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アサシンズ ロア  作者: ぽんこっつ
帝国編
34/52

あるモンクさんの朝のひとコマ

ちょっとある人の朝のひとコマを書いてみました

 「うむ!本日もよき日和である!」


拙僧の朝は、まず全身の筋肉チェックから始まる


「うむ!上腕二等筋異常なしである!僧帽筋異常なしである!」

指差しながら確認していくのである!


「うむ!本日も異常なしである!よき筋肉日和である!」


そうして拙僧は、宿坊から東門付近にある大きな公園を目指して歩き出す

歩きながらも、速度を速めたり、緩めたりしながら現実との違和感を埋める

恥ずかしながら拙僧のリアルは、【伽藍】程、背は高くない、

VRの中で違和感なく動くには馴れが必要なのだ、

そうして歩く内に、公園についた

ここは、大きな公園で、芝生が一面に敷かれ市民の憩いの場になっている

戦時にはここに数千人の部隊が集合できるようになっているのだ

目の前には、大きな城壁が立ちはだっている


「うむ!いい城壁であるな!」

叩きがいがあるのである!


拙僧はまず芝生の上で軽く身体を解していく

遥か昔に習った空手の型をなぞっていく

ゆっくりと丁寧に、数千回、数万回と昔は繰り返した型だ

まだ無邪気な子供の頃、強さに憧れ、道場の門を叩いた

無邪気さゆえに、打ち込み、修練を重ねた

そして空手が大好きだった

でも、才能が足りなかった、

大好きで打ち込んでいても、後から入ってきた者達に抜かれて行く日々

そして、道場に通わなくなった、

今でも空手は大好きだ、ただある日、後輩に尋ねられた言葉


「先輩はなんで空手を続けてるんですか?」

悪気があって聞いた言葉では無かった、なぜ空手を始めたのかという話題の中で聞かれた言葉だった、それに好きだからと自信を持って答えれなかったのだ


そして道場に通わなくなって、暫くたってからこのゲームに出会った

そして…魅せられた

身体一つで、強烈な一撃を繰り出す【モンク】という職業に

努力すればレベルが上がり、強さを発揮できるMMOというジャンルに


「ふむ!ではいくのである!」


そう呟いて拙僧は、城壁の前に立つ、

高さは四m程、しかし首都を守るその姿は、異常に分厚く、威圧感を与えて来る、

拙僧はゆっくり息を吸い込み、吐き出す


「【重撃】である!」

ドンッー

重く鈍い音をたてて、拳が城壁に叩きつけられる、二度、三度と

もちろん、城壁を叩いても経験値も入らないし、逆に自分にダメージが入っている、痛覚もVRで押さえられているが、無い訳ではない


鈍い音は何度も響き渡るー


これもVRになってから始めた事であった、

拙僧が使う武具は限りなく素手に近い

VRとはいえ、モンスターはとてもリアルで、ドラゴンやゴーレム、炎に包まれた敵などが出て来た時に、躊躇わずに、拳を叩きこめる自信が最初は無かった

どうしても条件反射的に、拳を庇って加減してしまうのだ

スキル自体は、例えゆっくり出した拳でも、スキル詠唱さえしていれば発動する

しかし、それでは駄目なのだ

躊躇わず、全力で一撃を叩きこむ

自分が積み重ねて来た身体やスキルを信じて


躊躇わず、迷わず、ただ全力で一撃を!


最初に、魅せられた【モンク】の可能性を信じて

今度こそ、この職業とスタイルが好きなのだと胸を張って言えるように


そうすると、城門の方から、一人の若い男が走ってきた、恰好からみれば城門の警備兵のようだ


「ちょっと!凄い音がするって通報あるから来てみれば、またあんたかよ」

そういって若い男は苦笑する


「うむ!いい闘いであった!」

拙僧は、思わず笑顔をこぼしてしまう


「闘いって…、城壁殴って、そんな満足そうに笑う奴なんて今まで見た事ねえよ!今度からできれば早朝はやめとくれよ!」

苦笑のまま若い警備兵が言う


「うむ!すまないのである!早朝と言うのを忘れていたのである!」


「あ…でも昼だと城壁叩いてる妙な奴がいるって通報がくるのか…」

そういって警備兵はまた苦笑を浮かべる


彼らも、最初は城壁を叩き続ける拙僧に不信感を持って接していたが

理由を尋ねられたので、拙僧は躊躇わぬためと理由を告げ

ある程度納得してくれた様で、この問答は朝の恒例行事である


「なあ…【伽藍】さん、たまには西の城壁とかもぶったたきにいいってくれよ!西の警備の奴ら、この東の朝の恒例行事信じないんだぜ!『城壁を全力で殴る奴がいるとか嘘つくなよ!』ってさ」

そういって若い警備兵は、少し顔をゆがめる

飲み屋で、この恒例行事を話したら、ホラを吹くなと馬鹿にされたらしい


「ふむ!わかったのである!東西南北回るようにするのである!特に西は念入りに叩くのである!」

拙僧はそう答えて、右の拳を前に突き出す


「おう!頼むぜ!んじゃ俺は戻るけど、朝も早いから程ほどにしてくれよ」

そう言って若い警備兵は手を振って去っていく


「ふむ!時間であるな!朝餉を終えたら、また子供達と遊ぶのである!」

拙僧はゆっくりと、身体を返し、宿坊へむかう


「ふむ!手土産の菓子は、みどり殿にいい店をきくのである!」

拙僧は歩き出す、この前子供達にお菓子を差し入れする約束をしたので、約束は果たさねばならぬのである!


「しかし…かくれんぼだけは勘弁して欲しいのである…」

拙僧は身体が大きいので、孤児院の中や、庭には隠れきれる場所がないのである…

すぐに見つかってしまう上に、一番に見つかった罰ゲームと称して、

延々と腕ブランコを求められるのである…


「ふむ!今日も良き日和である!」

そう呟いて拙僧はまた駆けだす





お正月関係でばたばたして毎日更新できずにすいません、今回は【伽藍】さんの朝を書いてみました

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