【忘れられた神の聖域】にて 女の闘い?
ちょっと仕事がばたついて、間が開いてしまいましたすいません
薄暗い階段を、慎重に降りて行く
階段は、右回りの螺旋状になっていて、
先がどうなっているか確認ができない
通路の幅が狭く、二人並ぶのがぎりぎりなので
俺、王子、みどりさん、【伽藍】さんの順で降りている
「 なあ…王子、正規ルートじゃないってどういう事だろう? 」
本当は、一気に階段を駆け下りたい気持ちがあるのだが
正規ルートじゃないというログが流れたので
何処に通じているか解らない以上、慎重に進まざる得なかった
「 そうですね…私もwikiで見た程度の知識しかありませんが… 」
王子が説明してくれたのは、本来、教国の上級ダンジョンは
中級ダンジョンの最深部から入場できる仕様で
入場まで手間がかかり過ぎると不評だったらしい
「 長いわねっ…いつまで降るのよ、これ 」
「 うむ、もう五分は降りているのであるな 」
みどりさんが愚痴っぽくこぼした言葉に、【伽藍】さんも同意する
(確かに…どこまで降りるんだろうな…)
俺も声には出さず同意して、螺旋状の階段の奥に注意を向ける
「------だ! ーーーえ! 」
誰かの怒鳴る様な声が聞こえ、
その後に金属同士がぶつかり合う鋭い音が何度も響く
「 どうやら、出口付近で戦闘のようですね、急ぎましょう 」
王子の言葉に頷き、階段を降りる速度を上げる
階段の終わりの光が漏れる部分に辿り着くと
大きな広いホールに出る、
何も装飾がされていない広いホールには
白い鎧を纏った騎士団が三十名程、それに対峙するように
モルデ率いる白ローブが五人、紫の法衣を纏った男と女性司祭を
守る様にしながら、後退している状態で
床には十名以上の白ローブ達が倒れて、うめき声を上げていた
「 観念しろ、モルデ! 今回の大司教選出は、教皇様の任官宣誓がなされなかった為に無効と、枢機卿全員の連名で告発されたのだ!審理が出るまでは、審理の塔に預からねばならぬ! 」
騎士団の一人から鋭い声が飛ぶ
「 なにを言う! 大司教様を売りおったな! 貴様らっ! 」
顔を真っ赤にしながら、叫び返すモルデだが、人数差で徐々に
ホールの隅に追い詰められている
「 我々は教皇様、そしてこの国の騎士団だ、大司教の騎士団ではない、もう観念しろモルデ、教皇様を隠している場所を明かせ 」
騎士団の一人は、諭すように語りかけながら、包囲を狭めて行く
「 王子、あれって… 」
「 大司教側が失脚したようですが…変な場面に出くわしましたね 」
俺の問いに、王子が少し困った顔で答える
「 うむ、ガーネット殿が見当たらないのであるな… 」
【伽藍】さんが、周りを見回しながら呟き、俺達の先頭に進み出て
ホールに響き渡る、大きな声をあげる
「 貴殿らに問いたい事があるのである! 」
突如発せられた大音声に、二つの集団は動きを止め
驚いた表情でこちらを振り向く
「 なっ!貴様らっ!なぜ此処に! 」
モルデは、手にした剣を騎士団とこちらに交互に向け狼狽した様に叫ぶ
【伽藍】さんは、そんな二つの集団の様子を気にした様子も無く
「 うむ、これ位の身長のガーネットという少女を見なかったであるか?」
自分の胸の辺りに、手をかざし普段と変わらぬ口調で話しかける
「 あら、その子なら知ってるわよ 」
【伽藍】さんの問いに、意外な所から返答が発せられ
騎士団やモルデ達も釣られて、声のした方を向く
視線の先には、腰まで伸びた黒髪が特徴的な女性司祭
「 それは本当ですか? 」
王子の訝しがる声に、女性司祭は微笑みかけながら続ける
「 ええ、知っていますよ、先程騎士団が不審人物として審理の塔に連行していきましたから 」
「 なっ!そんな事実はない! アーニャ司祭何を言う! 」
騎士団を指差しながら告げる女性司祭に、騎士団が慌てて叫び返す
「 そうだ、騎士団が連れて行ったぞ!その女なら、貴様らは冒険者であろう?ならば依頼を出す!騎士団から儂の身を守れ! 」
女性司祭の言葉に、続き紫の小太りの男が大声でまくし立てる
「 往生際が悪いぞ!大司教殿 」
騎士団達は、罵りの声を上げながらも、此方に対し警戒態勢を取る
「 ねえ、これって… 」
「 典型的な悪役の台詞ですね、解りやすいですね 」
「 うむ!明快であるな! 」
「 いっそ両方スタンさせちゃう? 」
みどりさんの提案を却下しつつ小声で囁き合う俺達に、我慢しきれなく
なったのか、大司教が苛立った声で更に叫ぶ
「 ええい!儂は数日後には世界の王となるのだ、こんな所では終われんのだ、ここを無事抜けれたら、お前達に世界の二十五分の一をやろう! 」
その発言に女性司祭は、舌打ちをしながら、大司教を睨みつける
(二十五分の一とか半端な…というか、引き受けたら椅子から動けなくなったりするのかな…しかし解りやすい発言だな)
俺達は顔を見合せながら、苦笑を浮かべる、皆も同じ事を思った様だ
「 残念、その言葉は使い古されてるよ、大司教さん 」
俺はそう告げ、騎士団達に手を上げ、邪魔をする意思のない事を伝える
騎士団達は安堵したように、軽い礼を返し、モルデ達に向き直る
「 もう本当に馬鹿ね…呆れたわ…」
女性司祭は呟きながら、ゆっくりと右手を上げる
「 【深淵の光】」
掲げられた右手から、黒い輝くエフェクトが漏れ、弾ける
叫ぶ間も無く、次々倒れて行く騎士団と大司教とモルデ
射程が短いようで、幸いこちらまでは影響はきていないが
彼女から発せられた【深淵】という言葉にある事が浮かぶ
「 グランドクエストのボスか?! 」
俺の問いに、妖艶な笑みを浮かべながら女性は応える
「 そうね、【深淵を彩る色欲】アーニャよ 」
アーニャと名乗った女は、そう言いながら自らの身体にも
黒い光を当て、黒いエフェクトに包まれる
エフェクトが消え、次に現れた姿は、大胆に胸元が開き、
太もものかなり上まで際どいスリットが入ったチャイナドレス姿
その姿を見せつける様に、しなを作りながら軽く一回転しておどけて見せる
「 いかがかしら?好みに添えたかしら?」
その姿に、一番に噛みついた人がいた
「 なによっ!自慢げに見せびらかしてんじゃないわよ! 」
ビシッとある一点を指差し敵意を燃やすみどりさん
「 あら?お気に召しませんでした?もう少し派手な方がいいかしら 」
小首を傾げながら、自分の胸元ををさらに開けようとするアーニャに
「 あんたっ!わかってやってるでしょう… 」
「 そういえばあの子も、興味津々でしたわねえ 」
余裕の笑みを浮かべながら、なぜか勝ち誇るアーニャに
みどりさんは指していた指をゆっくり下げて微笑みかける
「 さすが【深淵の色魔】ね、脳みそ全部そこにつまってんじゃないの?」
「 なっ!誰が【色魔】よ!【色欲】よ、情念とか色々含まれてるのよ!ああ…お子様には難しいかしらねえ 」
アーニャはそう言って、みどりさんのある一点を指差す
「 そうねっ!わかんないわね、一か所だけ成長してる年増の【色魔】と張り合ってもねえ、後はしぼんでいくだけだものねえ 」
そういって、首を横に振りながら、両手を肩の辺りまで掲げておどけて見せる、そして二人の目があった瞬間、言葉が重なる
「「 絶対、許さない! 」」
こ…こわいんですけど…なんですかこの戦いは!
取り残されている男三人衆は、どう反応していいかわからず顔を見合わせる
対峙してる二人の間には、目には見えないけど
きっと凄い火花が散ってるんだろうなあ…
でも、このままじゃ何か戦闘に入りにくいな…
思い切って声を掛けてみよう!
「 あの… 」
「 なによ変人! 」
「 あら?何かしら? 」
二人は、お互い睨みあった目を逸らさず返答を返す
「 胸の大きさとかはそこまで大事じゃないかと思うんですが… 」
その言葉に、弾かれた様にこちらを振り向く二人
ちょっ!目付きが怖いんですけど!
「 変人っ!直接的表現できたわね… 」
なぜか拳を握りしめながら、こちらを睨むみどりさん
その真剣な表情に思わずうろたえながら続ける
「 大きさは重要じゃないと思うんだ!なんてね!あはは 」
乾いた笑いを浮かべつつ自分をフォローして逃げようとする
「 あら?!じゃあ何が大事なのかしら? 」
アーニャが妖艶な笑みを浮かべながら小首を傾げる
【色欲】!余計な事を言うな!
「 そうねっ…あんたはどう思うのよ! 」
みどりさんも真剣な表情で聞いて来るので、
自分で掘った墓穴からの脱出の手助けを頼むべく
王子と【伽藍】さんを振り返る…
何その二人して、『あーあ、やっちまったな!諦めろ』
見たいな憐れむ目は辞めて!
「 さあっ!どう思うのよ! 」
「 是非参考までにお聞かせ願いたいわ 」
二人の視線に晒され、期待する様な眼を向けられる
「 あの…その… 」
予想以上の反応に、何も考えずある言葉を返してしまう
「 かたち…? 」
俺が発した言葉に、空間が固まり、時間が止まる
「 あんたっ!ここで見せろっていう事なのっ!変態っ! 」
胸を隠す様に押さえて、後ずさるみどりさん
「 あら、良いわよ、ちょっとお待ちなさい…」
ちょっ!違う見せろっていう訳じゃねえええ!
王子と【伽藍】さんが目の上に手を当て、空を見上げる
「こいつやっちまったな 」ポーズを見ながら
俺は叫ぶ
「 見せろなんていってませんからーーーーー!!! 」
どうしてこうなった…