表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アサシンズ ロア  作者: ぽんこっつ
教国編
47/52

首都潜入組 ガーネット班

読んで頂きありがとうございます

少しでも楽しんで頂けると幸いです

月明かりに照らされながら、西の城門に向かう

王子が先行してくれているので、安心できる


「---みなさん!聞こえますか?!」


急に王子の焦りを含んだ声が響く


「うむ!聞こえているのである!」

「きこえているわよっ!王子?どうしたのっ?!」

「俺も聞こえているよ?」


王子の焦った声なんて珍しいな、

一体如何したんだ? まさか待ち伏せか?!


「王子!西城門で待ち伏せか?」


王子は、焦りを含んだ声で更に続ける


「ガーネットさん!聞こえてますか?!ガーネットさん!」


王子の言葉に、ハッ! とする

そうだ、ガーネットさんとは侵入の合図のやり取り以来連絡が無い


「ガーネットさん達のPTが集合場所に来ていません!」


そこで王子は一旦話を切り、数秒間が空く


「老司祭組は合流していますが、彼らのPTも連絡がつかないそうです!」


その言葉に、愕然とした後

自分に対する怒りが込み上げて来る、

PTに、カンストレベルが多いからって相手を甘く見てしまったーーーー


平原を駆け抜けていた馬車は急加速し、西城門に駆ける


「【うーちゃんJr】【まーちゃんJr】…二人ともごめん! 」


馬車を引く二頭に、声を張り上げながらお願いする


「仲間がピンチなんだ!ごめん!超特急でお願い!」


二頭は、返事ともとれる短い嘶きを返し、馬車はさらに加速して駆ける



~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~

時間は少し遡る


~~~~~~~~~~~~



「 王子さんから連絡がありました!さあ皆さん行きますよ~! 」


「おう!お前ら気合いいれていくぜェェェ!」


「「「「「 おうっ!  」」」」


【鉄火巻き】さんの声に、【The sushi】のメンバーさんの声が響く

私は、彼らを見て、ついつい笑みをうかべてしまう


「おいおい、どうしたんだ嬢ちゃん?急に? 」


【鉄火巻き】さんがちょっと戸惑った感じで聞いてきたので


「みなさん仲がいいなあって思って」


そう笑顔で返すと、【鉄火巻き】さんは少し照れた感じで皆を見回しながら


「そりゃまあ、年も皆近いし、ずっと一緒にやってきたからなあ 」


他のメンバーの人達も、お互いに顔を見会い、同じ様に照れている

【天然はまち】さんが、そんな皆を見回しながら


「まっ…腐れ縁だけどなっ!しょうがないから俺が見てやってるんだよ!」


そう言った後【天然はまち】さんは皆に、ぽかぽか小突かれながら


「お前が言うなっ!」「いつ見てくれっていったよ!」

「ギルマスは俺だからなっ!」「前に貸した金返せっ!」

「天然物が一番味が落ちるのはええんだよっ!手前っ!」

「イタッ!ちょっ!誰かネタ武器で叩いてるだろっ!ダメージきてるっ!」


いいなあ…楽しそう!

ふふんっ!でもうちのPTも楽しさでは負けてませんよ~!

押しかけに近い形でアシッドさんの所に行った私を受け入れてくれて

私の転職まで後押ししてくれる!


みどり姉さんはいつも美味しいお店を教えてくれるし

王子様は何でも話を聞いてくれるし、相談に乗ってくれる

【伽藍】さんも出掛けたついでにお土産買ってきてくれたり

転職アイテムの本を、ずっと探しに付いてきてくれる


アシッドさんは、アサシン職のアドバイスをしてくれるし

【シャドウ】転職クエの内容だって教えてくれた

アシッドさん唯一人しかクリアしていない超レアなクエなのに!


はっ!駄目だっ!大事なお仕事を任されたのに

つい色々思い出して、嬉しくなってにこにこたいむになってしまった…

反省…


「さあ!みなさんっ!もう一度仕切り直して行きますよ~!」


「「「「「 おうっ!  」」」」」


「それでは!ワープポイント入場っ!」


煌めく光の渦に、一歩足を踏み入れた瞬間

周りの景色は、流れるように溶けていき

次の瞬間には、逆再生のように競り上がり

別の景色に変わる


「ここが教国首都のワープポイントですか…?」


移動した先は、小さな教会の様な作りで

正面には、跪き何かに祈る北の聖女の大きな壁画があり

後ろには礼拝堂の椅子の様な長椅子が並んでいる


「ああそうだぜ!嬢ちゃんっ!潜入成功だ!」


「「「「「 いえーーいっ! 」」」」」


【鉄火巻き】さんの言葉に【The sushi】のメンバーが湧きかえる

私も少しほっとする


(やりました!初仕事完了です…王子さんに報告しないと…)


湧きたつ皆さんの横で、王子さんにPTチャットを送ろうとする


「ようこそおいでなさいました、冒険者の方々 」


突然掛けられた女性の声に、皆が一斉に鎮まり、注目する

そこには、艶やかな黒髪を腰の辺りまで伸ばした女司祭が

此方を見て、笑顔で手を広げ、歓迎してくれるように立っている


「なんだアーニャ司祭か…驚かさないでくれよ!」


【鉄火巻き】さんが、ほっと安堵の表情を見せ

他のみんなも口ぐちに、その言葉に同意して安堵を見せている


「お知り合いですか…?」


「ん?ああ、アーニャ司祭は数少ない教皇派の一人でさ 」


【鉄火巻き】さんが、アーニャ司祭を手の平で示し


「俺達やプレイヤーに情報や資金、装備を貸し出してくれているのさ」


そう紹介された、アーニャ司祭は、驚いた様に、口を手に当てながら


「いえいえ、教皇様をお助け頂くお手伝いをお願いしているのは私どもですから…皆様方には感謝の気持ちが絶えません 」


そういって、深々とお辞儀をする

その時、私はある事に気付いて驚き、思わず声が漏れてしまう


「凄いスタイルがいい…」


目の前でみるアーニャ司祭は、清楚な司祭服に包まれていても

はち切れんばかりのプロポーションで圧倒されてしまう…


(確かこんなのお父さんは、ボンッ!キュ!ボンッ!とかいってたっけ…

その後お母さんに『ええそうねっ!私は色々無くてすいませんねっ!』

って叩かれてたっけ…お兄ちゃんは『たゆんたゆん』とかうわごとの様に言ってたっけ…)


思わずアーニャさんの胸を見つめた後

自分の物を見てしまう………

まだ大きくなるわよってお母さんが言ってたもん……

その後お父さんが少し苦笑いしながら

『でも母さんはそれ以上は…』って言いかけたのを二人で殲滅したもん!


そんな様子を見たのかアーニャさんが


「どうしたのお嬢さん?」


心配げな顔で聞いてきたので、ついある物を指さして


「【たゆんたゆん】になれますか……?」


その言葉に、アーニャ司祭も、【The sushi】メンバーも固まる


「【たゆんたゆん】か…夢だな…」


空を見上げる【鉄火巻き】さん

【天然はまち】さんは


「全てが【たゆんたゆん】好きだと思うなかれ乙女よ!」


なぜか握手を求められる…

なんだろう、このとりあえず芽生えた殺意の様な物は…


「ふふっ面白い事を聞くのね、お嬢さん」


口に手を当てながら愉快そうに笑うアーニャさん


「そんなに気になるならVRなんだから大きくすれば良かったのに」


ーーーーーー?!

その発言に私は衝撃を受ける

そうだ…その手があった…もう一サイズ…いや…三サイズ程…

違う!そうじゃないっ!


笑顔でアーニャ司祭は続ける


「そういえば、あるボスモンスターが【容姿変更権(小)】を

レアドロップで落とすらしいわよ~、少しなら修正できるらしいわ」


ーーーーーーーー?!

そんなのあるのっ!?

みどり姉さんとそのボスに籠ろう!数万回だって倒してやるっ!


違うっ!そうじゃないっ!

違う!この人は違う!


私は、アーニャ司祭に、そっと近づきながら聞く

あくまで陽気に、笑顔で


「アーニャさん…」


「なあに?お嬢さん?」


アーニャさんは笑顔で応えてくれる

一歩…二歩…後少しーーーーー

間合いに入った…


「あのね…ちょっと聞きにくいから… 」


私は内緒話をするように口に手を当てる


「あらあら…何かしら?」


笑顔で屈んで、私の口に、耳を近づけるアーニャさん…


「【ダガーアサルト】」


右手に、朱色に光る短剣を取り出し、アーニャさんの胸を目がけて

一気にスキルで突く


【鉄火巻き】さんが


「なっ!何をっ!嬢ちゃんっっ!」


他のメンバーは状況についていけず固まっている


私の短剣は、アーニャさんの胸に吸い込まれるようにーーーー?!


「あらあら…怖いお嬢さんね…」


アーニャ司祭は、今までとは違う、艶のある怪しげな微笑みを浮かべながら

私の耳元に囁きかけて来る…


私のスキル攻撃を、彼女は避けなかった

右手のみで短剣を受け止め、短剣を握り締め、私に更に囁きかける


「なんでこんな事するの…お姉さんは悲しいわ…」


そっと囁きかけてくる甘く熱っぽく話しかけて来る

その声に抗うように、私は声を張り上げる


「皆さんっ!この人は敵、もしくは敵側ですっ!」


「何?!」「馬鹿なっ!」「何を一体?!」

「何を理由に?!」


【The sushi】のメンバーが上げる疑問の声に

更に声を張り上げて答える


「この世界に住む人達は…けっして自分の世界をVRだとはいいません!」


私の言葉に、顔を見合わせる【The sushi】の面々

唇を妖しく釣り上げ微笑むアーニャ司祭

さっきまで健康的な色気に溢れていた唇は

艶やかな紅に染まっていた


「そしてっ!ボスのレアドロなんて街の司祭が知っているのはおかしい!」


短剣から、手を離し一旦距離を空けに下がる

アーニャ司祭を指差しながら、さらに続ける


「ならば何者か?!運営か高いレベルプレイヤー…でも彼女の表示は

NPC表示…何かが化けていると見るべきですっ!」


ざわめく【The sushi】達


「この状況で、化けたりする必要があるのは敵側だけでしょう?」


私の指摘に、アーニャ司祭が、笑い声を洩らす

楽しげな、それでいて妖しげに揺らめく笑い声を


「いいね…あんた!いい推理だよ、でもねちょっと違うわ…」


「ちょっと違う?」


私のオウム返しのような質問に

彼女は、微笑みながら


「この世界がVRだとちゃんと認識して動いてるNPC達が居るのよ…」


「え?!それじゃ私の推理は…」


自分が敵だと判断した根拠が間違えていたのかと動揺する


「いいえ、その数人以外は全員VRだとは認識していないわ…」


アーニャは、ふと寂しげな瞳を浮かべるが

すぐに元の妖しい煌めきを瞳に宿し、嘲笑う


「その数人って…」


嫌な予感がする…

決して私では勝てない相手…


アーニャは、楽しげに笑いながら、右手でそっと前髪を撫で上げ


「この世界でね、その数人だけが自らの意思で世界を壊せるわ…」


世界を壊そうとする数人…

【深淵の大魔導】とグランドクエの残り六人のボス…


「私は【深淵を彩る色欲】【アーニャ】あなた達は餌になるのよ」


妖しく笑うアーニャが高々と宣言する


「餌…?」


「そう、邪魔なプレイヤー達を私のダンジョンへ釣る為のね」


高らかに笑う【深淵を彩る色欲】から、紅色の暴風が吹き荒れる


「ぐっ…」「ぎゃああああっ!」「なんだコレ?!ぎゃあああ」

「動けねえっ!」「ログアウトすればっ!」


【The sushi】が口々に悲痛な叫びを上げる


「ふふっ、ログアウトしても一緒よ、次にログインしたら捕えられているわ、もうあなた達は逃げられないの…」


楽しげに笑う【深淵を彩る色欲】の声を聞きながら

私は徐々に失っていくHPと、視界に浮かぶ

【状態異常 深淵の瘴気 のレジストに失敗しました】

【 二十秒間行動不可 】


の文字を見て悔しさを噛みしめる


ごめんなさい…みんな…対抗できなかった…



~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~


西の城門に篝火が十程並んでいるのが見える

よし!見張りは白ローブが五人

すぐ捜し出すよ、ガーネットさん…

二D時代に、交わした約束を信じて二年も俺をずっと捜して

ゲームに居てくれたガーネットさん…

今度は俺がすぐに捜し出して見せる!


「【うーちゃんJr】も【まーちゃんJr】もありがとう!」


馬車を高速で走らせてくれた二人にねぎらいの言葉を掛けて

手綱を緩める


「あとは自分で潜入するよ…君たちはお家にお帰り…二人ともありがと!」


声を掛けてるが、馬車が速度を緩める気配が全く無い…


「どうしたの二人とも?!ちょっと!二人とも怪我しちゃうよ?!」


驚き、叫びを上げる俺に、二人は嘶きを返し更に加速する


「おいっ!そこの馬車止まれっ!」

「止まれ!ちょ!おい!」

「来るぞっ!逃げろっ!」


白ローブ達は慌てて馬車を避け、地面に転がる

馬車を引く馬達は、城門を抜け更に加速する


「ちょっとっ!何処いくの?!二人ともっ!」


高速で走る馬車にしがみつきながら、叫ぶ


その時、機械音で ポーンッ と無機質な音が響く


【レンタル馬車が目的地に到達しました!】


それはわかってるって…


続けてもう一つ ポーンッと響く


【レンタル馬車の目的地が新たに設定されました!     】

【目的地 『Ex-venturers』《かつての冒険者達》ガーネット】

【搭乗者 『Ex-venturers』《かつての冒険者達》メンバー 】

【搭乗者 ガーネット以外のメンバーはシステムにより   】

【    収容が可能です メンバーを収容しますか    】


「 なにコレっ!! 」


街から街への移動がレンタル馬車でしょ?!

驚きに包まれしがみついていると


(今回だけサービスだぜっ!)

(あんたにゃ世話になったからなっ!)


何処かから二人の男の声と、その男達の笑い声が聞こえた様な気がした


「【うーちゃんJr】?!【まーちゃんJr】?!」


俺の戸惑う声に応えてくれたのは二人の低い嘶きだけだった

俺は都合のいい事だけど、二人の好意だと思い込む事にする


「ありがとう!二人とも…」


そしてPTチャットで呼びかける


「まだ間に合うかもしれないっ!みんな来てくれっ!頼む!」


馬車は更に加速し、馬車とはもはや呼べぬ速度で

夜が明け、白みかけた首都を駆け抜けてゆく

彼女の元へと







うーちゃんjrとまーちゃんjrの奇跡だと信じてやってください…

人と触れ合えば触れ合うほど学習し進化していくAI…

馬達とずっと触れ合い、親しんできたゆえの奇跡と…!

すんません…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ