちゃんは、不思議そうな顔で、みどりさんは悪戯めいた笑みで

首を横に振る、おかしいな…声が聞こえた様な…


「 ----出してえ! 」


やっぱり聞こえる!


「 みどりさん!何か聞こえますよ!中から! 」


すると、悪戯っこぽい笑みをさらに強くして


「 そうねっ! 変人!ダメージは味方だから喰らってないでしょう?! ただこのスキルは物質的に存在を呼んじゃうから、閉じ込められる事もあるかもねっ! 」


アシッドさん毎閉じ込めちゃったんですか!

驚いてみどりさんを振り返る私に


「 ふふんっ!胸を見せろっていったお返しよ! 」


「 誤解だってぇぇ!ほんとここから出してええ! 」


アシッドさんの悲しげな叫び声が、蔦のドームから響いていた

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